すくい
他人に預けられて生きてきた私は
この18年間なんのために生きてきたんだろう
生みの親はどこで何しているのかわからない
生きているのかいないのかすら不明
これから先、どうしていいかわからない
居場所なんてないから
そんな悲観的なあなたの話を
ボクがたまたま聴いたのは
本当にただの偶然
強いて言うなら、少し気になって心の余裕があったから
気持ちが満たされなくて、心が空いていたから
そんな状態をボクは「空く意」だと思った
もしも早くにあなたと出会えていたなら
何かできたかもしれない
代わりに親になれたでしょう
誰からも愛されず育った
少なくとも私はそう感じている
いらない子ども
生まれてこなきゃよかったのかなって思った時に
たまたま声をかけてくれたあなたから
思いがけない一言
「代わりに親になりたかった」
その言葉と気持ち、態度に
心が救われた
あなたは私の「救い」
そう思える日がくるなんて考えてもいなかった
手を差し伸べてくれる心の温かさ
初めてのことで
そんな当たり前のことが
私にとっては特別だった
助けてくれる人がいる世界が
そんな存在が
有り難く、尊い
もしも来世があるならば、あなたと幸せに暮らしたい
そんな子どもでありたい
成人を迎えた私はいま
そんなことを思っています
そんな現世に希望のないメッセージを目の当たりにしたボクは絶句するしかない
ポッカリと空いた心でなければ
受け止められないほどの闇を
周りの大人たちに対する失望の声を
「空く意」のままに受け止めた
大丈夫
それでいいのだ
生きていればいろんなことがある
これから先の幸せを
大切な人と築くこともできるよ
そう言われても
されたように人はしてしまうんだ
心無い人に育てられた私に
他人に対してやさしく、愛情を注ぐ自信がない
大切に思えばこそ
できるよ
苦しんだあなたなら
傷つくことの辛さを知っている分
人にやさしくできる
誰かを救えるのは君だって同じ
ボクと同じだよ
人はね
誰かから与えられた以上のものを
他の誰かに与えたくなる生き物なんだ
そう言って
私にあなたはほほえみをくれました
今まで一番ほしかった
愛情を注いでくれました
ボクはこんなものしか
あなたにあげられない
笑いかけて
話を聞くことしか
誤りがあったら、それは違うよって教えてあげることしか
そんな些細なことしかできない
それでもあなたはうれしそうに笑う
なんだか
すくわれたような気がした
手で掬って清らかな湧き水を飲むかのように
心がスーッと満たされた気がした
里子でもいいから、子育てしたい
自分も父になりたい
誰かへ恩送りしたい
親へ恩が返せないのなら
せめて、社会に貢献したくて
そんなことを考えていて
浮かんできた言葉です
いつか
自分も親になれるのだろうか