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第17話 魔界の姫をペットにせよ

「で、マキがどうしたんすか?」

「……あいつ、俺のこと好きらしい」

「……は?」

「いや、俺も最初は信じてなかった。だって、いつも『駄犬』だの『下賤』だの言ってくるし、顔合わせれば罵倒から入るだろ?」

「まあ、そうっすね。あれは完全にツンの極みっす」

「でも、さっきあいつが爆発した。俺に自分を襲えとか、襲ってきてもいいように下着選んでるって暴露してきた」


 俺がそう言うと、相棒と黒川が同時に声を上げた。


「だから言ったのに!」

「だから言ったのにです!」


 二人の声がぴったり重なった。 相棒は机を叩き、黒川は紅茶のポットを置いたまま、じっと俺を見ていた。


「え、何が?」

「いやいやいやいや! あんた、今までマキの好意に気づいてなかったんすか!? あれだけ分かりやすいフラグ立ててたのに!」

「レイヴァさん、私はその方と会ったことないのに、その人がレイヴァさんを好きなんだってわかりましたよ」


 と、二人は「やれやれ」と呆れている。

 そう、確かに二人は「マキはとっくに俺のこと好き」と言っていたが、俺は信じられなかった。

 でも、それが本当だったということで、それは確かにその通りだった。


「でも、ようやくレイヴァさんもマキの気持ちが分かったってことで、何を相談する必要があるんですか? あとはあんたお得意のエッチで……いや……でもあれだ……話を聞く限り、ヤミナルの好感度が上がっちゃってるから、今はやり方が少し変わってくるかも……」


 さて、俺の相談の本題はこれからだ。

 相棒がブツブツ言ってるが、俺は包み隠さず悩みを打ち明ける。


「俺は今までマキを魔王の娘としてしか見てなかった。確かに可愛いとは思う。気が強くて、顔も整ってて、声も綺麗だ。でも……」

「でも?」

「体がエロくねえ」

「……」

「俺の好みは、もっとこう……抱いたときに手のひらから溢れるくらいの……ヤミナルは美乳だし、シガーも良い体で……そう考えると、マキって貧乳だろ? 俺が本気で『エッチしたくてたまらない』って思う相手なら、もうとっくに行動してるわけよ。でも、マキはそういう対象じゃなかった。それに加えて、相手が相手なだけに……慎重になるってもんだ。だから相棒に相談に来たんだ」


 相棒は腕を組み、真剣な顔になった。

 クロカワはもう隠さないな、俺に対して睨んでるの。


「相棒、俺はとりあえずあいつを襲っても問題ないんだよな?」

「鬼畜外道です!」


 そして、ついにクロカワも我慢の限界に達して、侮蔑の目とともに怒ってきた。


「黒川さん、い、一応、この世界、そ、そういうゲームだから……」

「ゲームだからって、そんなのあんまりよ! 女性を何だと思ってるの! だいたい、宙仁くんも、その知識で助かってるのは感謝だけど……あなた、こんなゲームをしてたなんて……」

「いや、エロゲーでありながら、アドベンチャーやバトル要素も普通に面白くて……とにかく黒川さん落ち着いて」


 ううむ、同じ女として黙ってられなかったようで、クロカワは本気で怒ってる。

 相棒の女じゃなかったら犯して黙らせるんだけど、そういうわけにはいかないのでめんどくせえ。

 相棒もこんな女に手順を守って、今も窘めてるし、なんというか大丈夫かねえ?


「さ、さて、とりあえず、その、レイヴァさん……質問の答えなんだけど……まあ、ぶっちゃけ、答えは『いい』……襲っていいし、どんどんエッチしまくっていい相手です」

「お、おお……マジか? 魔王様に殺されねえか?」

「大丈夫っす。というか、魔王はむしろ『我が誇りである軍団長であれば申し分なし』みたいな感じで、むしろ応援してくれるっす」

「お、おお……そうなのか……」


 そうか……俺、あいつを襲っていいのか……まだちょっと半信半疑だが、でも相棒もこうして断言してくれているわけだし……なら、今晩あいつを……



「だけど、注意! というかこれが一番大事!」



 だがそのとき、相棒の声が急に鋭くなった。

 俺は思わず顔を上げる。黒川も大人しくなり、何事かと相棒の様子をうかがう。


「マキと関係を持つのは……だけど……ラブラブな対等の恋人関係でイチャイチャは、絶対にダメっす」

「……は?」

「できるなら、焦らしに焦らしに焦らしまくってのほうがいいす。出会って4秒で即合体とかは無しのほうがいいす」


 それはまた意味不明すぎる警告だった。



「いや、意味わかんないと思うっすけど、でも、これがハーレムエンドに向けた、気を付けるべきポイントなんです! マキはラブラブ関係になっちゃうと、独占欲が発動する。しかも、それが異常レベルで強い」


「独占欲?」


「そう。つまり、あんたがマキをソッコーで抱いてメロメロにして恋人ルートに入って、イチャイチャし始めると……他の女との接触がすべて『浮気』、『裏切り』扱いになる」


「……それって、ヤミナルとか?」


「特にヤミナルっす。今のヤミナルは、調教でも凌辱でもない。好感度が上がってきて、イチャイチャし始めてる。つまり、マキから見たら浮気っす」


 

 確かに言われてハッとした。マキが嫉妬をむき出しというのは想像できる。現に、あいつは俺がヤミナルとエッチした後は滅茶苦茶不機嫌だった。

 つまり、恋人みたいな関係になったら、もう不機嫌になるだけでは済まなくなる?


「あの……恋人がほかの人とエッチしてたら、それは常識的に裏切りや浮気になるのは当然だと思うんだけど……」

「黒川さん、これがハーレムエンドのあるエロゲーなんで!」

「……な、なんなの、えろげーって……ハーレムエンドって……」

 

 黒川は理解できないようだが、俺のように抱きたい女は抱く男にとってはメンドクサイことだ。

 そして、

 


「で、浮気判定が入ると、マキは嫉妬暴走ルートに突入する。これ、マジでヤバいっす。最悪、ヤミナルを勝手に処刑したり、妊娠してたらお腹を割いて中の子供を……とか」


「……おいおい!」


「それはほかのヒロインに対しても同じで、つか、あんたも刺されるルートがあり得ます! つまりハーレムエンドを目指すなら、マキとは対等なラブラブ恋人関係になるようなエッチじゃダメってことっす!」



 なんてこった。

 というか、クロカワ……お前ボソッと「刺されればいいのに」とか口にして、マジでお前から犯すぞ! 

 しかし、これはまいったな。

 マキがそんなめんどくさいとは……好みでもない女にそんなに気を使わないといけないのか?

 でも、そうなると……


「なら、どうすりゃいいんだ? 相棒の話では、俺がヤミナルもマキも、そしてほかの女全員とそういう関係になんなきゃダメなんだろ?」


 そう、マキも含めて全員俺の女になる未来。でも、マキはそれを望まないとなると、どうすれば?

 

「ふふふふ、それに対してはエッチの仕方で変わるんす」

「仕方?」


 すると、相棒はほくそ笑み……



「あんたは愛を確かめ合う恋人のイチャイチャエッチをするんじゃなくて……まずは焦らしに焦らしまくるんです。そうでなく、ソッコーでマキを抱いてのラブラブルートに入ると、『あなたがどうしてもと懇願するから抱かれてあげたのよ、感謝することね』みたいに上からの態度になるんす。だけど、焦らしに焦らしまくるとマキのほうから『お願い、意地悪しないでよぉ、抱いてよお』と、めっちゃ拗ね拗ね甘えモードに入るっす」


「ほ、ほう……」


「そしてマキがその状態になったら、レイヴァさんのほうから上から目線で『オラオラ何をされたいんだ? お願いするなら態度があるんだろうが』みたいな態度でマキに対して調教的な、オラオラで、ご主人様みたいな存在になれるよう、マキをエッチで完全屈服させるようにすればいいんです!」


「な……なんだってーっ!?」


「ふふふ、実はマキは高慢なサドキャラ……と思わせといて、実は内心ではあんたに乱暴に徹底的に犯されたいという変態マゾな側面があり、それを満たすようなエッチをすると、マキはあんたに身も心も依存するペットみたいになるんす! 焦らしまくったり、お尻を叩いたりして、そして、『ご主人様、なんでもいうこときくわ、だから捨てないで! ほかの女とエッチとか全然していいから!』みたいなこと言い出すんです! いやぁ、ハーレムエンドを目指すときにこのルートがあると知ったとき、俺は感動したっすよ」


 

 相棒が感情を込めて激しく熱弁してくる。

 でも、さすがにこれには驚いた。


「ま、魔王の娘を……ペットにするだと?」

「そうす。で、本来ほかのヒロインならハーレムエンド条件の『あんたを心から愛して幸せに思う』とかのアレには当たらないんすけど、マキに関してはそれもまた『幸せ』って思うキャラなんで、むしろハーレムエンド目指すなら、マキは調教カンストさせないとダメなんです!」


 そんなこと許されるのか? 罪悪感が……しかし、なんだ? この背徳感。ゾクゾクする。

 あの高慢でクソ生意気な嫌味たらしい女をペット化?

 想像しただけで興奮する。

 好みでもねえ女とイチャイチャするのは気が進まなかったが、調教という気分で臨むなら……


「相棒……俺、ヤル気出てきたぜ」


 モチベーションが上がった。



「宙仁くんももう刺されたらいいわ……」



 おい、クロカワ、聞こえてんぞ。





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