第11話 まずはプレゼント作戦
マキのことを相棒から聞けば聞くほど、頭が混乱していく。
好きだの初恋だの結婚だの、あいつと俺のそういう関係がまるで想像できない。
俺の中では、マキはずっと『魔王様の娘の、うるせえ目の上のタンコブ』でしかなかった。
それが、どうやら既に俺にベタ惚れらしい。
意味がわからん。理解が追いつかん。
「……とりあえず、マキのことは保留だ」
「あ～、そうすか……ぼそっ、マジでエロゲー並みの鈍感……」
「あいつのことはもうちょっと落ち着いてから考える。息抜きだ！ おら、起きろイロカ！ エッチすっぞ！ 相棒とクロカワもさっさとヤレ！」
「「ちょっっ！？」」
めんどくさくなったら、一発ヤッてスッキリする。
そう思い、ベッドで横たわっているイロカを揺らして起こそうとする。
だが、イロカは……
「ちょぉ、レイヴァ様ぁ、まぢ、きゅーけい……ちょ、いま、ヤッたらまぢで精神ぶっこわれるし……まぢ、ちょっと、たんま……」
と、まださっきのダメージが抜けてないのか、息も絶え絶えな様子。
「おいおい、情けねえな。それでも娼婦か？」
「しょ、娼婦じゃないし……あーし、エッチはいっぱいしてっけど……流石に、あんなヤバいの初めてで……」
ダメだこりゃ。まだ使えそうもないわ。
だからって、相棒の前でクロカワを抱くわけにもいかねーし……
「しゃーねえ。じゃあ、ヤミナルにしとくか」
いま、俺が気軽にヤレる身近な女はヤミナルしかいないから、そっちにすることにした。
それに、よくよく考えればヤミナルと親睦を深めるのも重要だと、相棒にも言われてたしな。
「まずは……ヤミナルを堕とすところから始めるわ」
「まあ、それも重要ですから……」
「ああ。とにかく心と体を堕とすんだろ？ じゃあ、まずは体から堕としてメロメロにしてくる！」
息抜きも兼ねて、ヤミナルの美体をまた味わってくる。
イロカもかなりのものだったが、所詮はおやつ替わり。
ヤミナルのような血統付きの最上級の肉には叶わないだろう。
まずは、あいつの肉を思う存分食し、そのあと相棒が言うようにヤミナルの心も……
「いや、レイヴァさん、それは順番が逆っすよ」
「は？」
だが、俺がそう言うと、相棒が眉をひそめてツッコミ入れてきた。
「ヤミナルさんは、マキ姫と違い、心を堕とす方から先です。まずは、じっくり話し合うことが大事です」
「話し合い？ あいつ、俺の顔見ただけで睨んでくるぞ？」
「だから、工夫が必要なんすよ。エッチしまくって堕とす方法は、精神崩壊ルートのドスケベ姫騎士勇者になっちゃうパターンもあるんで……」
「おお、それな！ それ、結構興味あるんだけど、ダメなのか？」
「……えっと、精神崩壊ルートは、もうあの気高きヤミナルさんがエッチのことしか考えられないド淫乱になっちゃって、それこそレイヴァさんどころか、魔族も城の大臣も、民や浮浪者だろうと、男であれば誰だろうと涎垂らしてエッチしちゃう感じになっちゃうっす」
「…………そ、それは……極端だな」
ヤミナルのそんな姿も見てみたい気もするが、せっかく手にしたヤミナルをそんな勿体ないことするのはやめた方が良さそうだな。
「……宙仁くん……ほんとに最低なゲームやってたのね……」
「ごめん、黒川。だけど、その知識がないとこの世界では生きられないから……」
クロカワがドン引きした侮蔑の目を浮かべてる。流石に処女にはキツイ話題なようだな。
「とりあえず、ヤミナルさんと落ち着いて話をするには、まずはリラックスの空間……ヤミナルさんにお菓子の差し入れとか、民が無事な報告とか、そういうのをすることで少しずつ警戒心を緩めていくのが有効なんです」
「お、御菓子の差し入れぇ？」
「ええ。ヤミナルさん、王都の商業通りにある『ヨックファック』って店のクッキーが好きなんすよ。特にチョコレートでコーティングしたクッキーで、それを出すと好感度が上がります」
「……ヨックファック？ 聞いたことねえな……」
「ゲームの中では味は本物って感じで、レイヴァさんも食ってみたら美味しいって反応になります」
「……マジかよ。めんどくせえ……」
俺は頭を抱えた。女の機嫌を取るために、クッキーを買いに行くなんて、軍団長の仕事じゃねえ。
「じゃあ、部下にでも……」
「ダメっす。レイヴァさん自ら探しに行って手に入れたものをヤミナルさんに差し入れっていうのがポイントなんです」
しかも、俺が自ら行くのかよ。
ほんとめんどくせーな。裸にしてエッチしまくって篭絡するだけじゃダメなのか？ でも、相棒の話だと、それやると精神崩壊とかいうことになるみたいだし……
「あ、あと、もう一つ超重要なことがあるんで、気を付けてください！」
「まだ、あんのかよ！」
このメンドクサイお使いと手順だけでも俺にはいっぱいいっぱいだってのに、これ以上まだ何かあるのか？
すると……
「ヨックファックのお店は、若い美人なお姉さんがやってるんですけど…………その人が美人だからって、無理やり襲ってエッチするのは絶対にダメです！ そうなると、二度とヨックファックが手に入れられず、ヤミナルさんの好感度上げが一気に難しくなるっす！ しかも、民の女性を無理やり犯したってことが耳に入って、好感度が一気に下がるっす！ プレーヤーとしては美人なお姉さんが犯されるCG回収イベントではあるんすけど、ハッピーエンド狙いならそれは気を付けないと……」
ほう……メンドクサイと思っていたが、それは興味深い。
「ほぉ……美人な女が……ほうほう」
「……あ、あの、レイヴァさん？」
美人な女がやってる店か。よく分からんが、ようするに注意されなければ俺が犯したいと思うぐらいの美人な女か。
「ちょ、宙仁くん……この人、すごいエッチな顔して……」
「あの、レイヴァさん、フリじゃないですからね！ 本当に犯したらダメですからね！」
クロカワが顔を青くし、相棒も必死に俺を止めてくる。
分かってる。
相棒のアドバイスには従った方がいいってことは。
でも、それは……
「つまり……無理やりじゃなければいいんだろ？」
「「え……？」」
「普通に口説く分には良いわけだな」
「「ちょっ！？」」
つまり、こういうことだろ。
犯しちゃだめなら、口説いて抱く。
メンドクサイお使いも、こういうことならモチベーション上がってくるってもんだ！
「待ってください、レイヴァさん！ いや、ほんとに気を付けてくださいよ！ ただ、瓦礫の中にあった在庫品を持ってくるだけでいいんですから、ほんとに！」
「じゃあ、ヤッてくるぜ！ じゃねーや、イってくるぜ、か？ ぐわはははは！」
