第45話 悪魔の祝福
フィールド全体に爆発による黒煙が立ち込める。
そこに郁斗の悲痛な叫びが響き渡った。
「なんでそんなネタスキル仕込んでんだよ!?」
「万が一に備えてです!」
アルマが使用した『エネルギー大噴出』は俗に言うネタスキル。
その効果は自爆。
発動したら最後、自分のHPはどれだけ残っていようと必ず0になる。
当然、その威力は他のスキルと比にならない。
これだけならロマンスキルだが、『エネルギー大噴出』はフレンドリーファイアを貫通する。
つまり、味方も巻き込み攻撃する。
仲間を巻き込み、スキル発動から自爆まで少しラグがある。
強力な防御スキルが使えるモンスターなら、耐えることもできる。
この二つの要素からネタスキル認定されている。
【ネメア DOWN】
【アルマ DOWN】
黒煙が晴れると二つのウインドウが浮かび上がっていた。
「ああ、カーラ対策がほとんど吹っ飛んだわ!」
ウインドウを見た郁斗が盛大にぼやいた。
郁斗が用意したカーラ対策の根幹はネメアVSカーラの構図を作る。
ネメアが倒される。
それは郁斗が用意した対策が《《一つを残して》》全て台無しになったことを意味する。
「来い、コン」
「君臨せよ、カーラ!」
気を取り直した郁斗はコンを、オリヴィアはカーラを召喚した。
「ちょっと想定と違うけど、新入生代表トーナメントのリベンジさせてもらうぜ!」
「もちろん、受けてたちます!カーラが」
ネメアが展開した『ゴーストタウン』が展開されたまま。
障害物でお互いの姿が視認できない状況なので、コンがゆっくり近づいていく。
「カーラ、『悪魔の祝福』!」
「っ!?やっぱり使えるのか。でも、対策は用意してる」
『悪魔の祝福』。
悪魔専用スキルで召喚直後しか使えない。
その効果は相手モンスターに強制的にデバフと状態異常を付与する。
「『ナイトメア』!……え、なんで?」
『悪魔の祝福』で強制的にデバフと状態異常を付与してからの『ナイトメア』。
悪魔の開幕コンボ。
本来ならデバフと状態異常が付与されたコンに必中で当たるはずだが、不発に終わった。
それどころかカーラにデバフと状態異常が付与されている。
「よし、うまくいった!」
スキルによって展開されたフィールドの中には、強力な効果が秘められている。
ネメアが展開したフィールドの『ゴーストタウン』には、デバフと状態異常の反射という効果がある。
それによって、カーラが『悪魔の祝福』でコンに付与しようとしたデバフと状態異常がカーラ自身に反射された。
これが郁斗が用意したカーラの『ナイトメア』封じ。
「コン、『稲荷狐の祈り』『影分身』『陽炎』『蜃気楼』!」
「仕方ありません。カーラ、『ダークウェーブ』!」
このまま時間を稼げば状態異常のスリップダメージでカーラのHPが削られていく。
オリヴィアもそれを理解しているからこそ、範囲攻撃で『影分身』も一緒に一掃しようと試みる。
それに対してコンは回避する素振りを見せず、波に飲まれた。
「それクールタイム長いよな?次はどう攻撃を当てる?このままじゃカーラのHPが先に0になるぞ」
「くっ……」
どう攻めるか決められないオリヴィア。
いつもと違い、時間が味方じゃない。
その上、『ナイトメア』を封じられている。
「コン、『狐火』『鬼火』!」
「カーラ、飛んで躱してください!今、攻撃が飛んできたところに『ダークボール』『ダークランス』!」
「……っ!コン躱せ!」
カーラは幻影によってコンの正確な位置がわからない。
しかし、攻撃の出どころで大雑把ではあるが、それを割り出した。
しかも、かなり正確だった。
躱す必要すらないと思っていた郁斗は慌てて指示を出す。
「カーラ、その付近にコンがいます!そこに『連続突き』!」
「コン、適当に距離を取って時間を稼げ!」
やたらめったら攻撃を繰り出すカーラ。
数打てば当たる精神の攻撃だが、離れた場所にいるコンに掠りすらしない。
それからコン、カーラとお互いに攻撃を当てることができず、時間だけが経過した。
『陽炎』『蜃気楼』で作り出していたコンの幻影が消失した。
その一瞬の隙をオリヴィアは見逃さなかった。
「今がチャンスです!カーラ、『霞連槍』!」
最短距離で一直線にコンへと突き進む。
カーラの残りHPから残された時間は僅か。
焦りはなに一つない。
オリヴィアが、カーラが勝つための最善の一手。
「今だ!コン、『稲荷の境界線』!」
コンが稲荷の境界線というスキルを発動するとコンの数メートル前に一本の横線が引かれた。
カーラがその上を飛び越える。
しかし、なにも起きなかった。
なにも起きないままカーラの槍はコンを捉えようとした。
「コン、『焔爪』!」
郁斗はギリギリのタイミングを見極めてカウンターによる反撃を狙う。
しかし、このタイミングではカーラの槍の方が先にコンを穿つはずだった。
カーラの槍がコンを捉えた。
そう思われた瞬間、コンが消え、カーラの攻撃は空振りに終わった。
カーラはなにが起きたのかわからないままコンの追撃を受けた。
【カーラ DOWN】
「よっしゃぁ!!」
念願叶ってオリヴィアへのリベンジを達成した郁斗は声を荒げ、ガッツポーズする。
◆◇◆◇
最後の瞬間、観客席でバトルを見ていたオレは理解できた。
きっと、莉菜と海夕もわかってると思う。
これを見たら郁斗がオリヴィアと最初に戦いたいと言った理由もわかった。
最後のスキル、『稲荷の境界線』だっけ?
たぶん、境界線を越えた相手モンスターとコンを入れ替えるスキル。
カーラがコンを捉えたように見えた瞬間コンと位置が入れ替わったから間違いないと思う。
それによってコンはカーラの無防備な背後を取った形となった。




