第二十一話 降り注ぐ危険
ジャイアント・ゴーレムの身体をぶち抜いてなお、落下の速度は緩まない。
「くっ! スキル《飛行》ッ!」
頭から落下していく中、全力全開で飛行スキルを起動する。
身体が上に引っ張られるような感覚に耐えながら、殊更に強く。
が。
(ダメだ、間に合わない!)
このままじゃ勢いを殺しきれず、地面に激突する。
「だったら……! 《硬質化》!」
全身を地面よりも固くして、地面に突っ込んだ。
どんっ!
鈍い音と共に土埃が舞う。
十数メートル地面にめり込んで、ようやく勢いが止まった。
「し、死ぬかと思った……」
戦慄を覚えつつ、《超跳躍》を起動して、地上へ上がる。
(相変わらず、「レベルアップしました!」の通知うるさい……)
辟易しながら地上へ戻った僕の目に、とんでもない景色が映る。
「なっ!」
目を疑った。
空から、撃破したジャイアント・ゴーレムの残骸が流星群のように降り注いでくるではないか!
(くっ! なんてこった。《紅炎極砲》を連射して、片っ端から撃ち落とすしか……ッ!)
下には大勢の動けない人間がいる。
残骸を全て消し炭にしなければ、全員を救うことはできない。
焦る心を叱咤し、《紅炎極砲》を撃とうと両手を空に掲げる。
「スキル、《紅炎》――くっ! ガハッ!」
そのとき、ドクンと心臓が大きく脈打ち、その胎動に押されるようにして血を吐き出した。
ぴしゃりとドス黒い液体がヒビ割れた床を叩き、その血溜まりに沈むようにがくりと膝を折る。
「ば……かな!?」
風船がしぼんでいくような虚脱感と目眩に襲われ、視界が白く霞む。
この症状には、心当たりがある。
スキル反動臨界症。
短時間に通常スキル・魔法スキルを酷使することで、その負荷に身体が耐えきれず、喀血・目眩などの症状を引き起こす。
今までの僕は、酷使するだけのスキル数を持たない雑魚であったために、他人事だったが……まさか自分がなるなんて。
(まずいぞ……このままじゃ!)
みんなが危ない。
命を賭けて戦って、守り切ったと確信した矢先。
数多の死の予感が、空から降ってくる。
(ここで死ぬわけには……! 全員死なせず勝つなんて啖呵を切っておいて、自分の決めた思いすら成し遂げられてない! まだ、アイツに報復してない! 見返してない!)
死ぬわけにはいかないんだ、こんなところで!
ぎりりと歯を食いしばり、足を動かそうと踏ん張る。
けれど、ピクリとも動かない。
身じろぎ一つできない状況の中、まるで隕石が降り注ぐかのごとく、地獄絵図が空から降ってくる。
(死ぬっ!)
思わず目を瞑り、僕は死を覚悟した。
強敵撃破したんだし、もう少し勝利の余韻に浸らせてあげてもいいんじゃ……と、書きながら思いました(苦笑)
しかし、大事なシーンが続くので、どうしても必要だった! 果たしてどうなる!?