表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/84

第七話 出会い、不思議な少女

「んなぁっ!?」


 あまりの衝撃に、思わず《ズーム》を切ってしまった。

 ドクドクと、心臓が大きく躍動やくどうする。


 み、見てない! 僕は断じて、女の子のはだかなんか見てないぞ!

 そ、そうさ。今のはきっと見間違い……


 暴れる心臓をおさめるように深呼吸を数回して、僕はまた《ズーム》を起動した。


 洞窟の出口の向こう。

 まず見えたのは、ゲル状の大きなモンスターだ。たぶん、形からしてスライムだろう。

 そこから少し視線を横にずらすと……スライムから伸びる薄緑色の触手に拘束された、肌色成分たっぷりの女の子がいて……


「……見間違いじゃなかったぁあああああああ!」


 興奮やら罪悪感やらが一気に胸に押し寄せて、思わず叫んでしまった。

 よくよく見れば、多少貧相な胸元やお尻など、大事な部分は辛うじて布きれで隠れているが、もうほぼ100%裸だ。


「た、助けて! 誰か!」


 女の子の必死な叫びが聞こえて、一気に動揺が冷める。

 そうだ。スライムは、女の子を襲って服を溶かすモンスターだと聞いたことがある。


「おのれハレンチな!」


 許せん! 

 僕は、アイテムの大量入手で重くなったリュックを投げ捨て、スライムめがけて走り出した。

 同時に、入手したばかりのスキル《速度超過スピードアップ》を起動する。


 《速度超過スピードアップ》。

 起動してから30秒間、移動速度が3倍になるスキルだ。ただし一度使用した後は、再び使用できるようになるまで3分間のCTクールタイムを要する、時間制限付きの即席強化インスタント


「だけど、今にも18歳未満閲覧NGになりそうな女の子を助けるには、十分すぎる時間だ!!」


 瞬間、走る速度が一気に上がった。

 洞窟のえない壁の凹凸おうとつが、所々から顔を覗かせている水晶が、みるみる後ろに遠ざかる。


 風の吹かない洞窟で、向かい風を感じる。

 出口がぐんぐんと近づき、洞窟を抜けた。


 山のように大きい薄緑色のスライムが鎮座しているのは、だだっ広いドーム状の空間だった。ドーム内の壁には等間隔で松明たいまつが配置されており、まるで儀式上のような怪しさをかもし出している。


「く、苦しい……!」


 スライムの触手に拘束されている少女は、もがきながら苦悶くもんの声を上げた。


「その子を離せよ、ハレンチモンスターッ!!」


 スキル《衝撃拳フル・インパクト》。

 スライムのたもとへ一息に飛び込み、3倍の速度でかさ増しした拳を抜き放つ。

 衝撃波が渦を巻いてスライムの胴体をえぐり、ゲル状の肉体を吹き飛ばす。


 スライムの身体は四方に飛び散り、空中に浮いている状態で拘束されていた少女も解放される。


「か、解放された……って、きゃあ!」


 拘束を解かれた少女は、重力に従って落下する。


「おっとぉ」


 落ちてきた少女を、間一髪横抱きに抱える形でキャッチした。


「あ、ありがと……」

「なんのなんの……あ」


 図らずもお姫様だっこをする形になり、今僕は、端から見たらとんでもない状況になっていることに気付く。

 何せ彼女は、一糸纏わぬ姿だ(僕の名誉のために、大事な部分が隠れていることは強調しておこう)

 僕の目の前には、絹のように滑らかで、雪もあざむく真っ白な肌があり――なおかつ、その体温をダイレクトに感じている状態なのである。


 つまり現状――いかがわしい場面にしか見えないのだ。


 慌てて彼女を下ろし、「怪我はない?」とそっぽを向きながら問う。


「うん、どこも……って、あれ?」


 視界の端に、少女が自分の身体をかえりみて硬直している姿が映った。

 それから「きゃああああっ!」と悲鳴を上げて、その場にうずくまる。

 

「な、なんで? なんで私裸なのっ!?」

「たぶん、今ぶっ飛ばしたあのモンスターのせい……」


 なるべく少女を見ないように、散らばったスライムの残骸を指さして……今度は僕が硬直した。

 倒したはずのスライムの破片が、うねうねと動いているのだ。


「げっ! 生きてる!?」


 想定外の事態に驚いている僕の目の前で、スライムの破片は独りでに集まり、元の形を取り戻していく。


 《衝撃拳フル・インパクト》が効かないとは。

 なかなか骨のある軟体生物だ。


「下がってて」


 少女をかばうように立ち、山のような薄緑色の怪物を見上げた。


まさかのサービスシーン?

そして次話は、スライムと決着がつくのか!?


面白い、続きが気になると思いましたら、ブックマークや評価等入れていただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ