第65話 1日目終了
あまりにもスゴすぎる光景にオレたちは唖然とした。
そんなこと一切気にする素振りも見せず、薫先輩と柊先輩はイェーイェとハイタッチをかわしている。
テンションが高いのは柊先輩だけで、薫先輩はそこまでテンションは高くないけど……
「柊先輩と薫先輩、めっちゃ強!」
「まあこれでもBランクだからな」
「うんうん、そうそ……ん?ちょっと待って!何で薫くんだけ後輩から名前で呼ばれてるのさ?」
莉菜がボソッと呟いた。
それに薫先輩と柊先輩がすかさず反応した。
「そりゃあ、苗字じゃなくて名前で呼ぶように頼んだからな、船で」
「むー!!薫くんだけズルい!4人とも私のことも琴音先輩と名前で呼んでね!」
柊先輩の圧に根負けしたのか、徐々に薫先輩の言葉から力が抜けている気がする。
それに柊先輩の頬がすごい膨れてる。
そんなに苗字じゃなくて名前で呼んで欲しかったんだ。
謎の圧があって、みんな無言で首を縦に何回も振ってる。
恐るべし柊……じゃなくて琴音先輩。
「さてと、バトルの振り返りは今日の挑戦を終えてからってことで!先に進んで少しでもマッピングを進めよ」
「そうだな。バトルの方は少しずつ慣れていけばいいさ。俺と琴音先輩はともかく、鬼灯たちはCランクのモンスターとバトルするのは初めてだしな」
このバトルを通じてオレは輝夜さんの言ったことの真意をマジマジと痛感していた。
恐らく、薫先輩と琴音先輩がいて攻略できないはありえない。
この言葉の裏にはオレたちがいなくても二人だけで攻略は可能ってことだと思う。
実際に輝夜さんがそういう意味で言ったのかはわからない。
でも、今のバトルでオレたちはグール相手にまともなダメージを与えられていない。
それから程なくして、『闇の祭壇』挑戦1日目は終了した。
あれから何回かグールと遭遇してバトルをしたが、結果は大して変わらなかった。
基本的な戦い方がシルヴイーユの範囲攻撃でチクチクとダメージを与えたところをドランバードが1体ずつ倒す。
もちろん、その間もブルーたちは戦っているけど、倒されなかったのはシルヴイーユが上手く凌いでくれた。
それと、コンの『陽炎』と『蜃気楼』による幻影が大きい。
ただ、コンはそれを維持しする為に後衛より更に後ろに配置され、ほとんど攻撃に参加していない。
ブルーも『ディバインシールド』を一撃で割られた。
これはエルナやカーラもだけど、魔法を切り裂かれたりとかなり苦戦している。
それでも、エルナの魔法攻撃で僅かにダメージを与えられていた。
だけど、エルナ以外のモンスター、ブルーたちの攻撃はダメージが入ってるのか疑問になるレベル。
Cランクのモンスターとバトルするには純粋なステータスだけじゃなく、スキルのLvも足りていない。
でも、これは一朝一夕でどうにかできる問題じゃない。
ホテルのラウンジに戻ったオレたちは初日の反省会を行う。
「それではチーム1、1日目の反省会を行います!この結果は予想通りというか何というか、」
「完全に実力不足だな」
「あ、そこ!言葉はもうちょっとオブラートに包む!後輩が傷つくでしょ!」
「こういう時はホントのことをハッキリと言った方がいいでしょうが。それが一番そいつらの為になる」
反省会が始まってすぐ薫先輩と琴音先輩の口喧嘩になった。
薫先輩がかなりストレートに言って、琴音先輩はオレたちをフォローしようとしている。
でも、二人とも言ってること同じ。
「そもそも『闇の祭壇』へ挑戦すると決めた時から明らかだったし、最初のうちは俺と琴音先輩がフォローするって感じだった。今、現時点での実力不足なんて今更だろ?」
「むむむ、そうだけどさ……」
数分ほど言い合って、薫先輩が琴音先輩を言い負かした。
「はあ。1年よく聞け。こうなることは最初からわかった上で俺と琴音先輩は『闇の祭壇』への挑戦を了承した。このまま弱いままでいるか強くなる為に足掻くかはおまえら次第だ」
「薫くんの言う通り、君たち次第だよ。相談ならいつでもウェルカムだよ。だから常夏の白黒祭を通して一緒に強くなろうね」
薫先輩と琴音先輩、めっちゃプレッシャーなんですけど!
いや、言いたいことはわかるけど。
でも、短期間でどうこうできる問題じゃないし。
……あ、そこは相談すればいいのか。
琴音先輩がいつでも相談OKって言ってるわけだし。
一晩、リーフィアとラグニアを交えて次どうするかの話をして、それを元に相談してみるか。
オレは攻撃を捨てて、サポートに回った方がいい気がしてるけど。
今日はこのまままともに反省会と呼べるようなものはできずに解散した。
そうしてオレたちは自分たちの部屋へと戻っていく。
◆◇◆◇
薫と琴音は解散した後もラウンジに残っていた。
「琴音先輩はどう思う?」
「やっぱりわかんない。なんで鬼灯くんが『闇の祭壇』に挑戦したいって言ったのか」
二人はずっと疑問に思っていた。
蓮が『闇の祭壇』に挑戦したいと言った理由を。
実力からして、この結果は必然と言えた。
二人はそこを覆すとまではいかなくても、なにか策があると考えていた。
だが、実際にはなにも無かった。
「誰がどうやって鬼灯をその気にさせたのか全然わからん」
二人が特に気にしているのは、蓮をその気にさせた人物が誰か。
確実に誰かしらになにか吹き込まれている。
その確信を持っていた。
「うーん……あ、担任の先生とか?」
「いや、それは無い。鬼灯の担任は市川先生だ。あの人のやり方じゃない」
「そっか。市川先生なら違うね」
市川先生は二人をはじめ上級生にはかなり有名な先生だ。
教育に心血注いでいる人で、決して無理難題は言わない。
それでもギリギリを見極めて課題を出し、生徒を正しく成長させる。
間違ってもこんな無茶無謀な課題を出す人ではない。
しかも、この二人も1年生の時にお世話になっている。
まだ知り合って日が浅い蓮をその気にさせた人物。
蓮の交友関係を知らない二人は結論が出ず、頭を抱える。
すると、一人の男がラウンジに現れる。
「生保内薫くん、柊琴音さん、今少しばかりお時間いいかな?」
「っ!?」
「「生保内薫くん、柊琴音さん、今少しばかりお時間いいかな?」
白黒学園の学園長が二人に対し、声をかけてきた。
「あ、まさかとは思うけど、鬼灯くんをその気にさせたのって……」
「いや、待ってくれ。それは私ではない。私も教育者の端くれだ。そんな無理難題を提示したりしないさ。その疑問の答えは知っているけどね」
学園長が蓮をその気にさせた人物を知っていると口にすると、ラウンジの気温が数度ほど下がったと錯覚してしまうくらいに冷たい空気が漂う。
後輩思いの先輩二人としては見過ごせぬ発言だった。
「それが知りたいなら着いて来なさい」
一言だけ発して学園長はラウンジを出る。
薫と琴音は一切の迷いを見せることなく、学園長の後に着いて行った。
そして本来であれば学生は立ち入り禁止エリアにあるホテルの一室に連れて行かれる。
もちろん、薫と琴音も学生だから本来なら入れない場所。
今回は学園長特権で特別に入ることが許されている。
部屋に入ると一人の女性がいた。
その人物を目の当たりにした薫と琴音は驚きのあまり言葉を失った。
そこで二人は未来の話を聞かされた。




