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幸運のZIPPO  作者: 霞 芯
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1話 幸運のZIPPO

 佐田賢介は、売れないバンドマンであった。

歳は、26にもなるが、努力と反比例するかのように人気もチャンスも一向に訪れなかった。

そんな賢介にも、一つ幸運な事があった。

彼女の志賀沙織(しがさおり)の存在であった。

沙織は、賢介の唯一のそして最初のファンであった。

沙織は、賢介がミュージシャンとして成功する事に

絶対の自信があり、「絶対!賢介は売れるから!間違いないよ!」と常に励ましていた。

 そんな、9月の賢介の誕生日に沙織は、貧しいながら、手料理を用意し、安いケーキも並べ、アルバイトから帰ってくる賢介を待った。

21時を回った頃、賢介がくたくたになり、「ただいま」と2DKの二人のアパートに帰ってきた。

沙織は、「おめでとうっ!ハッピーバースデー!」とクラッカーを鳴らした。

「あっ俺誕生日か?」と結いてある長髪を解き、帽子を取って席についた。

沙織は、「ねえ!見て、見て!」と普段の3倍は豪勢な食事を自慢した。

賢介は、「旨そう!ありがとな、家計大変なのに」

そう微笑んだ。

沙織は、ううんっと首を振り「食べよ!」と手作りのミートローフにナイフを入れた。

暫く二人は食事を堪能した、ふっと沙織は思い出したように、自分の後ろから、小さな小箱を出した。

「ジャン!プレゼント!」と賢介に差し出した。

賢介は「ありがとう、何かな!」と小箱を開けると

それは、ターコイズに装飾されたZIPPOのライターであった。

「あっZIPPOじゃん!ありがとう、嬉しいよ」そう言って、手の中で感触を確かめた。

賢介は「高かったろう?一万円はしたか?」と聞いた。

沙織は、気まずそうに首を横にふる。

賢介「え?もっと高いの⁈」

沙織は、「だって〝メルケル〟で〝絶対幸運の訪れるライター〟って書いてあったんだよ!絶対音楽売れるから!」と言い訳をする。

賢介は、「おい!いくらしたの?白状しなさい」と迫ると、沙織はしぶしぶ「5万‥」と白状した。

「5万!お前の給料の半分じゃないか?何で〜」

と後ろに倒れた、その拍子にターコイズの〝フィルム〟が剥がれた!

「え!これイミテーションじゃん!騙されてるよ」

沙織も「え〜騙されたのかな〜、でも幸運来るって書いてあったもん!」とふくれた。

賢介も、流石に悪いと思い、「ごめん、ごめんきっと幸運来るよ」と剥がれたフィルムをボンドで直し、油をいれた。

膨れている沙織の横で、

賢介は、「さて、一服するか」とメビウスを一本咥え、火を付けた。

するとZIPPOから、ドラゴンの炎かといわんばかりの火柱が立った。

二人は驚いた顔を見合わせた。


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