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短編集

喫茶店で推しを見守りたい

 私には推しがいる。この喫茶で働く男性店員二人、仲が良く注文が止まる間二人で冗談や雑談の内容にいつも耳を立て1人でにやけてしまう。なぜこの二人を推すことになったのか、それは私が初めてこの喫茶店を訪れた日。

「いらっしゃいませ! 1名様でよろしいでしょうか?」

 そう伺いを立てたのは茶髪の好青年。名札は青月と書かれた彼は目の色がきれいな青色でどこかの国のハーフであると思った。席についてすぐに黒髪でまるで執事のようにスーツ風の制服を着こなした旭名という名札をした青年がお冷とおしぼりを持ってくる。

「ご注文が決まりましたらお声かけください。もし声を上げるのをはばかられる様でしたら、手をこちらに挙げるだけでもかまいません。すぐ伺います」

 元気いっぱいな接客の青月と凛とした旭名。名前から想像する接客イメージを粉砕され、そのギャップで萌えてしまった。二人の会話や冗談の言い合いからも仲の良さが見て取れる。来店当日にして、私は二人が推になってしまった。二人のいる時間に来店できるように時間を調整している。

 店内は今日はガランとしており、あまり声を上げて呼ぶような状況ではないので二人のほうを見て手を上げる。旭名が、

「僕が行きますよ」

 と、青月に言ってこちらに来る。歩く姿はまるでホテルで働いているひとの様だ。

「お待たせいたしました。ご注文をお伺いします」

「えっとアイスコーヒーを」

「アイスコーヒーですね。アイスコーヒーにバニラアイスお乗せすることできますがいかがいたしましょうか?」

「あ、じゃあお願いします」

「本日は33度の猛暑日で冷房を強めておりますので、万が一寒いようでしたらお声がけください。」

 スッと一歩後ろに下がってからこちらを気遣いカウンターへ戻っていく。私は携帯でSNSを開き、見るふりをしながら二人やり取りに聞き耳を立てる。

「青、アイスコーヒー入った。僕はアイス作るから」

 旭名君はアイスメーカーを取り出す。クルクル回して冷やしながら作る昔ながらの機械である。人の手で回して作るため、硬さやアイスの配合分量も使用者次第となってくる。幾度か同じものを頼んでいるが、彼のアイスは日によってバニラエッセンスやアイスの硬さが変わる。正確には外の気温に応じて溶ける時間が考えられているのだ。

 一方青月君はコーヒーをミルに入れて挽き始め、同時にフラスコのようなものも準備を始める。コーヒーを家で作るときはインスタントなのであの機械の正式名称はわからないがコーヒーを抽出する機械である。彼の淹れるコーヒーは2種類濃さがある。1つはアイスなしの場合。有の時よりかは薄めで豆もすっきりしたものが使用されている。もう1つは今回のようにアイスがセットで入る場合、まず豆はどちらかといえば味の深みがあり、抽出も濃い目に出ている。単体で飲むこともできるが乗せているアイスを溶かしていくうちにカフェオレのようになっていく。完全に溶けても計算されたかのようにコーヒーの味を残しつつバニラアイスを感じさせるのだ。

 さて、推したちは今日どんな会話をするだろうか、聞き耳を立ててみる。

「そういや定期テストどうだったん? オレ75点!」

「青は寝てるのになぜそんな点数をとれるの? 不思議でしょうがないよ」

「だって教科書見てればとれるじゃん」

「それ、僕以外の前で言ったら友達なくすよ」

「えぇ? そういうひなは何点なん?」

「一問間違いで97点」

 やはり旭名君は頭がいいようだ。しかし寝てても高得点を出す青月君もちゃんと勉強したら点数とれるのではないだろうか。

「青は点数とれるんだからせめて起きてればいいのに。そのせいで成績がいつも真ん中なんですよ? 起きてれば確実に一番いい評価をもらえる」

「いいんだよぉ。おれは平凡なところに行きたいの! そんな評価社会に出たらあてになんないって」

「社会に出るために必要なんですよ。あ、そろそろアイスできる」

「こっちもコーヒーできるよ」

 立ててた聞き耳にイヤホンをして音楽を聴いてるフリをする。SNSに、

「今日も推しが尊い」

 とだけ投稿した。

「お待たせしました。バニラアイス乗せのアイスコーヒーです。本日猛暑日ですのでアイス固めに仕上がっております。溶かす際におこぼしにならないようお気をつけください」

「ありがとうございます」

 まるで今まで聞いてた音楽を止めてイヤホンを外したかのように見せ、アイスコーヒーを受け取り、アイスをちょっとずつ溶かし始め、こぼさないように気を付けながら再び二人の会話に聞き耳を立てる。


 あぁ、今日も推しが尊い

登場人物紹介

・主人公

 初めてこの喫茶に来た時がたまたま青月と旭名二人で店を回している日だった。ギャップに心惹かれ、即二人を推し認定している。カプ想像もしておりアサアオだといいなと思っている。


青月あおつき 誠也せいや

 カフェ”ツイン”のバイト。授業は寝て、家で教科書を流し見して点数を取る天才タイプ。授業を聞いていないのでその分点数を落としているもしそこも解いたら確実に100点をとれるだろう。適当な会社でできドな仕事をしたいと思っており、具体的な進路は決めていない。カフェの飲み物担当。


旭名あさひな 亜希あき

 授業を聞いてノートを取り、教科書にもマーカーを引く努力タイプ。青月のことは頑張ればできる人間だとわかっているからこそ気を使って小言を言っているが、実際に直すとまでは思っていない。いわばコミュニケーションの一環でいつもの会話である。将来はプログラマーになりたく、家ではパソコン系の資格の勉強をしている。カフェの料理担当。


:後日談:

 今日は新人の入社日! 新社員紹介を見て私の目は飛び出そうになる。

私のいるシステム課に旭名君が、そして事務課に青月君が配属されていた。まさに仰天である。うれしさと友人にカフェの自慢をしていたことが恥ずかしくなりとりあえず10分くらいお手洗いに身を隠した。

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