13話 共通点
1人はバードテールに纏めたワインレッド色の髪に、平均的な身長と体格の少女。もう1人は腰まで波がかった黒髪で身長が高く細身の少女。最後の1人は、プラチナブロンドのセミショートヘアの少女は一番小さく、子供の体型だ。
ネフィリアードには、その特徴に見覚えがあった。
「どう?」
「確かに知っている。昨日、挨拶を交わした」
彼は眉間に手を当てた。
この国唯一の獣人であり、男性であるネフィリアードは、何かと注目を浴びる。20歳を過ぎてからは大人として配慮されるようになったが、度々見知らぬ相手から挨拶をされる。今回もそれだと思い、特に気にも留めていなかった。
「へぇ、彼女達は君の動向を伺ってたんだ? 挑発的な行動だね」
「花屋の事故も私と関係していそうだ」
「なにそれ?」
ネフィリアードは先程あった出来事について、軽く説明した。
花屋〈フロウレシア〉は、店主である四季の魔女の育てた花しか並ばない。
〈ネフィリアードの持っていた花束の花が綺麗だったから、どうしても欲しい〉とでも言って花の特徴を話せば、心優しい四季の魔女は用意してくれるだろう。
アリュスの時同様に1人を囮に、残りの2人が見物する振りをして、じょうろか食虫植物の植えられた植木鉢に魔法を掛けた。そして、水やりの際に食虫植物が魔法を拒絶するか、感化され暴走したと推測される。
「その流れだと最初に花屋に悪戯をして、次に俺の所に来たのか……」
魔法を使わずに徒歩となれば、買った店と向かう場所が近いのと想定できるだろう。周囲を探し、そして飾り気のない服屋の中に花束を見つけた。しかし、連続では疑いを掛けられやすいと考えたのか、次の日の午前中に行った。
「こうなっては、ツリーの一件も私か魔法騎士絡みに思えてくる」
「それについては考え過ぎじゃない?」
「ツリーの建設担当の1人に、学生時代の先輩がいるんだ」
造形魔法は、建築の魔女の代表的な魔法だ。学生の時代に造形魔法の適性があると発覚したネフィリアードは、その先輩に何度か指南してもらっていた。
ツリーが作られる一週間前に、休日で出歩いていたネフィリアードは先輩と広場で再会し、軽く会話をしていた。
「今後、被害が大きくなりそうだが……なにが目的なのか、全く分からないな」
仮にこれをネフィリアードへの警告であり〈これ以上○○をすると、大事な人達がもっと傷付くぞ〉と捉えても、○○に当てはまる内容が分からない。
「君が逮捕した犯人の娘の逆恨み、とか?」
「それは無い。犯人の情報の中には、家族に関する内容もあるんだ。養子縁組や、離婚や養育施設に行き疎遠になった子供も含まれている。彼女達は、私や部隊が逮捕した魔女の身内には該当しない」
魔女は虹色の薔薇から産まれる。神聖なその樹の元へと行けるのは女王だけであり、産まれて来た赤ん坊を最初に抱き上げ、祝福の名を与える重要な役目を担っている。
〈子供が欲しい〉と願う二人の魔女は、女王へ手紙と共に2本のリボンで編んだ髪飾りを送る。女王がその髪飾りを虹の薔薇の枝へと結ぶと、やがて蕾が付き、8ヶ月経つと花が咲き、その中から2人の特徴を持った赤ん坊が産まれてくる。しかし、その様な意図せずに産まれる事例や、髪飾りを結んでも蕾が一向に付かない場合もあり〈虹の薔薇の気分次第〉と女王は魔女達に忠告している。
虹の薔薇の管理者である女王は、産まれて来た魔女の情報を掌握している。
唯一の獣人であるネフィリアードは彼女と強い繋がりがある為に、情報を手に入れることは容易なのだ。
「それじゃ、君の厄介なファンによる嫉妬や承認欲求の暴走、とか?」
「私にファンなんているものか。コルエかミランジュのファンが、私に嫌がらせをしている方がまだ有り得る」
若くして隊長になり、巨大なツリーを制圧する大きな活躍をした。そんな人に羨望の眼差しを向けない人が〈いない〉方がおかしい。たとえ獣人であっても、評価してくれる人はいるはずだ。
アリュスは反論しようとした時、扉をノックする音が聞こえてきた。
「コルエとミランジュだよ。入っても良いかな?」
ネフィリアードは確認を取る様に、扉を見た後にアリュスへと視線を送る。
それに対して、アリュスは小さく頷いた。
「あぁ、入ってくれ」
扉が開き、紙の束を持ったコルエとミランジュが入室する。




