表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン・ハックアンドクラック  作者: cloudpowder
始まりの草原と灰降る洞窟
1/17

―1目覚

陽が真上を通り過ぎる頃に起きて、ヒゲも剃らずに顔だけ洗う。鏡を見ると凡庸な顔がぼんやりと映る。


「………」


意味もなく指先で目元をなぞる。

ここに越してくる前はあんなにも深く黒ずんだ目の下の隈と、げっそりとこけた頬のせいでまるで幽霊みたいだと思っていたが、今では大分マトモに見えると宇白他々人(うしろただひと)はそう思った。



平々凡々な少年期を過ぎて、特に思い悩むこともなく並の高校専学と進学して普通に就職した。普通に就職した筈だったのだが、そこが落とし穴だった。


わかりやすく言ってみればそこはブラック会社だった。

日を跨ぐまでのサービス残業は序の口、度重なる無給の休日出勤と、積み重なる無茶振りとタスクで、身も、心も、削られていった。


音を上げてそこから逃げたのは勤め始めてからちょうど五年経った頃だった、きっかけはよくわからない。

よくわからないがとても衝撃的だった。

親しくしてもらい、愚痴も言い合える仲の先輩が突然、結婚した。


それ自体はとても素晴らしいことで、祝福するべきことだった、相手もしっかりした人で、先輩と飲みにいく仲になりしばらくして紹介され、いずれはきちんとした形でくっつくのだろうと予想もしていた。


けれども実際それを目の当たりにして聞かされたとき、暗がりを、薄い灯りを頼りにして恐る恐る歩いていたのに、ふと灯りがかき消されたように不安になった。


目を背けていた、未来が、いきなり目の前にそびえ立った。


自分は、いったい、いつまで、ここで、こうやって、無理を重ねていけるのだろうか。


自覚するともうてんで駄目になってしまった、だから、そこからはもう恥も知らず、脇目も振らずに逃げだした。


幸いなことに、或いは不幸なことに今の時代は変遷期で、心情的にも、また経済的にも容易く逃げ込める場所があった。


それこそが此処、[電網都市東京03]だった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ