第48話 黒杖解放
これで海夕を除く全員が一度ずつバトルを終えた。
次に海夕と誰がバトルするかを話し合った結果、郁斗になった。
海夕と郁斗の後はオレとオリヴィアの予定。
【水海夕VS二階堂郁斗 バトルSTART】
「来て、ニュクス!」
「来たれ、ネメア!」
海夕の1体目はニュクス。
ファンタジーで登場する魔法使いのような見た目のモンスター。
漆黒の髪を真っ直ぐに腰まで伸ばしている。
右手には漆黒の杖を持っており、先端には逆三日月型のフレーム。
その中央には漆黒の水晶が浮かんでいる。
対する郁斗の1体目はオリヴィア戦と同じでネメア。
「ネメア、『ゴーストタウン』!」
先に動いたのはネメア。
ここでも初手で『ゴーストタウン』を展開する。
「ニュクス、『属性調律・火』『エレメントランス』!」
「エレメント!?」
ニュクスが『属性調律・火』を発動すると髪と右手に持つ杖が紅に染まる。
ブルーやエルナの『フレイムランス』を彷彿とさせる火の槍がネメアへ放たれる。
これを見て、郁斗はニュクスの使ったスキルに驚きを隠せなかった。
以前、一緒に食事をした時にニュクスは人類種の魔法使いと海夕から聞いていた。
だが、今ニュクスが使った『エレメントランス』は人類種じゃなく、妖精種のモンスターしか使えないスキル。
郁斗から指示は出ていないが、ネメアは『エレメントランス』を最小限の動きで回避した。
「……落ち着け。近接戦は不利。よし!ネメア、『武装召喚・グリモワール』!」
空中に魔法陣が出現し、そこから禍々しいオーラを纏った一冊の本を取り出した。
「オリヴィアの時とは違う。遠距離戦用かな」
「まあ、そんなとこだ。ネメア、『ダークランス』!」
「っ!闇属性……。ニュクス、『エレメントウォール』!」
「お!なら、『影渡り』『ダークアロー』!」
ネメアの放った『ダークランス』をニュクスは炎の壁で防ぐ。
一時的とはいえ、炎の壁でニュクスの視界からネメアが消えた。
その一瞬を突いて相手モンスターの影に移動する『影渡り』でニュクスの背後へ回り込み、『ダークアロー』を叩き込む。
それにより、ニュクスは前のめりに体勢を崩した。
「くっ……。ニュクス、後ろに『エレメントボール』!」
「ネメア、『ブラックホール』!」
数歩前に進んだところで体勢を立て直して、即座に背後にいるネメアへ反撃する。
しかし、ニュクスの放った火球はネメアの持つ本を中心に出現した穴に吸い込まれ、どこかへ消えた。
「ニュクスにデバフ・状態異常は付与されてる。『ゴーストタウン』の効果は一方通行か」
「ネメア、『ダークボム』!」
ドカーン!!
直後、ニュクスの足元でなにかが爆発した。
その衝撃でニュクスとネメアは大きく距離を取る。
バトルはネメアがかなり優勢に進めていた。
既にニュクスの残りHPは半分を下回っている。
対するネメアはノーダメージ。
この状況でも海夕は少しも焦っていなかった。
「……はあ。やっぱり使わずに勝つのは無理か。ニュクス、『黒杖解放』!」
バトル開始時に使った『属性調律・火』で紅に染まった髪と杖が再び漆黒に戻る。
ただ、杖に関してはその形状を大きく変える。
先端の逆三日月型だったフレームがサークル状になり、その中心に星屑のような粒子が漂っている。
「ニュクス、『多重詠唱』『エレメントショット』『エレメントブラスト』!」
「……は?え、いやいや、この数は無理!」
【ネメア DOWN】
ニュクスの切り札『黒杖解放』は火、水、土、風、雷。
この五属性を全て同時に使えるようにするスキル。
この状態でエレメントスキルを使えば、通常と異なり、五属性の攻撃を別々に放てる。
普通に一回攻撃するだけで五回攻撃しているのと変わらない。
それに加えて『多重詠唱』はスキルLvに応じて一度に放てる。
ニュクスの『多重詠唱』のスキルLvは3。
つまり、今ネメアに向けて放たれた攻撃の数は2×5×3で30。
「来い、コン!『陽炎』『蜃気楼』『影分身』!」
コンを召喚すると同時に『陽炎』と『蜃気楼』で幻影をニュクスに見せ、抵抗する。
これだけ強力なスキルなら、なにかしらのデメリットがある。
もし、時間制限付きのスキルなら発動できる時間は極端に短い。
その一点読みにかけ、郁斗は時間稼ぎに徹する。
「無駄。ニュクス、『エレメントウェーブ』『エレメントボム』!」
五属性の津波がコンに押し寄せる。
それに加えてフィールドのあらゆるところで五属性それぞれの『エレメントボム』が爆発する。
フィールド全体を縦横無尽に駆け回り、『稲荷の境界線』で影分身と位置を入れ替えるなどして立ち回った。
郁斗はできること全て行った。
それでもニュクスの攻撃を凌ぐことはできなかった。
【コン DOWN】
郁斗の考えは間違っていなかった。
実際にニュクスの『黒杖解放』は30秒しか持たない。
しかし、フィールド全体を巻き込むような広範囲攻撃を前にコンの幻影は意味を為さなかった。
◆◇◆◇
なにあのスキル……
あの物量の攻撃を防ぐとか絶対に無理!
でも、さすがにデメリットはあるよな。
うーん、どうなんだろう。
可能性としては二つ。いや、三つかな?
一番可能性が高いのはシンプルに時間制限。
あとは、発動中に継続ダメージを受ける可能性。
状態異常によるスリップダメージが入ってたからな。
ダメージ量は変わってなさそうだったけど、ちょっと確信が持てない。
一番可能性が低いと思うのは、一定のダメージで解除。
「莉菜とオリヴィアはどう思う?オレ的には時間制限付きスキルって感じなんだけど……」
「時間制限だと思うけど、ちょっと自信ないかな」
「時間だと思います。スキル発動中も受けるダメージは一定で変わってません」
莉菜は自信なさそうだったけど、オリヴィアは明確に確信を持ってそう。
普段からカーラの攻撃で状態異常によるスリップダメージを見てるからな。
オリヴィアなら僅かでもニュクスのHPが減る量が増えたら気づくだろうし、たぶん合ってそう。




