第四章木の枝
チート冒険者ムシジが人型になったスライムと戦っているそのころ、テイは剣の魔王ソールに挑まれた手合わせを応じ、戦おうとしていたのだった。
ここは水池王国にある、バトル広間。
「本気でこい」
「どうなっても知らねーぜ」
「つべこべいわずさっさとこい。俺はここに落ちているこの枝一本で勝ってやる」
「おいおい、マジで言ってんのかよ」
「さっ、こい」
「ファイヤーナックル」
テイはおもいっきり、剣の魔王に殴りかかったのだった。そしてソールはテイの拳を、木の枝一本で防いだのだった。
「やはり、まだまだ、だな。この枝一本で防げるではないか」
「おいおい、何で折れねーんだ」
「さーて。なんででしょう。当ててみろ」
「ふざけんじゃねーぞ。ファイヤー鋼鉄ナックル」
テイは鉄になった腕でおもいっきりぶん殴ったが、また木の枝で防がれたのだった。
「これ以上、強い技はないのか?このくらいじゃ、まだまだ木の枝は折れないぜ。俺は今この枝に魔力を込めたんだ。そして魔力がこもったことで枝は俺の強さになった。よって、
俺に勝てるぐらいの魔力をこの枝にぶつけないと枝は折れないってことだ」
「そんなの無理ゲーじゃねーか」
「多分今この枝でお前を叩くとお前の意識はなくなると思うぜ」
「⁉」
「さすがにそこまではしないがな。まっ、俺と本気でやりあいたかったら、話は別だがな。どうだ本気でやりあうか?」
「いや、いいです」
やべーやつと戦っていたってことが今の一言で実感したぜ。それも今の、目はマジでやる気だ。
そのころ、ムシジは三匹の人型になった、スライムと戦っていたのだった。
「もう、ITRのボスなら殺したわよ」
「そんなの言われなくてもわかってるわ。っていうか、お前ら三匹とも、この俺が誰だか分ってるか?まさかお前ら俺をチート冒険者って知らないで殺してやるって言ってんじゃねーだろうな」
そう言いムシジはすごい魔力の覇気を放ったのだった。そしてムシジが覇気を放った瞬間三匹はスライムの姿に戻り、一体化し、新たな人型になったのだった。
「さすがにこの姿で戦わないとやばそうね。私はスライム悪魔のマール」
「やっぱり、スライムじゃなく悪魔だったか」
そりゃそうか。スライムなんかがITRのボスを殺すわけねーよな。っていうかこいつただものじゃねーな。ボスを殺したということは。それもスライム悪魔ってなんだ。聞いたこともない。ここはいったん、ひいたほうがよさそうだな。
すると次の瞬間、いつのまにか、マールの拳が目の前にきていたのだった。そして拳はムシジの顔面に直撃したのだった。
「グハ」
早すぎだろ。今の攻撃。それも威力がすごすぎる。あと五回もくらったら、さすがの俺も致命傷になるぜ。すると、その時スライム悪魔がいきなり倒れたのだった。
「どうしたんだ。体が動かない。まさか、私の魔力にこの体がついていけないのかしら。やばいこのままじゃ死んじゃう」
「おい、この体って。その、体はお前のじゃないのか?」
「そんなのあんたに何で答えなきゃいけないのよ」
「たったとこたえろ」
「そうよ。この体は私のじゃないわよ。この体はどこかの冒険者の子のよ」
「そうか」
そしてムシジはスライム悪魔が死ぬのを見守りその場を立ち去ったのだった。