ねぼすけ
私は魔王のいるフロアに来ていた。レイナのことを報告するためだ。
「魔王様、勇者パーティの娘のことですが。」
「...」
「魔王様?起きてますか?」
「...zzzzzz」
「あーまた寝てるのか。」
魔王はよく寝る。会議の時や人間が攻めてきた時は流石に起きているのだが、それ以外の時間はほとんど寝ている。逆に起きている時の方が珍しいくらいだ。
部下たちや私以外の幹部はみんな優しいから無理やり起こしたりしないけど、私はいつもこんな感じで起こしてる。
「早く報告したいんで今すぐ起きるか今ここで粉々になるか十秒以内に選んでください十、九、八、三、二」
「うわーーなんだなんだなんのカウントダウンしてるんだ!?ていうか殺気で俺のことを起こすのはいい加減やめてくれ怖いから!!!」
「あら、起きてしまわれましたか。もう少しでなんの仕事もせずに眠りこけているくそダメ魔王に引導を渡すことができたのに。」
「いやなんで悔しそうにしてるんだよ!っていうかもっと優しく起こしてくれよ!君は怖いんだ!」
「それで起きるならそうしますけど、今までそれで一回でも起きたことあるか?」
「いや、優しく起こされたことないからわからん。」
「ずっと寝てるから覚えてねぇだけだろうがボケナスが。」
「ねぇ、俺一応魔王なんだよ?それで君は幹部なんだよ?いくらなんでもボケカスは言い過ぎじゃないのかなーなんて思うんだけど。」
「じゃあ少しは仕事しろさもないと一生起きれなくしてやるからな。」
「だから軽率に殺気を飛ばすのはやめてくれ!!!君のは洒落にならないんだ!」
魔王が涙目になってしまったのでこれ以上は言わないでおく。威厳もクソもあったもんじゃない。
「そんなことより魔王様、報告したいことがあります。」
「うわぁ急にかしこまるなぁ!」
「...よろしいでしょうか。」
「ごめんなさいなんでしょうか。」
「勇者パーティの小娘が目を覚ましました。今は私のフロアで安静にしてもらってます。」
「そうか、確か魔力枯渇で倒れたのであったな。」
「はい、今は意識も受け答えもはっきりしているのですが、魔力はまだ戻り切ってはいないみたいです。」
「ふむ、体のダメージは君の治癒の魔法でどうにでもなるが、魔力は自然回復を待つしかないからな。」
「そうですね。ただみたところあと3日もすれば元の健康な状態に戻りそうなのでなるべく安静にすれば問題ないかと思われます。」
「そうか、一日でも早くに復帰できるよう尽力するがいい。」
「畏まりました。それと勇者たち三人なのですが、あれから毎日城に来ては私の結界を切り付けています。」
「それは俺も存じている。ていうか、勇者でも打ち破れない結界ってすごいな。」
「お褒めに預かり、光栄です。」
「褒めたっていうか若干引いてるっていうか、まぁ結界はこれからもよろしく頼む。」
「畏まりました。では報告は以上になります。お休みのところ失礼いたしました。」
「それ、本心じゃないだろ。」
「本心ですよ。ほぼ年中お休みをとっているダメ魔王に対する精一杯の誠意です。」
「悪かった、だから殺気だった目を俺に向けるのをやめてくれ。目線だけで死にそうだ。」
「失礼いたしました、では私はこれで。」
「待て、これからどうするつもりだ?」
「どうって、レイナが心配なのでそばにいようかと。」
「そ、そうか。その優しさを少しでも俺に向けてくれたら。」
「じゃあ起きて仕事してください。」
私はそう言い残して魔王のフロアを後にした。