冷たい手
彼女の手はびっくりするほど冷たかった。それは私に彼女は人間じゃなく魔族幹部なのだとより強く認識させた。
魔王城で倒れてどれくらいの時間が流れたのかわからないが、それでも私が生きているのは人間の敵であるはずの彼女がなぜか献身的に看病してくれているからだ。
柔らかい高価そうなベットは今まで私が寝たどのベットよりも心地良い。しかしそれは部屋をみれば彼女の寝具であることは明白で、どういうわけか寝かせたのも彼女本人のようだった。
どうして彼女は敵である私によくしてくれているのかわからない。でも、正直そんなことどうでも良くなっていた。
誰かの手を握ったのは、いつぶりだっただろうか。
ゆっくり休むことができたのは、いつぶりだっただろうか。
誰かに優しくしてもらえたのは、いつぶりだっただろうか。
どれも思い出せない。
目を瞑り、彼女の冷たさを感じながらどうかこの時間がずっとずっと続きますようにと思った。
そして気がつけばまた夢の中へと潜っていた。
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レイナの寝顔を見ながら、この子が元気になった後どうしようか考えていた。
勇者パーティに馬鹿正直に送り返すのは個人的には無しだ。
なら私が面倒見てやろうか?...いや、そういうのはもうやりたくない。
魔王に押し付けてしまおうか?でもあいついっつも寝てるから誰かの面倒見るなんてできっこないだろうしな。
どうしようかと頭を悩ませていると、レイナがいきなりぎゅっと私の手を握った。
どうしたのだろうと彼女の顔を見てみると、泣いていた。
「おい、どうした?どこか痛いのか?」
聞いても何も答えない、どうやら悪い夢にうなされているようだ。
「どんな夢見てんだよ。」
私はそう言いながらハンカチでレイナの涙をそっと拭ってやった。
「お母さん、お母さん。」
するとレイナはそう言いながら私の手を両手でより強く握った。
「私はお前のお母さんじゃねえんだ、ごめんな。」
私はそう言って、レイナの頭を撫でてやった。