第36話 何も考えたくない
部屋の中は薄暗く、夕陽がカーテンの隙間から差し込んでいた。
オレンジ色の光が床を照らしていて、その中に静かに佇む一つの人影があった。
ベッドの上に、オルミアが座っている。
白の美しいローブが、微かに光を放っているように見える。
「オルミア……!」
声が震えた。
「随分と久しぶりな気がしますね、ローガン」
オルミアは、いつものように柔らかく微笑んだ。
その微笑みは、どこか懐かしく、少し儚げだった。
俺には、彼女に聞きたいことが山ほどあった。
なぜあの時、俺の前に現れたのか。
なぜ、あんな正確なタイミングで俺を助けられたのか。
「あなたをここで失うわけにはいかない」とは、どういう意味だったのか。
オルミアが突然唱え出した謎の言葉はなんだったのか。
あの時、俺の中で爆発した謎の力は何だったのか。
どうして俺は、人間離れした動きで十五人もの人間を殺すことができたのか。
問いは無数にあった。
だが、なぜか俺には分かっていた。
俺が聞いても、オルミアはそれに答えないだろう。
優しく微笑むだけで、きっと何も言わない。
俺は、もう考えることに疲れていた。
大会の日から、ずっと考え続けていた。
自分の身体に起きた異変。
リアナが俺に言い放った「化け物」という言葉。
そして、"英雄"と称賛されながらも、何の嬉しさも感じられない自分。
何もかも、もうどうでもよくなっていた。
「……」
黙り込む俺を、オルミアは静かに見つめていた。
その瞳は、どこか慈しみに満ちていた。
「かなり疲れてますね、ローガン。身も心も」
彼女の声には、冷え切った俺の心を包み込んでくれる不思議な温かさがあった。
俺はしばらく立ち尽くしたまま、彼女を見つめた。
やがて、ゆっくりと歩み寄る。
歩くたびに、床板がぎしぎしと鳴る。
オルミアは、微動だにせずベッドで俺を待っていた。
そして、ベッドの前に立った俺に、オルミアは静かに微笑んだ。
「……とりあえず、シますか?」
そう言うとオルミアは、着ていたローブをそっと開いた。
彼女の魅力的な肢体が露わになる。
俺は、何も言わず、露わになったオルミアの豊かな胸元に身を委ねた。
そのまま、俺たちはベッドに入り、朝が来るまでお互いを激しく求め合った。
【第一章 完】




