第78話 不遇スキル
マーケットでは結局のところ戦力強化に繋がるようなアイテムは未だに買えていない。
ブルーが興味を持ったアイテムを買ってるけど、ポイントがそろそろヤバい。
高くてもいいから手持ちのポイントで出せる範囲でいいアイテム見つけないと。
途中で露店の店主から更に奥にスキルの書を専門に扱う店があると教えてもらった。
有名プレイヤーが店主だからかなり人気みたい。
親切に教えてくれたのに、何も買わないのは申し訳ない。
だから、モンスターの卵を温めるのに効果的とされている毛布を購入した。
購入した毛布はブルーが早々にモンスターの卵の所まで持って行った。
帰ってきたブルーは何故か漆黒のマントを装備していなかった。
とりあえず今は気にしないことにした。
もちろん、ホテルに帰ったら追求するけど。
その後、教えてもらった通り、奥に進むとすごい人集りができている露店があった。
ただ、露店よりも本屋さんに見えた。
中に入り切らないほど人が集まっている。
出てきた人に話を聞くと、このお店は外と中で品揃えが違うみたい。
外には値段がかなり安い低ランク向け。
中には高ランク向けのランダムスキルの書が並んでいる。
30分ほど並んで、ようやく中に入れた。
いろいろと見て、一つ気になったスキルの書があった。
他のスキルとは違ってかなり安い。
外に置いてあるスキルの書よりも安い。
なんで中に置いてあるのか疑問になるレベル。
お店の中に置いてるスキルの書はどれも50万ポイントとか必要。
なのに、これは破格の1万ポイント。
『コピー』のスキルの書。
具体的にはどういうスキルか知らないけど、安すぎる。
でも、中においてあるってことは強力なスキルなんじゃ……。
『コピー』のスキルの書の前で立ち止まって、考え事をしていた。
そしたら、輝夜さんに声が聞こえたきた。
「あら、どうしてここにいるの?」
「え……?え、どうしてここにいるんですか?」
あまりにも予想外すぎる人がいて、頭がついていかない。
「私ここの店主よ。それより、蓮くんは何でフランスにいるの?まさかマーケットに参加するため?」
オレはここまでの経緯を輝夜さんに説明した。
休学中であること。
それを利用して『王家の墓』に挑戦中であることなど。
全てを聞いた輝夜さんは一言「なるほどね」とだけ呟いた。
「あ、そうだった。輝夜さんここの店主ってホントですか?」
「そうよ。もしかして、疑ってる?」
「あ、そういうわけじゃないです」
さすがに疑いませんよ。
ただ、12神の輝夜さんがマーケットで出店してるのが意外だっただけで。
「それで気になるスキルの書でもあった?」
「あ、この『コピー』のスキルの書何ですけど、何でこんなに安いんですか?」
「ああ、これは不遇スキルの一つね。やっぱりに売れ残ってるか」
今、やっぱり売れ残ってるって言ったよね。
店主がそれでいいのかな。
恐れ多くて聞けないけど、今の発言って店主としてアウトじゃ……って、不遇スキルって何?
聞いたことない。
「輝夜さん、不遇スキルって何ですか?」
「不遇スキルは激弱なスキル。例えば、このスキルの効果は確か所有モンスターのスキルを一つコピーして使えるようにできる」
なるほど。
思ってたよりも強そうなスキルだな。
でも、なんでもコピーできるとかじゃなさそう。
魔法適性の無いモンスターだと、魔法をコピーできないとかありそう。
「一番の難点はスキルの威力。コピーして放たれるスキルは全てLv1と同程度の威力しか無い。使い方次第ではあるんだけど、わざわざコピーを取得させるくらいなら違うスキルを取得させる人が多いわね」
コピーしてもスキルのLv1相当の威力か。
確かにそれはちょっと使い勝手悪いな。
「蓮くんって不遇スキルについて何も知らないんだったわね。コピー以外にも幾つかあるからこの機に教えてあげるね」
輝夜さんが教えてくれた現在確認されている不遇スキルは五つ。
・コピー
・狂乱
・怠け者
・不摂生
・スキル封印
最後のスキル封印は強そうと思った。
実際には全く使えないスキルだった。
上手くいけばスキルは封印できる程度で、成功確率がかなり低い。
プロフェッサーが調査した結果、自分よりもLvが低いモンスター相手に1%ほど。
同格、もしくは格上のモンスター相手だと成功確率0%。
確かにスキル封印みたいに不遇スキルと言われても文句が言えないようなスキルもある。
でも、コピーはなんか使えそうだけどな。
輝夜さんも使い方次第って言ってたしな。
……あ、これなら使えるかも。
一度輝夜さんに確認してみるか。
「輝夜さん、一つ確認したいことが。――――っていうスキルをコピーしたらどうなりますか?」
「問題も無いわよ。話を聞いた限りだと元々の威力もそこまで高く無さそうだしね」
「ありがとうございます!!」
輝夜さんに確認を取れた。
オレは迷わず、『コピー』のスキルの書を購入した。
「あ、そうだ。蓮くん、まだ時間ある?」
輝夜さんの後を着いて行き、店の奥に移動した。
もちろん、ARで隔離しているように見えるだけだから誰でも入って来れる。
ただ、そういうのは基本的にしないことがマナー。
店の奥には赤い髪を腰まで伸ばした女性がいた。
こっちを振り向き、目が合うと驚いた様子を見せる。
「紹介するね。この子はプロフェッサーのギルドマスター、エルシー」
「はじめまして。少し前にうちのシグマが世話になった。その節はありがとう」
「え、あ、いえ。こちらこそ、シグマさんにはいろいろ教えていただいたので!それに感謝されるようなことはしてません」
ビックリした!
まさか謎に包まれているプロフェッサーのギルマスを紹介されるとは想像できなかった。
「フランスには何が目的で来たの?」
あ、みんなそれが気になるのか。
同じこと聞いてくるな。
エルシーさんにも輝夜さんと同じ説明をした。
「そっか。それで鬼姫の他のメンバーは大丈夫なの?バラバラって聞いたけど」
さすがにバレてるか。
プロフェッサーのギルマスの情報収集能力はすごいな。
「たぶん、大丈夫だと思います。強くなりたいって想いが強いだけなので」
「強くなりたいか……。明日、時間ある?君の世代で私が一番強いと思ってる子がフランスにいる。紹介してあげるよ」
オレの世代って、同学年ってことだよね?
エルシーさんからすると、その人は莉菜やオリヴィア、郁斗、海夕よりも強い。
正直、莉菜たちよりも強いって断言できるプレイヤーが同世代にいるとは思えない。
どんなモンスターで、どういう戦いをするのか気になる。




