表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/84

第七十六話 反撃の狼煙

「え、エナ! どうして……飛行のスキルは持ってないはず……!」

「ええ、でも《滑走グライダー》のスキルを使ったまま、《超跳躍ハイ・ジャンプ》で水面を蹴って、飛んできたの!」


 良いながら、エナは肩に乗っているとーめちゃんに視線を送る。

 とーめちゃんは一言『もきゅ!」と鳴くと、僕の方に飛び移って《回復リカバリー》のスキルをかけてくれた。


「ど、どうして……ここは危険なのに!」


 スキル反動臨界症の苦痛が徐々に和らいでいくのを感じながら、目の前で必死に剣を止めてくれているエナに問う。


「何言ってるの。どうせ、私とエランくんの立場が逆だったとしても、エランくんは同じ事したでしょう?」

「っ!」


 振り返ったエナの顔が眩しくて、思わず目を細める。

 もしエナがピンチだったら、そのときはきっと、迷わず飛び込んでいくだろう。けど、そんなことを理由に、彼女が死地に飛び込むのは道理が合わない。


 でも、なんだか僕のことを心から認めてくれているようで、嬉しかった。

 だからこそ――


(その思いにはちゃんと答えないとな!)


 僕達を狙い、すかさず岩石を飛ばしてきた報復者リタリエイター

 とーめちゃんのお陰でスキル反動臨界症の症状を緩和できた僕は、岩石群が激突する寸前で《空気障壁エア・シールド》を起動。


 エナも含めた全方位を守るよう、障壁を展開した。

 展開された障壁に、流星群と化した岩石が衝突する。

 更に、散々激突を続けたことで岩石が脆くなっていたらしい。粉々に砕け散り、破片は力を失って下に落ちていった。



「た、助かったわ」

「お互い様だ!」

『ちぃっ! 二人揃ったところで……所詮は一時的なもの!』


 千載一遇のチャンスを逃した報復者リタリエイターは、苛立ちを隠そうともせず吐き捨てる。

 怒りのままに剣を振り抜き、力業でエナを直下へ叩き落とそうとする報復者リタリエイター


 現状エナは、飛行スキルを持っていない。

 故に、力で押し切られれば真っ逆さまに水面へと落下するだろう。


 報復者リタリエイターが、“一時的なもの”と揶揄やゆしたのも、納得せざるを得ない。

 が――それでも。


 僕は、真下へ突き落とされかけたエナの腕を掴む。


「《交換リプレイス》――《飛行フライト》を捧げ、我が手に《滑走グライダー》を!」


 エナに《飛行フライト》のスキルを与え、代わりに《滑走グライダー》を得る。

 その結果、エナは空中に浮くことに成功した。


「飛行は少しコツがいるけど、大丈夫。エナならすぐに慣れる」

「あ、ありがとう……でも、エランくん。あなた、どうして……?」


 僕の手を振りほどき、ホバリングしたままエナは混乱の混じった声をかけてくる。

 それは……目の前にいる報復者リタリエイターも同じだった。


『ば、かな……!?』


 整った顔立ちを崩し、驚愕の表情を浮かべている。

 そして――二人同時に同じ事を叫んでいた。


「なんで浮いてるの?」

『なぜ浮いている!』


 二人の指摘通り、僕は宙に浮くことができているのだ。


『なぜだ! お前は《飛行フライト》のスキルを失っているはず!? 飛べるわけがない!!』

「確かにそうだけど、《飛行フライト》を持っていなきゃ飛べないなんて、一体誰が決めたんだ?」

『はぁ?』


 訝しむ報復者リタリエイターに、僕は種明かしをする。


「今起動しているスキルは《反発バックラッシュ》さ。対象に設定した二つのものが接したとき、磁石の同極同士のように反発するスキル」

『それがなんだというんだ!』

「わからない? 僕は、反発し合う対象Aを靴底に、対象Bを大気に設定した上で、反発する力を調節してるんだ。いわば、僕は今空気の上に立ってるんだよ」

『なん、だと……? バカな……そんなメチャクチャな!』


 血走らせた目を見開く報復者リタリエイター

 なんてことはない。

 これは派生技でもなんでもなく、機転を利かせただけだ。

 

 その機転を生む精神的余裕と肉体的余裕は、エナととーめちゃんがくれたもの。

 そして――


「お前も言っていただろう? どんなスキルも使い方次第だって。次は……僕等のターンだ!」


 僕は、声高にそう宣言した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ