第13話 一回戦
遂に今日から新入生代表トーナメントの本戦が始まる。
今日は一回戦、明日二回戦、準決勝と決勝は明後日 行われる予定。
オレは一回戦第一試合からの出場。
対戦相手は藤森翔くん。
この人のことは全く知らない。
同じ1年生でもクラスは全部で10ある。
まだ入学したばかりだし、他クラスの人は何も知らない。
もうすぐ第一試合が始まる。
決勝トーナメントは白黒スタジアムで行われる。
正直、緊張と興奮で頭の中がぐちゃぐちゃだ。
スタジアムは本来、上位ランクのプレイヤーが出場するトーナメントでしか使われない。
ただ、今回は白黒学園のイベントということもあって、例外的にスタジアムでバトルを行う。
バトルが今か今かと待ち遠しいけど、その前に学園長からありがたいお言葉がある。
「予選を突破した生徒諸君、新入生代表トーナメント決勝トーナメント出場おめでとう!決勝トーナメントには、多くの観客がいる。未来の高ランカーを今の内に発掘しようと考えている高ランクギルドとかだ。――悔いが残らないよう頑張ってほしい!」
新入生代表トーナメントは低ランクのプレイヤーが出場する大会とは思えないほどに観客がいる。
将来、プロを目指している人はここで結果を残して、注目を集めようと躍起になる。
オレはそこを目指してるわけじゃないけど、周りの熱量で自然と気合が入る。
そして、遂に一回戦第一試合が始まる。
オレは入場ゲートからスタジアムのバトルフィールドに向かう。
うおぉぉぉぉ――――――!!!
ものすごい熱気だ。
とても低ランクプレイヤーが出場しているトーナメントとは思えない。
……こんな中でオレは今からバトルするのか。
【一回戦第一試合 バトルSTART】
目の前にバトルSTARTのウインドウが表示される。
オレにとって初めてとなるスタジアムでのバトルが幕を開ける。
「出でよ、ブルー」
「来い、レックス」
フィールド上に2体のモンスターが出現する。
2本指で非常に短い前肢。赤黒い鱗に覆われた巨体。
大きな頭に鋭い歯を持つ恐竜型モンスター――ティラノサウルス。
それに対してオレのモンスターは、スライムのブルー。
ぱっと見どっちの方が強そうかは明らか。
それもあって、観客席はざわめいた。
「スライムが決勝トーナメントに……?一応、警戒しておくか。レックス、『火炎弾』!」
灼熱の火球がレックスの口から放たれる。
「ブルー、躱して!」
プル!
それを軽やかな身のこなしで悠々と回避する。
「よし!そのまま接近して」
「近づかせるな。レックス、『火炎連弾』!」
近づかせるな、か。
ブルーとの近接戦を避けたい――いや、警戒してるのか。
……まあ、普通に考えてスライムが魔法を使えるなんて思わないし、当たり前か。
それなら、不意を突けば、確実に一撃は当てられる。
「ブルー、『マジックシールド』!」
連続で放たれた灼熱の火球はブルーの正面に突如として出現した障壁が弾く。
「今だ。『プロミネンス』!」
「はあっ!?」
防がれるとは思っていなかったのか、唖然としているレックスにプロミネンスが直撃する。
だけど、オレが思ってたよりもダメージが入らなかった。
「……もしかして。ブルー、『プチサンダー』!」
ダメージは少なかったけど、『プロミネンス』で怯んだレックスに『プチサンダー』も炸裂する。
『プチサンダー』がレックスに与えたダメージが『プロミネンス』とほとんど変わらなかった。
これを見てオレは確信した。
レックスはブルーと一緒で『火属性耐性』を持ってる。
『魔法耐性』の可能性もあったけど、それなら『プチサンダー』のダメージはもっと少ないはず。
ブルーの攻撃スキルは『プチサンダー』以外全て火属性。
相性は良くないけど、それは相手もきっと同じ。
寧ろ、回復魔法と火属性以外の攻撃スキルが使えるブルーの方が有利。
ギャオォォオ――――――!!!
ブルーの攻撃から立ち直ったレックスが雄叫びを上げる。
「レックス、『フレイムクロー』!距離を詰めて戦う」
レックスの両前肢は炎を纏った状態でブルーへ突進する。
ここで近接戦に切り替えてくるのか。
距離を取ったまま戦うのは分が悪いと思ったのかな?
それとも何か狙いがある?
……どっちにしろ距離を取ったまま戦うべきか。
「ブルー、近づかせないで。距離を取ったまま戦うよ」
プル!
「くっ、追いつけない……!!」
素早さはブルーの方が上みたいで、こっちのペースで戦えてる。
もちろん、動きながら攻撃してるからレックスのダメージは着々と蓄積してる。
途中、『火炎弾』や『火炎連弾』でブルーの動きを邪魔してくる。
当てるつもりのない攻撃がこれ以上ないくらい厄介で、遂に距離を詰められた。
「今だ!『フレイムクロー』!ここで一気に仕留める!」
炎を纏った右前肢の鋭い鉤爪がブルーを引き裂き、大きく後方へ弾き飛ばした。
「ブルー、『プチサンダー』!」
「はぁ?」
後方に弾き飛ばされながらも『プチサンダー』でレックスに反撃する。
「くっ、『火炎弾』『火炎連弾』!」
「『マジックシールド』!」
『マジックシールド』に『火炎弾』と『火炎連弾』が連続で直撃する。
それを目眩しに気づいたらレックスはブルーの目の前にいた。
「今だ!『フレイムファング』!」
回避は間に合わず、ガブリとブルーは噛みつかれた。
けど、『物理耐性』と『火属性耐性』を持っているからダメージは微々たるもの。
寧ろ、この状況を利用した。
「『プロミネンス』『ファイアボール』!」
レックスの口の中で『プロミネンス』と『ファイアボール』を炸裂させる。
ゲームだから与えるダメージが大きくなるとかはないけど、確実に当たる。
この攻撃がレックスのHPを0にした。
【レックス DOWN】
「決まったぁぁぁ――――!!!1回戦第1試合、勝者は鬼灯蓮!!」
その後第二試合から第八試合まで全てのバトルが行われた。
その結果、オレの次の相手は水海夕さんに決まった。
アナウンスで読み方を知ったけど、水が苗字で海夕が名前だとは思わなかった……
あと、二階堂くんと姫島さん、それからオリヴィアさんって人も一回戦を勝って二回戦に進んだ。
とりあえず、次の対戦相手である水さんの対策を考えよう。




