第40話 フラグクラッシュ
俺にとってシスクは「女」ではなく「妹」そして「家族」だ。
だから、死ぬほど可愛くて愛おしいし、目の中に入れても痛くない存在。
しかし、エッチする相手として見たことは一度もない。
そもそも、実は血が繋がっていないってのもつい最近知ったのであって、やはり妹として意識していた時間の方がはるかに長いので、今更そういう目で見れない。
だから、相棒に一度「シスクも攻略対象」と言われた時、頭の中でシスクとエッチすることを想像してみたが、そのときは果てしないほどの罪悪感と重い気持ちになったのである。
「あ~、その、相棒……それ、なんでヤらなきゃダメなんだ? その、シスクとしないと……」
いくら俺が自分でも認めるほどのスケベ男でも、やっぱりシスクと一線超えるというのは躊躇っちまう。
だから、それが本当に必要なことなのかと相棒に問うと……
「えっと……色々ややこしいんですけど、ネタバレとして流れを説明するとっすね……まず、レイヴァさんとシスクがエッチします。そして、今まで心の中で禁断の想いを抱いていたシスクさんはもう気持ちのタガが外れ、レイヴァさんの妻になり、そして子供を産むことまで想像……そして、母として子育てする自分を想像しながら王都の子供たちの居る公園に足を運ぶんです」
「……う、お、おう……」
「で、子供たちを眺めているうちに、次第に子供たちがシスクさんに近寄り、あまり人間と深く関わろうとしなかったシスクさんも将来子供を産んだ時を考えたり母性に目覚めたりしたことで、人間とはいえ徐々に子供たちに心を開き、仲良くなり、慕われ、一緒に遊ぶようになるんす」
「……ン、んん? うん……」
「で、やがて護衛もつけずにそういうことするようになったシスクさんにレストルムは目をつけるんす。シスクさんはレイヴァさんの妹、攫ってヤミナルとの人質交換に使ったり、魔王軍との交渉に使えると判断して、自ら人前に姿を現してシスクさんを攫おうとするんす」
「お、おお……おう」
「で、シスクさんも戦うんすけど、子供を巻き込むまいとして子供たちを守ろうとして押され気味になるんす。だけどそこで、逃げた子供たちがレイヴァさんに助けを求め、で、レイヴァさんがシスクさんのピンチに駆けつけてレストルムをぶっ倒す。で、倒してエッチな尋問する……こういう流れっす」
一応、相棒が知っているこれからのことによる流れを一通り聞き、とりあえず俺がシスクとエッチしたことでそういう流れになったということは分かった。
ただ、聞いてて思ったのは……
「……それって、俺がシスクとヤんなくてもどうにかならねーか?」
いや、果たして必須事項なのかと。すると相棒は首を傾げ……
「いや、ゲームでは他のルートは無く……それに、序盤で攫われなかったシスクさんとレイヴァさんのエッチは強制ルート……一回は必ずヤルっていう流れだったんで」
「な、ん……だと?」
イマイチ、そのゲームでのルートということはよく分からないが、俺とシスクは必ずヤルだと?
「ま、待て、そのゲーム、えろげー……だったか? えろげーの俺はどういう流れでシスクと一線超えることになるんだ? 一体何があって……」
「あ、ま、えっと、ゲームでのレイヴァさんはそもそも妹とか血の繋がりとかで悩む展開は無く、単純に夜に酒飲んで酔っ払って部屋に戻ったら、レイヴァさんと話があって部屋で待ってたけどそのまま寝てたシスクさんを見つけ、泥酔状態のレイヴァさんは愛人の誰かだと思い、とりあえず寝る前に一発……と、寝ていたシスクさんを意識せずに―――――」
「ぬあ、な……なにいいいいいいいいいいいいい!!!??」
ちょっと待て、なんだその最低の男は! 泥酔していたとはいえ、目の前に女がいたからとりあえず犯すとかどこの最低野郎だ! いや、俺らしいけども!
しかし、シスクとはそんなことで?!
「ま、まあ、一発して、血の繋がりもないというのと、シスクさんがレイヴァさんを兄としてではなく一人の男として好きっていう設定もあったんで、二人はもう二回目からは超ラブラブエッチに突入するんで、レイヴァさんも一回ヤレば……」
と、そのときだった。
今まで黙って聞いてたクロカワがハッとして……
「あれ、ちょっと待って、宙似くん」
「え?」
「その……泥酔状態で相手が妹ということを認識しなかった……つまり、レイヴァさんは事故で妹さんを抱いてしまったということよね?」
「え、う、うん、ゲームでは……」
「……だったら、それって言ったらダメだったんじゃなの? もう、レイヴァさんは無意識にシスクさんと事故を起こせないじゃない」
「……………」
あ…………
確かに、俺はもう今の話を聞いて意識しまくってしまった。
そして相棒は今のクロカワの言葉で……
「……あっっ!!??」
と、やらかしてしまったという顔で叫んでいた。
ヲイッ!!!!!!!!!




