表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/84

第十七話 対峙。SSクラスのジャイアント・ゴーレム

(と、遠いなっ!)


 今更ながらそう思う。

 全速力で駆け抜けているのに、一向に距離が縮まらない。

 

 思えば、僕の位置からは人間が豆粒くらいの大きさに見えたんだ。4、500メートルは離れていても、なんら不思議じゃない。


(マズいな……接敵までに時間がかかりすぎる!)


 額から出た脂汗が後方に散った瞬間、再び巨人の腕が突き上げられる。

 動けない人間達に、トドメを刺す気だ。


「させないっ!」


 できれば接敵してから使いたかったが。という気持ちをみ込んで、スキル《速度超過スピードアップ》を起動。

 一時的に移動速度を加速させ、巨人の元へ。


(で、デカい!)


 近づいてわかる、常識を逸脱いつだつした巨人のデカさ。

 全高は500メートルを優に超える。頭などは、あまりに高い位置にありすぎて、もはや見えないレベルだ。


「ま、マジかこいつ!?」


 見かけにビビるな、僕!!

 恐れる心を叱咤しったし、倒れている人々の間をすり抜け、巨人に向かって飛び込んでゆく。


 すれ違い様、「嫌だ……まだ死にたくない!」「やめてくれぇ!」と半狂乱で命乞いのちごいをする人々の声が聞こえた。


 そんな叫びも空しく、遂に振り下ろされる超巨大な拳。

 赤い空も相まって、まるで世界の終わりかのような光景だ。今すぐにでもしっぽを巻いて逃げ出したい。


 それでも――


 ――「そんなこと知ってる! だけど、助けたい!」――


 涙ながらに訴えるクレアの姿が脳裏に映り。

 いつの日だったか、今の状況と同じように、後ろに倒れている人がいて。強敵の前に飛び出して行った、弱っちい誰かさんの記憶がよみがえる。


 別に人助けとか、そういうことを意識していたわけじゃない。

 ただ、目の前で人の命が消えると思うと――たまらなく怖くなっただけ。


 ダンジョンには、一攫千金いっかくせんきんを狙って挑む者、スリルを楽しむ者、ダンジョンを攻略して名声を手にしたいと野望を抱く者。

 ありとあらゆる種類の人間が訪れる。


 そういう種類の人間は、興味や野望ばかりに意識が行って、大抵自分の命はおろそかに考える。中には、「ダンジョンに挑む奴はみんな勇敢ゆうかんで、死ぬ覚悟ができてるんだ」などとのたまう者さえいるくらいだ。


 そんな覚悟を持っているのは、本気で迷宮ダンジョンという名の、悪夢の権化ごんげのような魔窟に、人生の全てをささげることをちかうような、狂気に満ちた愚かな賢者けんじゃだけだ。


 死のふちにぶち当たったときには、もう遅い。

 死ぬ事なんて考えてもいなかった人間が、最後の最後で気付く「死にたくない」という本音。


 それを今、目の当たりにしているから、クレアの思いも背負って、自ら死地に飛び込むのだ。

 何より――自分の命を優先して今にも消えかけている命を見捨てるのなら、あのとき僕を突き落としたあいつと同じレベルになってしまう。

 それだけは、絶対に嫌だ。


 落ちてくる拳に焦点を結び、ひたすら強く地面を蹴る。

 この拳を止めるには、片手だけの《衝撃拳フル・インパクト》では到底力不足。

だから。


「両手で受け止める!」


 平手の状態で両腕を引き絞り、スキル《衝撃拳フル・インパクト》を両手に起動。

 《速度超過スピードアップ》で加速した勢いも上乗せして、両腕を伸ばし、一気に衝撃波を解き放った。


「《衝撃拳フル・インパクト》―二重対抗ダブル・カウンターッ!」


 衝撃波と衝撃波が、ぶつかり合う。

 僕の平手と巨人の拳は、触れあっていない。

 彼我の間に猛烈な風と衝撃波が生まれ、互いに干渉し合っているのだ。


 両者の実力は、完全に拮抗きっこう

 圧し勝つこともないが、圧し負けることもない。――最初の数秒間だけは。


「くっ……!」


 すぐに力の均衡きんこうが崩れ、僕の方が圧され始める。

 

「こんの……バカ力がっ!」


 一体こいつ、どんなパワーしてるんだ!?

 余裕のない中、辛うじてスキル《サーチ》を起動する。


◆◆◆◆◆◆


 ジャイアント・ゴーレム

 Lv 180

 HP 12040/14800

 MP 1600/2220

 STR 2180

 DEF 1900

 DEX 495

 AGI 287

 LUK 132


 スキル(通常) 《衝撃拳フル・インパクト》 《威嚇シャウト》 《硬質化ウェア・ハード》 《ダメージ増加+50%》 

 スキル(魔法) 《紅炎極砲フレア・カノン》 《閃光噴射フラッシュ・ジェット》 

 ランク SSクラス


◆◆◆◆◆◆


 ああ、そうだよね。

 こんな馬鹿げた火力してる奴が、Sクラスで収まるわけないっ!


 僕は思わず歯噛みする。

 HP一万越えのSSクラスモンスター。

 攻撃力は、僕の4倍以上。スキルも超強力。


(こんなのに、どう勝てと……?)


 無理ゲーすぎて逆に笑えてくる。

 さっきまで、それなりに実力者揃いであろうパーティが絶え間なく攻撃していたというのに、HPはほんの3000弱しか減っていない。


 だが、現状それ以上の問題があるわけで。


「まっずいな、これ……! このままじゃ潰される!」


 圧倒的パワーで圧され、地面に膝を突く。

 正面からの打ち合いは愚策だ。頭ではわかっているが、後ろには退けない。

 背後には、動けずにいる愉快な仲間達(みんな知らない人だけど)がいるからだ。


(これ以上は下がれない! かといって、押し返せる見込みもない……だったら!)


 ――相手のパワーを打ち消せないなら、その有り余るパワーを利用しつつ、直撃点を被害が出ない位置に変えればいい。


 不意に、力を込める向きを大きく変えた。

 拮抗させていた力の中心点をずらしたことで、ジャイアント・ゴーレムの拳は、その場にたたき付けられる。


「よしっ! 上手くいった!」


 続けざまに、まだギリギリ効果が残っている《速度超過スピードアップ》で、後方に飛び下がる。

 そして、魔法スキル《氷三叉槍アイス・トライデント》を起動。


 絶対零度の三つまた槍をたずさえて、体勢が崩れたジャイアント・ゴーレムめがけ、力一杯投擲した。


遂に、本作初のSSクラスモンスターとの激闘が幕を開けました!

戦いは更に熱く、熱く、白熱していきます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] SMAAAAASH!!! って聞こえてきそうな両手フル・インパクトが格好良い!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ