第39話 VSレッドゴブリン
シグマさんはその後、オレに『ゴブリンパニック』は全二層と教えてくれた。
この先にエリアボスがいると思っていたけど、どうやらダンジョンのボスがいるみたい。
ボスの名前はレッドゴブリン。
Eランクダンジョンのボスの中では強い部類に入るらしい。
シグマさんはそこまで教えてくれたけど、これ以上はなにも教えてくれなかった。
実際に戦ってみればわかるとだけ言い残してどこかへ行ってしまった。
ボス部屋に入ると1体の赤いゴブリンがいた。
レッドゴブリンという名前で、かなり小柄な体格。
通常のゴブリンを赤くしただけにしか見えない。
でも、Eランクダンジョンのボスモンスターだし、弱いわけない。
たぶん、小柄な体格を活かした素早い動きが特徴のモンスターだと思う。
あと、名前にレッドってあるから火属性の攻撃もしてきそう。
両手両足の鋭い爪を使った物理攻撃メインだと思うけど、遠距離も警戒した方がいいかな。
よし、そんな感じで戦ってみよう!
「ギャアギャアギャア――――――――――!!!!」
レッドゴブリンが叫び声をあげるとこっちに猛スピードで向かってくる。
しかも、両手に炎を纏っている。
「ブルー、『電光迅雷』!」
雷を纏ったブルーと炎を纏ったレッドゴブリンの鋭い爪と激突する。
数秒の鬩ぎ合いの末にブルーがプルンプルンと後方へ勢いよく弾き飛ばされた。
レッドゴブリンは猛スピードで転がっていくブルーとの距離を詰める。
「リーフィア、『閃撃』!ラグニア、『シャインダイブ』!レッドゴブリンの足を止めて」
リーフィアの『閃撃』をレッドゴブリンの前方に飛ばす。
それで一瞬足が止まったところをラグニアの『シャインダイブ』が決まる。
間一髪のところでレッドゴブリンの攻撃はブルーに届かなかったけど、ブルーの残りHPはたったの4割。
一撃で半分以上削られた。
思ってたよりも攻撃力が高い。
『電光迅雷』でだいぶ威力が落ちてたはずなのに……
まともに攻撃を受けたら一撃でやられるな。
「ブルー、『プチヒール』!」
ラグニアの『プチヒール』の方が回復量が少ないし、そっちの方がいいと思うけど、一撃でも当たればやられる。
だから、ラグニアにはブルーの回復じゃなくて目の前にいるレッドゴブリンに集中してもらう。
「リーフィア、『スラッシュ』!ラグニア、『ホワイトクロー』!」
今、防がないといけないのはブルーへの追撃。
本当ならリーフィアとラグニアに距離を取るように指示したい。
でも、それをするとレッドゴブリンがフリーになってブルーへの追撃を許しちゃう。
リーフィアとラグニアは、左右から挟撃する形でレッドゴブリンに迫る。
「グギャァァ―――!!!」
雄叫びと同時にレッドゴブリンの足下から炎が吹き荒れる。
それが壁となって、リーフィアとラグニアの攻撃は届かない。
しかも、その炎はボス部屋の壁まで届き、ブルーたちを完全に分断した。
炎の中には、レッドゴブリンとブルーだけ。
かなり狭い直線上に道が開けているだけだからブルーに逃げ道はない。
ヤバっ!炎でレッドゴブリンとブルーが見えない。
どうする?ブルーならあの炎を突っ切ることもできるけど。
いや、それでもリーフィアとラグニアのどちらかとしか合流できない。
そしたら、孤立した方を先に倒される。
「それなら、ブルー、『フレイムフォース』!」
火属性のスキルだからレッドゴブリンへのダメージは期待できない。
でも、『フレイムフォース』は全方位攻撃。
これで炎の壁をぶち破る!
これで一度仕切り直そうと思っていたけど、レッドゴブリンの動きはオレの予想外で『フレイムフォース』を突き破って来た。
「ブルー、『ディバインシールド』!リーフィア、『スラスト』!ラグニア、『プチシャイン』!」
レッドゴブリンのライダーキックのような飛び蹴りがブルーの『ディバインシールド』と衝突する。
レッドゴブリンの動きが空中で一瞬だけ止まる。
そこにラグニアの『プチシャイン』が炸裂し、リーフィアの剣が突き刺さる。
「ブルー、『プロミネンスアタック』『鳴神』!」
リーフィアの剣に突き刺されたレッドゴブリンをリーフィアの方に弾き飛ばし、『鳴神』で追撃する。
すれ違いざまにリーフィアは『魂葬』で斬りつけ、ブルーの隣に立つ。
よし、このまま……え?
リーフィアの連続攻撃でレッドゴブリンにデバフ・状態異常の付与から悪化までできた。
多少は攻撃力も低下してるだろうし、ここからリーフィアとラグニアに距離を詰めさせて一気に攻めよう。
そう思ってたけど、レッドゴブリンは倒れる流れそのままに手を床につけてバク宙をする。
炎を纏った足を開き、空中で回転し、ラグニアを蹴り飛ばす。
みるみるラグニアのHPが減っていき、0になり、霧のように消えた。
【ラグニア DOWN】
くっ、油断してたわけじゃない。
最大限 警戒してたつもりだったけど、まだ足りなかった。
いや、冷静になれオレ。
ラグニアはやられたけど、まだブルーとリーフィアがいる。
ブルーの『プチヒール』、リーフィアの『魂葬』はまだクールタイムから明けてない。
回復手段はないけど、レッドゴブリンの残りHPは半分切ってる。
このまま距離を取ったままブルーの攻撃でコツコツ削る!
再び両手に炎を纏ったレッドゴブリンが突っ込んで来る。
それを『電光迅雷』で迎え撃つブルー。
ここまでは最初の激突とまったく同じだけど、今のレッドゴブリンにはデバフが付与されてる。
だから、今度はブルーが押し負けることはない。
そう思ってブルーを突っ込ませた瞬間、レッドゴブリンの口元が僅かに緩んだ。
タイミングよくジャンプしてブルーを躱した。
「え?」
ブルーがレッドゴブリンの下を通過した瞬間、拳を振り下ろされた。
床に勢いよく叩きつけられたブルー。
プルン、プルンとバウンドするブルーを今度は炎を纏った足でサッカーボールを蹴るかのように蹴り飛ばした。
【ブルー DOWN】
まだだ。まだ諦めるには早い。
リーフィアがいる。
それに状態異常のスリップダメージで着実にレッドゴブリンのHPを削れてる。
レッドゴブリンは地に足をつけ、前のめりに屈み、足から炎を噴出させ、その勢いでリーフィアにものすごい速さで詰め寄る。
え、嘘でしょ!?
そんなのあり?
予想外の状況にリーフィアに何も指示できなかった。
しかし、自分の判断で左手に持つ盾でレッドゴブリンをいなした。
そこからは短い時間だったけど、リーフィアとレッドゴブリンの激しい攻防が繰り広げられた。
最後はレッドゴブリンが右足でリーフィアの盾を蹴り上げた。
そのまま流れるように左足で防御がガラ空きになったお腹を蹴り飛ばす。
【リーフィア DOWN】
結果的に最後の攻防でリーフィアがレッドゴブリンのHPを単独で1割近く削ったけど、あと少し届かなかった。
あれだけ激しい攻防だと、オレが介入する余地がなかった。
寧ろ、オレが下手に指示しない方がいい気がした。
敗因を挙げたら切りが無いけど、ラグニアを早々に倒されたこと。
それに最初にブルーHPを回復させる際、ラグニアに『プチヒール』を使わせ……
いや、それをしたらラグニアのレッドゴブリンだけに集中できないからもっと早く倒されてた可能性が高いか。
どうにかして、もっと時間を稼げたら勝てたけど、根本的にブルーと比べたらリーフィアとラグニアのレベルとステータスが低い。




