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魔王軍幹部と補助魔法使い  作者: べるあっと。
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帰れる

 翌日、レイナは目を覚ました。


「おはようさん、よく寝てたな。」

「あ、おはようございます。もしかして私ずっとあなたの手を握ったままでしたか?」

「ん?あぁ、ずいぶん強く握るもんだから無理やり離したりするのもできなくて。」

「ごめんなさい、あなたは眠れたのですか?」

「いや、私は別に寝なくても問題ないから。」

「そうなんですか?でも私が寝てる間ずっと動けなかったんじゃ。」

「気にすんな、そんなことより体調はどうだ?もうそろそろ体を越したりはできるんじゃないのか?」


私がそういうとレイナはハッとして、ゆっくりとだけど上半身だけを起こした。


「本当ですね。なんだか体がものすごくだるいけど今なら椅子に座ったりはできそうです。」

「順調に回復していってるんだな。後2日くらいしたら回復するだろう。そうしたら帰れるからな。」

「そうですね、少しでも早く良くなるよう頑張ります。」

「いや、とにかく休んで欲しいから頑張ることなんかないんだが。」

「あ、そうですね。」


私たちはくすくす笑った。


「じゃあちょっとやることあるから待っててくれ。どうせなら本でも貸してやろうか?暇だろう?」

「そうですね、じゃあお借りしてもよろしいですか?」

「おう、私一推しの小説だ。心して読むんだぞ。」

「はい、わかりました。」


私は引き出しから一冊の本を取り出し、レイナに渡した。


「じゃあな、すぐ戻るから。」

「はい、いってらっしゃいませ。」


最後にそう交わし、フロアを後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「帰れる、か。」


彼女が出ていった扉を見つめながら、私にかけた何気ない一言を呟いてみる。


帰れる。それはつまり彼女とのこの関係が終わり、勇者たちとのあの日々へ戻ってしまう時が近づいていることを意味していた。


そんなの嫌だ、帰りたくないという子供じみた思いはある。しかし魔族と人間という生物学的立ち位置の違いによってそれは許されないのだということを私は理解してしまっている。


どうにかして彼女とずっと一緒にいたいが、頭の悪い私は何も思いつかない。


なら少しでも長く一緒に入れるように努力したいが私の体はどうしようもなく回復し続けている。皮肉にも彼女の献身的な介護のおかげでだ。


もうどうしようもないのだ、別れは2日後に必ずくる。


だから私は彼女の名前を聞かない。いずれ敵になってしまってしまうから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は透明化の魔法を使い、外の様子を見に来ていた。

いつもはウォンバット達の視界を共有させてもらって監視したりしているのだが、最近はイレギュラーが多いからそうもいかないのだ。


早く終わらせて自分のフロアでゴロゴロしてたいなーなんて考えていると、そのイレギュラーは今日もやってきた。


「魔王よ!今日こそぶっ殺してやる!そしてレイナを返せ!」

「いくら私たちが怖いからって、敵を攫うなんて卑怯だわ!

私たちをどんな罠に嵌めようとしているのかわからないけれど、正々堂々戦いなさい!」

「あのチビの性根を私の大魔法で叩き直してやる。だからいつまでも籠城してないで早く出てこい。」


やってきたのは勇者達だ。相変わらず私と戦った時よりも威力の下がった攻撃を私の結界に繰り出している。


彼らはあれから毎日来ている...と言うわけではない。少なくともレイナが目覚めた日は来なかった。

もしかしたらここに来るまで結構時間がかかるのかも知れないと一度彼らが帰っていくところをウォンバットに尾行させたことがあるのだが、ゆっくり歩いても1時間かかるかどうかといった場所にある小さな村を拠点にしているらしく。来るだけならあまり時間はかからない。

なら作戦会議でもしているのかとも考えたが、彼らの攻撃のパターンが変わった事は一度もない。


「本当助けたいのかな。なんか仕方なく来てる感じが拭えないんだよな。」


何で独り言を言いながら早く帰んないかなーって思いながら彼らの軟弱な攻撃を眺めていると。いきなり勇者が癇癪を起こした。


「もう!いいから早くレイナを返せよ!死体でもいいから!僕は早く帰りたいんだ!もう疲れたんだ!本当は僕のチートで魔王を倒してそのまま王国に帰ってチヤホヤされるはずだったのに何であのガキは僕の魔法が効かなかったんだよ!」


「はぁ?」


信じられなかった。それは私がガキだと言われたからでも勇者の頭が残念だからでもない。


死体でもいいから?早く帰りたい?


こんなクソガキが勇者なんかやっているのか。


私は指をパチンと鳴らした、すると勇者達の姿が消えた。

拠点としている村の近くにワープさせたのだ。


そして私は大きくため息をついた。


「帰れる、か。」


本当に帰してもいいものか、私にはわからない。

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