前編
忘れた頃にやってくる。
一年ぶりにやってくる。
作者がノればやってくる。
それが大久野学園新聞部。
私立大久野学園新聞部員「増子 美貴」は数日前に発生した「スカイ・シャーク事件」の取材の為、学園の風紀委員長にインタビューをしていた。
戦いの余波で荒れた校舎を業者さん達が懸命に復旧工事をしている。
その音を背景に、空き教室にて取材していた美貴は委員長の発言をメモに纏めてから彼女に尋ねた。
「なるほど……科学部の皆さんのことはどう思われましたか?」
その質問に苦々しい顔をしながら彼女は答えた。
「非常に……不服だが! 奴らのお陰で事件は解決できた、その点は感謝しているよ……だがな?! 予想できるか?! 空飛ぶ三つ首のサメが学園に攻めてきて! それに対抗して東京タワーを巨大ロボに改造するなんてッ?!『そうですよね……』というかまだ納得出来ていないんだぞ?! なんで薬品がかかっただけでタンポポが東京タワーになるんだよォッ?!」
「お、落ち着いて下さい!」
「す、すまない……少々気が立ってしまった……」
シュンとする委員長、クセ強生徒達のやらかしを取り締まる心労はすさまじいだろうなと思わず同情させられる。この人少し休んだ方が良いのでは?と本気で心配する美貴。
そろそろ取材を切り上げようと最後の質問をした時だった。
「それでは最後に……委員長?『しっ! 静かに!』?」
委員長は静かにするように言うと警戒しながらゆっくりと扉に近づき、そっと細く開けた。
「なっ?!『どうしました? えっ?!』」
廊下の光景に驚く委員長、美貴も後に続いて覗くと委員長の驚愕の理由が判明する。
「なんだこいつらーー?!」
「きゃーー!」
「逃げるんだヨッーー!」
「「「「「「「「「アァァァァアアアアア……」」」」」」」」」
逃げ惑う生徒達と彼ら彼女らを追うパンストを被った生徒達の姿がそこにあった。そしてパンスト生徒達の手元にはなぜかパンストが握られている。
「あっ!?」
「いけない!」「委員長?!」
一人の生徒が転んでしまう。委員長が助けだそうとした瞬間だった。
「きゃぁぁぁ! ……ああああああ」
追いかけていたパンスト生徒が飛びかかり、転んだ生徒の頭にパンストを被せる。被せられた生徒は立ち上がると、他のパンスト生徒達と同じく逃げる生徒達をパンスト片手に追いかけ始めた。
「くっ?! 遅かったか!」「委員長! 一先ずドアを!」
委員長は悔しそうにしながら扉を閉めて、美貴と共に厳重に固定させる。
「一体何が……」「分からない……」
困惑する二人、そういえばと美貴は言う。
「理事長は?! あの人なら!」
残念そうに委員長は答えた。
「残念だが……あの人は今、エジプトだ『なんで?!』悪い吸血鬼を退治しに行くとかでな、肩幅のゴツい特徴的な服装の人達と昨日の朝から向かわれたよ『そんな……』あの人がいればもう少し事態はマシだったかもしれん……『僕等でやるしか無いねぇ……』誰だっ?!『一先ず入れてくれるかい?』お前は……分かった」
声のした方を向くと、機械的な吸盤を使って窓ガラスに張り付いている科学部部長の姿があった。窓を開けて部長を中に入れる委員長、汗を拭いながら部長はイスに腰掛けて呼吸を整える。
部長に尋ねる美貴。
「何が起きているんですか?!」
真剣な顔で部長は答えた。
「パンスト型の寄生生命体がその数を増やそうとしているのさ……どんどんその数を増やしているよ……」
「なんでそんな事が……」
困惑する美貴、その発言にさっと顔を反らした部長を委員長は見逃がさなかった。
「おい……ゼンブ、イエ……」
本気の殺気を滲ませて部長に尋ねる委員長、普段は飄々としている部長だが今回の委員長のマジっぷりに怯えて話し出した。
「一時間前だよ……スカイ・シャーク事件の我が部の功績が理事長直々に認められたのさ、彼のおごりで高級焼き肉店で慰労会を開いてくれることにもなってねぇ『いいなぁ……』美貴くんもそう思うだろ? それはもう部員皆が大喜びではしゃいださ。もうそれはすんごい位にテンションがブチあがった、そしてそれは起きたんだ……」
「一体何が?」
「その場のノリでパンスト相撲をしていた部員の頭、というよりパンストにある薬品がかかったんだ、そしたらその寄生生命体が生まれたって訳さ……『まさか?!』そうだ委員長、以前に君と取り合ったあの薬品だよ、タンポポを東京タワーに変えたあの薬品さ」
「……『委員長?』『どうしたんだい?』……」
無言で立ち上がった委員長は部長をじっと見つめる。
異変に困惑する美貴と部長、二人が瞬きした瞬間だった。
「お前らのせいかァッッッッ?!『ぎぃやぁぁあああッ?!』」
一瞬で部長に接近、鬼の形相で彼にニークラッシャーを食らわせた。悶絶して地面に倒れ伏す部長とそれを見下ろす委員長。痛みをこらえながら部長は言った。
「ほんと、今回のは事故なんだよォ?! 僕でさえあの薬はもう無いと思っていたんだからさアッ?! 君との取り合いで予備を作っていたなんてすっかり頭から飛んでいたんだッ! それがたまたま今回の浮かれ騒ぎで発掘されてかかちゃっただけなんだよォ……『言い訳すんなやァァッッ!』ンアァァッ?!」
またしてもニークラッシャーを食らわせる委員長、部長は痛みでのたうち回っている。
それを睨みながら美貴と委員長は今後の行動を相談し始めた。
「早くどうにかしないと学園の外にまで行っちゃいますよ?!」
「その点は心配無い、非常時には学園の敷地を覆う電磁ウォールが展開されるようになっている。以前にそういう装置を作るよう理事長が指示されてな、こいつら科学部がそれを開発設置済みだ。だから内から出ることも外から入ることも不可能なんだ。その証拠にほら、窓から見てみろ」
「確かに……パンスト達は敷地外に出ようとしてませんね……」
「問題はパンスト共をどうやって倒すか、というか寄生された生徒は大丈夫なのか?」
這いつくばりながら顔だけを上げた部長が言う。
「フゥッーー……フゥッーー……その心配は無いと思うよ? 所詮はパンストが変化して生まれた生命体だからね、宿主に危害を加えるような真似は出来ないはずさ」
「元はお前の薬が原因なんだ、何か方法はあるんだろうな?」
膝をさすりながら部長は答える。
「手元に原因の薬があってねぇ……どうにか部室の機材と薬品を使えれば、寄生体だけを殺す毒が作れるよ……」
「そうか……」
ため息をつくと委員長は美貴と部長の二人に言う。
「よし、これからパンスト共を突破して科学部部室を目指そう」
「そうするしかないですよね……」
「そうだねェ……」
立ち上がった三人は扉の前に向かい、立ち止まる。
委員長が後ろを振り返って言った。
「私、部長、美貴君の順で進むぞ? 殿を任せて良いか?」
殺る気スイッチをオンにした美貴が答える。
「分かりました、皆殺しですね♡『殺すなバカ……半殺しぐらいにしとけ』は~~い☆『物騒だねぇ……』」
美貴をたしなめる委員長、二人のやりとりに青ざめながら部長が言う。
「一応注意をしておくと、パンストを頭に被させられたら乗っ取られてしまう。実際、僕以外の科学部皆がそれで寄生されたからねぇ……その点だけにはくれぐれも気を付けておくれよ?」
無言で頷く美貴と委員長、そして先頭の委員長が扉に手をかけた。
「走れェッ!」
一気に扉を開けて走り出す委員長、それに続く部長と美貴。三人に気付いたパンスト達は追いかけ始める。
走り始めて直ぐの階段手前、目の前の曲がり角からパンストに寄生された女子生徒が飛び出してきた。
「すまん!」
それを屈んで回避した委員長はアッパーをカマし、浮いた足を掴んで放り投げる。
「えい☆」
「とりゃ♡」
「ほ~~い♪」
美貴は、後方から飛びかかってくるパンスト生徒達に容赦無く金的や回し蹴りを食らわせながら委員長に続く。
「君ら容赦が無いねェ……」
特に何もしていない部長がそうつぶやきながら委員長の後に続く。
四方から迫るパンスト達を時に投げ飛ばし、蹴り飛ばし、殴り飛ばし、容赦無く突き進む委員長と美貴。二人の容赦の無さに部長は若干恐怖しながら科学部部室までの道を進み続けた。
そして三人はどうにか目的の部室がある棟にまで近づくことに成功する。
息を切らしながら委員長は部長に尋ねる。
「っはぁっ……この棟の二階奥だな?!」
「ぜぇっ、そうだよ」
「もう少しだ! 行くぞ!『委員長くんっ?!』なっ?!『破ァッ!!』お前は!」
委員長の一瞬の隙を突いて飛びかかるニンジャ部部員に寄生したパンスト。しかしその真横から衝撃破が放たれ、ニンジャパンストは真横にすっ飛ばされた。
「大丈夫か?」
「助かった……」
弁髪に鍛えられた逞しい身体が特徴的な中国武術探求会の会長が声をかけた。以前のトラブルを思い出し、苦々しい顔をして彼に礼を言う委員長。彼の背後から更に声が発せられた。
「どうやら無事なのが他にもいたようだねぇ『ぶひっ!』一先ず皆で逃げるよッ!」
そこにはブリーフ一丁にギャグボールを加えたイケメン男子達五人とその背におぶられたメイド服姿に赤いろうそくと鞭を握った女子生徒達五人があった。先程の発言は先頭にいた学生とはとても思えないほどの色気と貫禄を醸し出しながら仲間達を率いているメイド生徒から発せられていた。
そんなアブノーマルな生徒達の後方に続いて赤いスカーフを首元に巻いたツインテールの活発そうな女子生徒もいる。そこに遅れて現れた洋式剣道同好会の女子達五人が自分達の後方から迫るパンスト達を盾で押さえながら警告してくる。
「くっ、まだ来る! 早くしろォッ! ブッ飛ばすぞッ!」
訳の分からない組み合わせに困惑する美貴を余所に委員長は指示を出す。
「なら科学部部室に! 私達はそこを目指している!『分かった、聞いたねあんたら! そこに行くよ!』走れェッ!」
走り出す委員長の後に続いた一行は迫る様々なパンスト達を蹴散らしながら、どうにか科学部部室に到着することに成功した。内部にいたパンスト科学部部員をぶちのめしながら部室の制圧と籠城を完了させる。
「直ぐに作るよ」
そう言うと部長は部室内の薬品や機材を取り出して毒の生成を始める。それを横目に委員長が途中合流した生徒達に声をかけた。
「お前らは怪我は無いか?」
会長が代表して答えた。
「私達は大丈夫だ、そちらは?『私達も平気だ』すまないが何が起こっているか分かっている事を教えて欲しい」
そう尋ねられると部長を睨みながら委員長は経緯を説明し始めた。
それから説明を終えると聞かされた生徒達はあきれた視線を部長の背にぶつけつつ事態を把握した。
そして美貴はずっと気になっていたことを他のメイド達から”姐さん”と呼ばれ、合流した時からやたらと統率力のあったメイドに尋ねる。
「あの……『ん? なんだい?』皆さんはなんでメイド姿で?」
「ああ、これかい? これはアタシら”人間心理探求会”の活動の一環でね、ドSメイドについての探求していたのさ」
「は? えっ?」
学校でそんな事を?と本気で引く美貴。姐さんが続けた。
「元々はSMについて色々調べていたんだけどねぇ、そこから派生したのさ……本来は主人に仕える身のはずのメイドに冷たく扱われると興奮する、そんな風に感じてしまう心理を解明したくなったのさ。だからこの豚共に協力して貰っていた所にこの騒ぎだよ、全く困ったねぇ……」
そして豚共と呼ばれるイケメン男子生徒達に目を向けた美貴は彼らについても姐さんに尋ねる。
「それじゃぁ……この人達も……『そうさ、生粋のドMだよ?』ワぁ……」
化け物を見るかのような視線を彼らに向ける美貴。
「ぶひひひぃん!!『ひぃッ?!』」
その視線に気がついたブリーフ姿のイケメン男子達が興奮して身もだえする。彼らにとっては小柄な後輩女子生徒からの軽蔑のまなざしはカンフル剤でしか無く、大興奮状態となる。
直ぐに姐さんが軽く鞭を振るい、彼らを静かにさせて言う。
「堅気さまに迷惑かけんじゃ無いよ!『『『『『ぶひぃ……』』』』』悪いねぇ、こいつらはどうしようもない豚野郎なのさ……『はあ……』」
詫びる姐さん、困惑する美貴、困り顔で姐さんは続けた。
「それはそれとしてこれがNTRってやつかい? 自分の豚が余所様に取られるのは何だかやだねぇ……脳破壊されてでもNTRが良いってヤツもいるんだ、世の中不思議だねぇ『いや違いますからね?!』そうかい? アンタは結構Sの素質あると思うけど『ええぇ……』次の研究テーマはNTRがいいかもねぇ」
美貴の肩に手を乗せた委員長は言った。
「気にするな、奴らは心理……というより性癖について色々考える集まりなんだ『はぁ……』一応、顧問もいるし我々の抜き打ち検査もパス出来ているしで問題は無いはずなんだ……」
不本意そうな顔をする委員長、そして美貴は彼らから視線をずらして気付いた。
「帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅帰宅……」
赤いスカーフの女子生徒が虚ろな目でカタカタと震えている。
「あの……あの人は?」
委員長は答えた。
「ヤツは帰宅部のエースで”紅のスピーディーランナー”と恐れられている。その二つ名から通称”紅ちゃん”と呼ばれているぞ『はあ……』あの様子だと……直ぐに帰れない事への禁断症状が出ているだけだから気にしなくて良いな」
「帰宅……帰宅?!」
気付いた紅ちゃんが委員長に尋ねると彼女は答える。
「まだだぞ」
「帰宅……」
ションボリする紅ちゃん、そして先程からやたらと物騒な相談をしている洋式剣道同好会の女子達に視線を向ける美貴。やたらと殺気立っていたのでスルーすることにした。
毒を作っている部長が美貴達の方を向いて言った。
「さて諸君、後少しでパンスト共にだけ効果のある毒が完成するんだが、一つ問題がある。聞いてくれるかい?」
その場の全員の注目が集まった事を確認した部長は続けた。
「最初は各自が水鉄砲に毒を入れて手当たり次第に撃ちまくる、というつもりでいたんだが……それだとどうしても一度に作り出せる量に限界があるから無理だ『何ィ?!』委員長くぅん、最後まで聞きたまえ……直ぐに数が用意出来ない分、少量でもうすんごい高濃度な物を用意することにしたよ『それで?』そこからが皆に相談なのさ」
一呼吸置いた部長が言う。
「水で希釈した毒をスプリンクラーで散布する方法を提案するよ。一度に学園中に大量にばらまけるんだ、効率的だろ?」
「確かに……」
部長の話に納得させられる美貴達、部長は続ける。
「スプリンクラーの水源は教務室先の地下の貯水槽だ。教務室から地下への鍵を手に入れて地下に突入、そして貯水槽に毒を入れることが出来れば丁度良い濃度になる。後は教務室から操作してスプリンクラーを作動させれば校舎内のパンスト共は一網打尽という訳さ」
納得した姐さんが答えた。
「アタシらにその道中の露払いをして欲しい訳だね?」
「そういうことさ、頼めるかな? ん? どうしたんだい委員長くぅ~~ん?」
嫌そうな顔をする委員長と一部の生徒達、それに不思議そうな顔をする部長や美貴、美貴と同学年の生徒達。美貴が委員長に尋ねる。
「どうしたんですか? 私としては良い案だと思いますけど?」
「いや……反対している訳じゃないんだ……そうか、君らはまだ入学していなかったな……」
「私が話そう『頼む、会長……』」
委員長から引き継いだ会長が話し始めた。
「あれは去年の春頃、君たちの学年がまだ入学するよりも前に起きた事件だ。その時のゲーム部は部費の工面の為にあるゲームを開発し発表した『それは?』”ケモ娘 プリティハンター”という物だ『あっ! それ私もよくやっていますよ?!』私もだ『そうなんですか? えっ、じゃあ今度対戦しませんか?』やだ『なんでですかァッ?!』『美貴君、邪魔をするな』『委員長まで?!』ともかく! 話を戻すがそれは学園中で大ヒットした、だがそこで事件が起こる」
部長が割って入って言った。
「我が部の卒業生であるプログラミング専門の小波先輩が彼らゲーム部に苦情を入れたんだよ。彼曰く、自分が開発したプログラムが勝手に使われている、とね。そこからゲーム部と小波先輩の喧嘩が始まり、それが連鎖しまくって色々なもめ事が学園中で多発して荒れに荒れたんだよ。最終的にスプリンクラーを通して学園中に性別を逆転する薬剤がばらまかれる事態にまで発展したねぇ……まあそれで文字通り頭が冷やされたのか色んなもめ事は落ち着いたよ。委員長くぅ~~んや他の生徒くん達はその時の事を思い出してあんな顔をしているんだろうねぇ」
「はぁぇ……そんな事が……」
思わぬ事件に呆ける美貴や同学年の生徒達、部長が委員長の方を向いて言った。
「正直、これしか方法は無い。頼めないかな?」
「しょうがあるまい……」「一向に構わんッッ!」「くっ、やってやる!」「やるしかないねぇ」「帰宅?」「はいっ!」
委員長が、会長が、洋式剣道女子達が、姐さんが、紅ちゃんが、美貴が、その場の生徒達が事態打開の為に動くことにする。
「助かるよ、それでは僕は仕上げに入るよ」
そう言うと部長は作業を始めた。
姐さんが美貴達に言う。
「さて、作戦会議といこうか『これを使うと良いよ』これは……校舎の地図か、助かるよ。皆、集まっておくれ!」
部長から渡された学園の地図をテーブルに広げた姐さん、集まった生徒達がそれに注目している中で指示を出し始めた。
「そうだねぇ……アタシらと紅ちゃんで陽動を、残りは突撃を担当しようかねぇ……女騎士ちゃん達が殿、美貴ちゃんと部長が中間、委員長と会長が先頭、の陣形でお行き。教務室で地下の鍵を手に入れたら美貴ちゃんと部長で地下に、そして残りは教務室の制圧、どうだい?」
「それしか無いだろうな……」「一向に構わんッッ!」
頷く突撃チームの面々。美貴が尋ねた。
「陽動チームの戦力は足りますかね?」
「大丈夫、心配しなさんな……意外とこの豚共はタフだし紅ちゃんもいるからねぇ『でも今の紅ちゃんさんは……』まあ、見てな……紅ちゃん、ちょっといいかい?」
紅ちゃんに声をかける姐さん、白目剥きだし全身ガクガクのよだれダラダラ状態で彼女は返事をした。
「帰……宅?」
諭すように姐さんは言った。
「帰宅する時には色々あるもんだろう? もしかしたら追っかけ回されながら帰宅する事も有るかもしれない、これはその練習だと思えないかい?『き・た……そうだね、確かにその観点は抜けてたよ。それでアタシはどうすれば?』紅ちゃんは校舎外に出ちまった奴らを引き連れて校舎内に入れてほしいのさ、そしてアタシら心理探求会は校舎内で派手に動いてパンスト共の注意を引く、あんたらいけるかい?」
「「「「はい、姐さん!」」」」「「「「「「ぶひひひん!」」」」」「オッケー!」
チョロすぎる紅ちゃんの将来が心配になる美貴、それを余所に陽動チームの士気を上げる姐さん。
そして地図を見ていた委員長が険しい顔でつぶやく。
「しかしこれは……『どうしたんですか? あぁ……』」
教務室付近の地図を見て美貴は委員長の懸念を把握した。
そして会長が言う。
「教務室近辺には格闘技系の部室が集中配置されていたんだったな……そうなるとこの近辺は激戦区となりそうだ」
委員長が決意したかのように言う。
「だがやるしか無い」
「そうだな……我が武がどこまで届くか試させて貰おうッ!」
「「「「「くっ! ツブす!」」」」」
闘志を燃やす委員長と会長、女騎士達もやたらと物騒な武器を取り出してメンテナンスを始めた。
それから一同で細かく作戦を詰めてから姐さんが部長に言った。
「それで? 部長さん、毒は出来たかい?『もう少しだ、この熱が冷めれば……そうだ、今のうちに』何してるんだい?」
部室の端の棚をあさり出す部長、姐さんが怪訝な顔をしながら待っていると部長は取り出した物を次々と全身に装着していった。
驚いた顔で委員長が言う。
「まさか、それは……」
全てを装着した部長が答えた。
「うん、スカイシャークと相打ちになったロボの残骸を再利用した物さ。中々にイカすアーマーだろう?」
タンポポカラーの異様にゴツいパワードスーツを装着した部長がどや顔でポーズを取る。
あきれた目をして委員長が言った。
「それで? 毒は?『もう出来る、安心したまえよ』そうか、早くしろ」
そうして部長は毒々しい色合いの液体をフラスコから頑丈そうなボトルに入れ替える。そしてしっかり封をしてから言った。
「これで毒は用意出来たよ、一応作戦を教えてくれるかい? あとこれを皆に」
人数分の無線機を渡してくる部長、各自がそれを受けとって装備し、委員長が彼に作戦の説明をする。
各自の準備が終わったことを確認した姐さんが部室内の生徒達に言う。
「さて、皆さん方! 準備はイイかい?! 大暴れの時間だよ!」
扉の前に近づいた”姐さん”と配下の女子生徒達は鞭と赤ろうそくを装備してドMイケメン達に自分達を背負わせる。
それから紅ちゃんと顔を見合わせて頷いてから、姐さんが代表して一同に言った。
「それじゃあ打ち合わせ通りに、まずはアタシらと紅ちゃんで陽動を始める。そうだね……十分後にあんたらは教務室を目指し始めな、それまでにどうにかアタシらでパンスト共の注意を引くから……紅ちゃんはどうにか校舎外に出ちまった奴らを中に引き連れておくれ『任せて!』よし、始めるかねぇ……皆、後は頼んだよ?」
委員長が代表して答える。
「任せてくれ、そちらも気を付けるんだぞ『誰にものを言っているんだい? 任せなさいな! 行くよ! あんた達!』『『『『『はいッ!』』』』』『『『『『ブヒイィィィッン!!』』』』』『うんッ!』頼んだ!」
一気に扉を開けた陽動チームは走り出した。
姐さんを含む人間心理探求会の面々は、廊下にいるパンスト達の注意を引きながら科学部部室から離れていく。紅ちゃんは廊下の窓を開けると一気に地面まで飛び降りてヒーロー着地、そして集まり出したパンスト達の追撃を躱して、引き連れながら縦横無尽に移動を始めた。
「皆さん……」
心配そうにつぶやく美貴、彼女の肩に手を乗せた会長は言った。
「私達もやるだけの事をやらんとな……『はい』」
それから十分が経過する。
その間、ドMイケメン達の雄叫びやドSメイド達の鞭を振るう音が校舎中に響き渡り続けていた。
時計を見た部長が美貴達に言う。
「そろそろだねぇ……」
扉の前に、委員長と会長、美貴と部長、女騎士達の順に並び、委員長が代表して扉に手をかけて言う。
「行くぞ……走れェッ!」
一気に開けて走り出した。
陽動チームのお陰で数は減ってはいたが、それでも単体で点々と佇んでいる個体はいた。それらが美貴達に気がつき襲い掛かってくる。
「邪魔だァッ!」「覇ァッ!」
迫るパンスト相手に委員長が跳び蹴りをカマし、会長がズボンから多節棍を取り出して振るい打ち、二人は迫る相手を迎撃しながら進軍を始める。
「続けェッ!」
委員長の言葉に美貴達は続いて走る。
美貴達による、学園を取り戻す戦いが始まった。
大久野学園部活紹介(一部抜粋)
・科学部:部内でもそれぞれの専門分野に分かれており、実は一枚岩ではない。
・人間心理探求会:真面目に人間の心理、とりわけ性癖について探求している。高校生ながら多くの研究成果や論文を発表しており、スケベ業界方面からも心理学方面からもかなり注目されている。
・帰宅部:部活動に所属していない生徒達という意味では無く、学校から自宅までの帰宅時間を競うガチのRTA集団の集まり。合い言葉は「距離は言い訳にならない」である。
・中国武術研究会:弁髪の会長を中心に会員達は真面目に鍛錬に励んでいる。とはいえハートが燃えると周囲に迷惑をかける鍛錬を始めがち。基本的に紳士的な気性の人物が多い。
・洋式剣道同好会:ガチで騎士を目指す者達の集まり。実は騎士道に対する方向性の違いから男女間の仲はあまり良くない。
・新聞部:実は各部員の戦闘力は高めである。
後編は明日の18:00投稿予定です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後の執筆の励みになりますので是非とも”☆”や”いいね”をよろしくお願いします。




