第4話 能力の発現
目を覚ますと、部屋に薄明りが差し込んでいた。朝のようだ。
天井の節の数をぼんやりと数える。
(ここは……?俺の部屋だ)
粗末な木のベッドと、使い古され擦り切れた毛布。
つい先ほどまで畑にいたような気もするが、どうやら俺は夢でも見ていたのかもしれない。
あの出来事が脳裏をよぎる。
黄金の髪をした美女。自らを精霊と名乗っていた。
「……精霊?」
口の中でその言葉を呟いてみる。
我ながら可笑しかった。
疲れすぎて幻を見たんだ。そう思うほうが現実的だった。
顔を洗い、着替えを済ませる。
「……腹減った」
空腹のせいで、腹から地鳴りのような音がする。
三日ほど、水だけで生きている。
さすがに何かを食べなければならない。
だがこの村――カレンソでは、俺に品を売ってくれる店などない。少し歩けば食料品店があるが、間違いなく門前払いされるだろう。
仕方なく、少し離れた地方都市エルドリッジまで歩いていくことにした。
そこまで行けば、何か食料を買えるはずだ。
家の扉を開けると、朝の光が刺すように眩しかった。
冷えた空気の向こうに、見覚えのある顔が五つ並んでいた。
この前俺と殴り合いをした村の若者たちだ。
少し離れたところからこちらを見て、何かを囁きながらニヤニヤと笑っている。
一人の手には石があった。
胸の奥に、冷たい苛立ちが湧く。
またか――。
そう思った瞬間、石が放たれた。
風を裂くような音がして、一直線に俺の顔めがけて飛んでくる。
速い。避けられない。そう思った。
だが次の瞬間、世界が"遅く"なったような気がした。




