第36話 『ゴブリンパニック』
「ギルドか……」
「モグモグ、モグモグ。私はいいと思います!モグモグ、モグモグ」
「オリヴィアは食べるのに必死ね。あ、私もいいと思う。寧ろ、こっちからお願いしたいくらいだし」
食事する手を止めて真剣に悩む素振りを見せている郁斗。
郁斗とは正反対でガツガツ食べながら賛成するオリヴィア。
そんなオリヴィアを見て苦笑いを浮かべる海夕。
ギルドか。正直、悩むな。
莉菜、オリヴィア、郁斗、海夕とみんなすごいプレイヤーだ。
今は一緒にパーティー組んで戦えてるけど、この先もやってけるかわからない。
莉菜たちは強くなりたい!って想いが強いと思う。
でも、オレはブルーを自分だけのオリジナルのモンスターに育成したい。
この先、強くなっていくみんなについて行けるか正直、不安。
それを考えたらオレは莉菜たちと同じギルドに入らない方がいい気がする。
「莉菜、悪いけど少しだけ考える時間をくれないか?」
「ごめん、オレも」
「それくらいいいわよ。すぐにオッケーもらえるとは思ってないし。それにギルドを作るにはDランクに昇格しないといけないから」
オレと郁斗は莉菜の提案に対する答えを一度保留にした。
ただ、郁斗まで保留にするとは思わなかった。
「返事はできれば夏休みまでにお願い」
それからいろいろと雑談しながら夕飯を食べて、みんな食べ終わって一段落したところで解散した。
あれから家でゆっくり考えてみた。
莉菜の提案はすごく嬉しいけど、やっぱりオレには無理かな。
かなり長く時間を設けてくれたし、もっとちゃんと考えてそれでも無理ならそう伝えよう。
莉菜たちならきっと理解してくれると思う。
ギルド結成の提案があった次の日。
今日から新しいEランクダンジョンに挑戦する。
挑戦するのは最近新しくできたばかりのEダンジョン、『ゴブリンパニック』。
『ゴブリンパニック』はゴブリンしか出現しないけど、奥に進めば進むほどゴブリンの上位種が出現する、らしい。
まだできたばかりで詳しい情報が出回ってない。
それにここは今まで挑戦してきたダンジョンとは違う。
『遊楽園』や『静寂の魔巣』みたいに複数のエリアがあるわけじゃない。
『ゴブリンパニック』は複数の階層ごとに区切られているタワーダンジョン。
正直、大した違いはないけど、これはこれで意外と年配の人たちから絶大な人気を誇っている。
今までテレビとかでやっていたゲームのダンジョンをARで再現した感じがいいらしい。
正直、オレには理解できなかった。
早速、ブルーたちを召喚して挑戦する。
タワーダンジョンは迷路の側面もあるから地図がないと迷う。
ゲームシステムが自動的にマッピングしてくれるから迷うのは最初だけだけど。
マッピングされた地図はいつでも見たい時に右上の地図を触れると目の前に拡大表示される。
その間もモンスターに襲われることもあるから注意は必要。
中はこれぞダンジョンって感じの暗い雰囲気の場所。
死角が多いから注意しながら移動しないと。
少し進むと角を曲がった所にゴブリン2体いた。
こっちが一方的に相手の位置を把握しているだけで、2体のゴブリンはまだ気づいていない。
「ブルー、こっちから仕掛けるよ。『電光迅雷』!リーフィアとラグニアは待機」
無言でリーフィアとラグニアは頷き、雷を纏ったブルーが目にも止まらぬ速さでゴブリンを攻撃する。
そのまま奥へ駆け抜け、リーフィア、ラグニアとゴブリンを挟撃する形になった。
ゴブリンが2体ともブルーに気を取られている今がチャンス。
「リーフィア、『閃撃』!ラグニア、『プチシャイン』!」
ゴブリンの背中にリーフィアとラグニアの攻撃が決まる。
正面にいるブルーと背後にいるリーフィアとラグニア。
どちらに向かっていくか悩む素振りを見せるゴブリン。
そこを一気に畳み掛ける。
「ブルー、こっちゴブリンに集中攻撃!『スカーレットアロー』『鳴神』!リーフィア、『魂葬』!ラグニア、『シャインダイブ』!」
いつもなら右や左って言うけど、今向いている方向がブルーとリーフィア、ラグニアで違うから指で指し示す。
それにより、ブルーたちはオレのから見て左側にいたゴブリンに攻撃を集中させ、倒す。
その後、残ったゴブリンを一方的にボコ……じゃなくて攻撃して倒した。
それからゴブリンと何回か遭遇したけど、大した苦戦はしなかった。
正直、Eランクダンジョンだからもうちょっと苦戦すると思ってたし、ちょっと拍子抜け。
ダンジョンはそこまで複雑な構造をしていないから1時間ほどで第一層のマッピングは終わった。
ここから第二層に行くにはエリアボスを倒す必要がある。
このダンジョン第一層のエリアボスはゴブリンナイト。
基本的に魔法とかの遠距離攻撃は何一つないらしい。
その代わり、近接戦がとにかく強い。
距離を取って戦おうにも魔法防御力が高いから自然と近接戦で戦うことになる。
ボス部屋に入ると正にナイトという言葉が当てはまるような白銀の甲冑を身にまとったゴブリンがいた。
リーフィアと同じで右手に剣、左手に盾を持っている。
ゴブリンナイトが一直線にこっちへ向かってくる。
「リーフィア、『スラッシュ』!」
いつもならブルーに『電光迅雷』で突っ込ませるとこだけど、今回はいつもと違う戦い方をする。
リーフィアとラグニアを前衛、ブルーが後衛で戦う。
リーフィアとゴブリンナイトの剣がぶつかり、鍔迫り合いが起きる。
「ラグニア、『シャインダイブ』!ブルー、『プロミネンス』!」
リーフィアと鍔迫り合いをしていたゴブリンナイトにブルーの『プロミネンス』が炸裂する。
それが目隠しとなり、ラグニアの追撃も決まる。
ゴブリンナイトの体勢がわずかに傾く。
「ここ!ブルー、『電光迅雷』!」
そこを突き崩そうとブルーが『電光迅雷』を使うけど、ギリギリのところで踏ん張ったゴブリンナイトの盾に阻まれる。
「なら、リーフィア、『閃撃』!ラグニアは『プチシャイン』!」
ブルーの『電光迅雷』が防がれるのは予想外だったけど、問題ない。
すぐにリーフィアとラグニアが追撃する。
それが決まり、後へよろめくゴブリンナイト。
すかさずリーフィアが間合いを詰める。
「『魂葬』!」
盾で防ごうとしたけど、リーフィアの方が僅かに速かった。
「『ホワイトアタック』『ホワイトクロー』!」
ゴブリンナイトのガードが崩れ、後ろに倒れる。
そこに横からラグニアが攻撃する。
そこをブルーとリーフィアが畳み掛ける。
あとちょっとで倒せる。
その時、スケルトンナイトの持つ剣が漆黒のオーラに包まれる。
なにかヤバい気がした。
「ブルー、『ディバインシールド』!」
剣はリーフィアに向かって振り下ろされたけど、ブルーが割って入る。
『ディバインシールド』で防ぎ切れると思ったけど、パリン!と割られ、攻撃はブルーに届いた。
しかも、『ディバインシールド』で威力が落ちている中、ブルーのHPを半分近く削った。
「ブルー、『プチヒール』!リーフィア、『魂葬』!」
最後はブルーをゴブリンナイトとの間に挟みながらリーフィアが『魂葬』で斬り裂いた。




