第64話 最強種の強さ、その片鱗
オレたちは打ち合わせを終えて、『闇の祭壇』へ挑戦する。
『闇の祭壇』の中はかなり薄暗く、アンデッドモンスターの巣窟というイメージが一番しっくりくる。
いつモンスターと遭遇しても大丈夫のように全員モンスターを召喚する。
「今日もお願いね、シルヴィーユ!」
「頼んだぞ、ドランバード!」
「来い、コン!」
「君臨せよ、カーラ」
「降臨せよ、エルナ!」
「出でよ、ブルー!」
長い翡翠色の髪を束ねることなく、凛とした感じで弓を装備している女性がシルヴィーユ。
人類種のエルフだからやや耳が長く尖っている。
シルヴィーユに負けず劣らず、すごい迫力を感じさせるのが、ドランバード。
2本の角、肩にかかるかどうかくらいの長さの水色の髪。
遠目だと2本の角が生えた人間の様に見えるが、近くで見ると所々に竜鱗が見られる。
ファンタジーとか登場する竜人とかに限りなく近い種族、そういう見た目をしている。
エルナ、カーラ、コンはなにか威圧的なものを感じ取ったのか一歩も動けずにいた。
怖いもの知らずか、ブルーはプルンプルンと飛び跳ねながら軽快にシルヴィーユとドランバードに近づいた。
シルヴィーユとドランバードの前まで行くとプルンプルプル、プルンプルプルと飛び跳ねてはプルプルしてコミュニケーション?を取っている。
……ブルーが下手なことして怒らせないといいな。
もう天に祈るしかできない。
プルンプルン飛び跳ねているブルーをシルヴィーユが空中でガシッと両手で挟むようにキャッチする。
そうして放たれた第一声が、
「あら、可愛い!!ねえ、ドランバードもそう思わない?」
「俺はノーコメントだ」
「ケチ!減るもんじゃないのに」
「そういう問題じゃない」
なんだかどこかで既視感があるような会話だった。
エルナやカーラ、コンもシルヴィーユとドランバードに近づき、ぎこちないけど、会話を始めた。
あ、何か上手くやれてるみたい。
はあー、良かった!ホントに。ブルーが何かやらかさないか心配して損した気分。
シルヴィーユの両手でガシッと挟まれてるけど、ブルーの雰囲気的に大丈夫そうだな。
それにしてもブルーなにを話したんだろうな?
後でリーフィアを通して聞いてみようかな。
そうこうしていると『闇の祭壇』第一層に出現するモンスター、グールと遭遇する。
その数は2体。
「お、来たよ~。2体か、頑張ろうね、みんな」
「じゃあ、1体は引き受けるよ。ドランバード、『竜爪拳』!」
背中の翼をバサッと広げ、ものすごい速さでグールに突っ込む。
そして、右手の爪で引っ掻くようにグールを殴り飛ばす。
ドランバードはそのまま殴り飛ばしたグールと1対1で戦うべく、距離を詰める。
「はーい。ここは薫くんに甘えて私たちはもう1体を薫くん以外の全員で倒すよ!」
「「「「はい!」」」」
柊先輩の言う通り、残る1体のグールをオレたちで相手にする。
前衛のカーラがゆっくりと距離を詰める。
今回、ドランバードがもう1体を抑えているから、カーラしか前衛がいない。
それもあって、少しだけブルーが前に出て、カーラをフォローできる位置にいる。
「フレンドリーファイア無いから構わず範囲攻撃とかバンバン撃っていいからね」
いや、普通のモンスターはそんなバンバン撃てるほど範囲攻撃スキルとか持ってません!
たぶん、オレだけでなく、莉菜や郁斗、オリヴィアも似たようなツッコミを心の中でした。
「とりあえず、コン、『稲荷狐の祈り』『影分身』『陽炎』『蜃気楼』!」
「カーラ、『闇刺突』『霞連槍』!」
「エルナ、『ロックオン』『スターバースト』!」
「ブルー、『鳴神』『電光迅雷』!」
「よし、私たちもいくよシルヴィーユ!『サウザンドアロー』!」
コンが妖術を用いてグールを惑わせる。
それを利用し、カーラが一気にグールとの距離を詰める。
そこに『電光迅雷』を使ったブルーがグールをカーラと挟み込むように立ち回る。
グールはアンデッドモンスターだから、光属性が弱点。
その弱点を見事にエルナがつく。
最大戦力のシルヴィーユは少し離れた場所でグールと1対1で戦っているドランバードをも巻き込む広範囲攻撃を放つ。
空中に向けて放たれた1本の矢が無数に分裂して2体のグールを襲う。
「……うそでしょ」
全然ダメージ入ってない。
いや、ダメージは与えてるけど、ほとんど柊先輩のシルヴィーユの攻撃。
Cランク相当の難易度、出現するモンスターも強いとわかってはいたけど、これは想像以上……
想像よりもダメージが入らなかったショックによる一瞬の硬直。
この一瞬でグールは反撃に移った。
薫先輩と柊先輩は、それに当たり前のように対応する。
「ドランバード、『竜爪牙』『竜掌拳』!」
「シルヴィーユ、『ストームアロー』『イグニスアロー』!」
反撃に移ろうとしたグールだったが、失敗に終わった。
攻撃を仕掛ける前にそれぞれドランバードとシルヴィーユが攻撃することでそれを潰した。
鋭い爪による斬撃をものすごい速さで飛ばし、離れた相手にも攻撃をすることができる『竜爪牙』。
まるで拳だけワープしたかのように触れること無く、少し離れた場所にいたグールを殴り飛ばした『竜掌拳』。
薫先輩は本当に一人でグールを完全に押さえ込んでいた。
オレたちが相手をしていたグールブルーとカーラに狙いを絞り、闇を纏わせた左腕を大きく横に薙ぎ払おうとした。
シルヴィーユは、その大きすぎる攻撃モーションによって生まれた防御の穴に的確に2本の矢を当て、弾き飛ばした。
この攻撃により、2体のグールのHPは残り5割を切った。
今、先輩たちが対処してくれていなかったらヤバかったかも。
オレもブルーも全く反応できなかった。
というより、攻撃されるって気づくことすらできなかった。
「カーラ、『ダークウェーブ』『ダークボール』!」
「コン、『狐火』『鬼火』!」
「エルナ、『シャインランス』『シャインアロー』!」
しっかりしろ、オレ!まずは目の前のモンスターを倒さないと。
その為にもみんなみたいに攻撃しないと!!
「ブルー、『スカーレットアロー』『プロミネンス』!」
「シルヴィーユ、『シューティングスター』『コスモフォールン』!」
カーラ、コン、エルナ、ブルーの放った魔法はグールが両腕に闇を纏わせて、大して鋭くも無い爪で切り裂いた。
ブルーたちの魔法でその存在を隠すように放たれたシルヴィーユの『シューティングスター』が直撃。
直後、グールが2体とも宙に浮き始めた。
オレの知らない未知の攻撃。
グールだけど、侮れない。
そう思って、警戒していると、柊先輩がオレの肩にポンっと手を叩いた。
「警戒しなくて大丈夫。これ、シルヴィーユのスキルで浮いてるだけだから」
「……え?」
これがシルヴィーユのスキル!?
こんなことまでできるのか。
「ドランバード、『水竜爪・滅』『水竜爪・破』!」
ここにドランバードが二つのスキルを叩き込み、仕留める。
ドランバードの『水竜爪・滅』と『水竜爪・破』はコンボスキルとなっている。
『水竜爪・滅』の直後に『水竜爪・破』で攻撃するとスキルの威力が大幅に増強される。
それが合わさって2体のグールのHPは一気に0になった。
オレは目の前のバトルをただ傍観することしかできなかった。




