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しあわせのたぬき  作者: 月美てる猫
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第五章 遥かなる里 (第二節 最強の敵 ①)

やがて訪れる「戦い」を前にしてマイペースなタヌキ達とは別に戦いに備えようとする精霊達の行動は戦いにどう影響をするのだろうか。


第五章 遥かなる里


第二節 最強の敵 ①



「寒くない?薪はたくさんあるからね」

「うん、大丈夫だよ、ありがとうネッティ」


 洞窟はごつごつとした岩肌。焚火の炎がゆれるとイヌのわんこちゃんの影もゆれる。ネッティが焚き木を2本火の中に加える。焚火の煙は洞窟の「天井」をつたって外の方へ流れている。焚火に向かって「伏せ」をしていたわんこちゃんが起き上がって煙が流れていく「外の方」を向いた。

 洞窟は切り立った崖の谷底近くにあったが降り積もった雪が谷も洞窟も覆い尽くしている。谷底には細い川の流れがあってそのほとり、洞窟と川の間には人間が造った古い小屋が木々の隙間に雪に埋もれながら建っていた。秋のうちにクマさん編集局くまちゃんが小屋の屋根や壁を修復していた。冬が訪れ雪が積もると、洞窟と小屋を連結する雪のトンネルを作って、厳冬期でも洞窟と小屋を行き来できるようにしていた。洞窟の煙は雪のトンネルから小屋へ流れて小屋にあつらえた煙突から外へと出る。煙突には雪が入り込まないよう三角の屋根が取り付けられている。谷を覆い尽くした雪原にヌッとそのホーローの煙突が飛び出して煙が出ているのを、訪れた人が見たらさぞ不思議に思うだろう。煙突は人目につかないようつど木の枝などを被せて隠してはいるが、ここは大雪山(たいせつざん)系の真ん中、真冬の間は訪れる人などほぼいない。

 外の方、つまり小屋の方を見ていたわんこちゃんが、

「帰ってきたみたいだよ」

 そう言ってシッポを振る。小屋の外でガサゴソとあたりの雪を掻いて払う気配がして、外の「生き物」が羽目板(はめいた)を取り外したときに、ピューッと風が洞窟の中へ吹き込み、たき火の炎が大きく洞窟の奥へと傾く。ドカドカと床を踏む音と、バンバンと羽目板を組みなおす音がしたあと、のそのそと四つ足で小屋からトンネルまでくまちゃんが入ってきた。

「くまちゃんお帰り、火のそばに来て」

 ネッティが横にたたんであった布団を焚火のそばに敷いて洞窟の外、トンネルの手前まで行ってくまちゃんを迎える。小屋の中に入ってきた雪の吹き溜まりを見てネッティが、

「やっぱりドアを使った方がいいかもね」

 そう言うと、

「まあ、いいよ、ドアにへばりついているモノたちをそっとしておいた方がいい」

 そう言って、ブルるっと身体をふるわせ、トンネルの中で身体についた雪を落とす。首にマフラーをしただけで衣服など着ていない。生身(なまみ)のくまちゃんは降りしきる雪の中、雪をかきわけかきわけ、近くの集落まで行って帰ってきたのだった。


「まだ雪がいっぱい身体についてるよクマちゃん、外は吹雪(ふぶき)だったんだね」

「ああ、ひどい吹雪だ。遭難するかと思ったよ」

 ネッティが前足でくまちゃんの背中についた雪をはらいながら、

「普通、クマは冬眠の時季だから、クマが雪の中を歩いてくるなんてあまりないよね」

「ああ、普通はな。あいつは?」

 くまちゃんが洞窟の奥の方を見る。ネッティが、

「眠っているよ。薬は効いたみたいだ。熱は下がったよ」

「よかった、先ずは一安心だな」

 くまちゃんはひとつため息をついて焚火の前に坐る。洞窟の奥には傷ついた野生のヒグマが寝ていた。冬になる前、弱り切った姿で冬眠する為のねぐらをふらふらと探していた彼を見つけたくまちゃん、わんこちゃんがこの洞窟まで導き、食糧を与え、傷口を保護するなどして回復をはかっていた。数日前、たまたま近くを通りかかったネッティが立ち寄り、薬を煎じて飲ませてくれた。


 くまちゃんは背中に背負っていた風呂敷包みを広げる。

「近くの農家から食料をわけてもらった。みんなで食べよう」

 くまちゃんには北海道内各地に支援をしてくれる「人間」の知り合いがいた。いずれも宮西のように人間の姿を持って人間界に溶け込んでいる精霊だ。風呂敷包から日本酒、鮭とば、干し芋、のし餅、ドックフードなどが広げられ、

「うわあ」「ごちそうだね」

 と、ネッティ、わんこちゃんが声をあげ、ネッティが、

「ウーパー、ルーパー、こっちへおいでよ」

 その「精霊」に声をかけ、「何か食べれるものある?」と問う。洞窟の天井にへばりついていたその二体が降りてきて、風呂敷の上までやっくると、

「これがいい!」「これがいい!」

 二匹ともミカンを指さした。わんこちゃんが、

「え?サンショウウオってミカン食べるんだ」

「あ、いえ、食べたことないんですけど、なんとなく。この季節って、これを温かい部屋でむしって食べるようなイメージがありましたから」

 

 修行の旅に出たキッティ、ネッティは、各地で奇異な者と遭遇して交流をしていた。ネッティがたまたま十勝(とかち)川上流の温泉に浸かっていたこの二体と友達になり、以降、一緒に旅をしていた。出会った時からすでにこの二体には名前があった。姿形はウーパールーパーではなく「エゾサンショウウオ」だ。おそらくタヌキ達を生み出したのと同じ親、義明から生まれた精霊であろう。義明はサンショウウオをウーパールーパーの(たぐい)だと思っていたのかもしれない。ウーパー、ルーパーは親である義明や春美の記憶を受け継いでいたため「年末年始はこたつでミカン」と連想し、迷わず「これを食べたい」と思ったようだ。

 出会った頃は鉛筆くらいの大きさだったこの二体は、基本的に鉛筆くらいが通常サイズのようだが、その場その場の状況に合わせて身体のサイズを変えることができる。いまはネッティやわんこちゃんと同じくらいの大きさになり、焚火に当りながら正座をしてミカンの皮をむいている。

 山道で魔物達に囲まれたときネッティが白蛇に変身し、炎を吐いて戦った。ウーパー、ルーパーも見よう見まねでその姿になって魔物たちへ火を吐き、ネッティを驚かせた。ウーパーもルーパーも変身ができる。タヌキ達と同様、モノマネが得意らしい。


 日本酒を口にしながらくまちゃんが、

「ネッティは去年まではホテルでお正月だったから、少し物足りないだろう」

 そう言うと、ネッティは首を振り、

「ううん、こんな静かな年越しは初めてで楽しいよ。ホテルはお正月も泊り客がいて忙しかった。仕事の合間にいまぐらいの時間はテレビで歌番組を見ていたかな」

 わんこちゃんが、

「テレビは無いけど、ラジオで大晦日の歌番組なら聞けるよ」

 わんこちゃんが小屋のほうへ向かって小屋のコンセントにプラグを挿し込み、小さなトランジスタラジオをくわえてきて焚火のそばに置き、スイッチを入れてチューニングをする。くまちゃんが冬になる前に国道の電柱から電線を分岐させて小屋まで引いていた。更にラジオが聞けるようアンテナ線も木々の枝に這わせていた。小屋には冷蔵庫や電子レンジやマッサージ器も置いてあるがテレビは無かった。

 チューニングしながらわんこちゃんが、

「こんな山奥でも全国放送が聞けるものなんだね。今年のトリは演歌かな、ポップスかな」


『いよう、くまちゃん、わんこちゃん、ネッティ、ハッピーニューイヤー』


 パーン


 一瞬耳を疑う。ラジオから聞いたことがある声、そしてクラッカーを鳴らす音。ネッティが、

「お、おとうさん?」

 みな目をパチクリしている。

『ああ、ネッティ、感度良好だ。元気でやっているか?風邪はひいていないか?』

「う、うん、元気だよ。いま野生のクマがいる洞窟でね」

『ああわかっている、電線から手に取るように洞窟の様子がわかるぞ。食糧はくまちゃんが用意したんだな。修行中とはいえ少しものたりない年末年始だろうが、よい経験をしているな、おっと、ちょっと待ってくれ』

 ラジオの音声が格闘技の実況になり、お笑い番組だろうか芸人たちの声が洞窟に響いて、やがて激しい波動弾が飛び交うものものしい雑音になり、

『ああ、ネッティ、みんな、それじゃあな、よいお年を。いまちょっとバントウとチャンネル争いで忙しい。バントウが格闘技が見たいと言ってチャンネルを変えるんだ。いまちょうど面白いところなのに・・・。そうだ、あとで麻雀をやりたいから、くまちゃんとわんこちゃんにこっちへ来るように伝えてくれ。十神使(じゅっしんし)を迎えにやるから』


「・・・」「・・・」「・・・」


 洞窟のラジオ音声は歌番組に変わった。「トリ」近くで演歌の大御所が熱唱している。わんこちゃんが、

「知床は平和だね。でも十神使のパワーを麻雀の人数合わせなんかに使わせていいものなのかな」

 くまちゃんは首を振り、

「いや、ハクレイは寂しいんだろう。本当はいまごろテレビの前で、ひとりでミルクを飲んでいるんじゃないかな。まあ、バントウとチャンネル争いはあり得ることだが」

 少ししんみりと、ネッティが揺れる炎を見つめ、

「ギンレイ兄ちゃんは今日は札幌でタクシー乗務なんだ。三が日が過ぎてから知床へ帰るって言ってた」

 くまちゃんが、

「キッティは札幌にいるんだったな。今日はタヌキとお寺かな?」

 ラジオから違う声が響いた。


『いや、それが噴火湾で赤潮が発生していると言ってさっき百々之助(とどのすけ)に乗って出かけたんだ』

「えっ、ギンレイ兄ちゃん?」

『ああ、ネッティ』


 ラジオからギンレイの声、洞窟のラジオが無線機のようになっている。百々之助とは、修行の旅先でキッティが知り合いになったトドの精霊である。キッティもネッティも「千里眼」の能力を駆使して様々な精霊と出会い、交流している。海路を行くキッティはクラゲのクララ姫、ユムシのルッツ、シギやチドリなどの鳥類、陸路を行くネッティはサンショウウオ、ザリガニ、アオダイショウ、そして各地のいたるところで扉の陰にひそむ卵のようなものを見つけている。この山小屋の扉にもその卵がへばりついていた。だからくまちゃんはその卵が凍えることがないよう、外への出入りは扉を使わずにいちいち壁を壊して中へ入っては直している。


 キッティ、ネッティはそれぞれ霊力を上げるために魔物と遭遇しては戦いを挑んでいるが、旅で出会った仲間と協力してそのあたりの治安改善に貢献している。

 キッティも海辺を散策中にハサミムシの精霊達に襲われて海へ追い込まれたことがあるが、百々乃助やクラゲの精霊達と協力して魔物達を撃退している。

 海の精霊達も新手(あらて)の魔物が出現していることや、各地海辺の生き物、特に「虫」や海中のプランクトンが多量に発生することに危機感を覚えており、キッティを同志として迎えてくれているのだ。

 キッティはこの日大晦日の夜、海鳥達からの情報をもとに道央の太平洋岸にある地球岬へ百々乃助の背に乗りクララを伴って赤潮の現場へ急行していた。


『この時季に赤潮とは珍しいな、どういうことなんだ』


『お、お父さん、聞いていたんですか?』

 ハクレイの声に慌てるギンレイ。


『ギンレイよ、仕事中に油を売っているんじゃないだろうな。そろそろ元朝詣り(がんちょうまいり)の客が付くころだろう、ラジオのスイッチなど切って乗務に専念しなければ。ただしスイッチを切る前にちょっと教えてくれ。赤潮とはどういうことだ』


『は、はい、キッティはフナムシやウミホタルが多量に発生しているという海鳥の情報を集めていて、陸地同様、海辺でも虫の異変が起きていないか気にしていました。今日はプランクトンを扇動しているプランクトンの精霊を見たというイルカの情報があって、急遽でかけました』

『プランクトンの精霊とは初耳だが、そうか、ご苦労だな。ギンレイすまないがラジオの電源を切ったあとはタクシーの乗客は後回しでよい、キッティの霊気を気にしてやってくれ』

『はあ?・・・はい、わかりました』

 ハクレイは洞窟に「ジジジ」とスピーカーが震える音が響くほどの大きいため息を吐き、

『・・・まあ、ギンレイもキッティもネッティも一段落したら冬休みをとっていちど皆で帰ってきたらいい』

「お、お父さん、僕達はまだ修行に出たばかりだよ」

 キッティ、ネッティを修行の旅に出したのは他ならない、ハクレイだった。成果を上げるまでは帰るなと言って。

『ううん、まあ、・・・そうだな。キッティ、ネッティは修行中だったな。それぞれ気を付けてな。よい年を迎えてくれ』


 ラジオは再び歌番組になった。演歌の大御所が熱唱している。かと思ったが、

「これ、お父さんの声?」

 ラジオから聞こえてくるのはハクレイの歌声だった。

 ハクレイの熱唱に拍手をして、ラジオのスイッチを切る。


 静寂の中、揺れる炎を見つめ、わんこちゃんが、

「夏冬関係なく虫達が動くようになってきている気がするね」

 御猪口(おちょこ)の日本酒を大きな両手で口に運びながらくまちゃんがうなずき、

「ああ、少しずつだが、霊力のレベルが上がってきている気もするな」

 ラジオに降りかかった灰を手で拭いながらネッティが、

「でも知床のカムイ達はあまり危機感がないのかな、お父さんだけかもしれないけど」

 くまちゃんが、

「いや、そんなこともないさ。ハクレイからの指示で『とうさん』チームが再結成されたんだろ」

「うん、『とうさん』チームはかなり強烈だよ」

「近々、ビントウが組織して札幌のサイゴンや内藤さんと合流するんだろう」

「それはいいんだけど、かえって心配なんだ。あのチームを動かすほどの強敵が現れるのかな、って」

 

 バントウ配下でハクレイの懐刀(ふところがたな)ビントウが率いる短期的なタスクチーム『とうさん』は秘境知床の内外で活動する総勢44体、キタキツネ精霊の特殊機動部隊であり、それぞれカムイの称号と固有の名前を持っている強者(つわもの)揃いである。


 ネッティがウーパー、ルーパーに、

「おいしかった?」

 と、聞きながらふたりがむいたミカンの皮を焚火にくべる。洞窟内に柑橘系のいい香りが漂う。ウーパー、ルーパーは、干し芋をくわえながら満足そうにうなずいた。


 くまちゃんがふと、洞窟のすみにある虫かごを見つめる。タヌキ達のマネをしているわけではないが、キッティ、ネッティも「昆虫採集」をしていた。道中あるいは、魔物との戦いのあとで拾った虫を虫かごに入れて飼っている。飼いはじめは抵抗し、悪態をついていた虫の精霊も次第に邪気をやわらげ、禍々(まがまが)しさをなくしておとなしい精霊になり、やがて(なつ)いてくる。


 精霊は精霊それぞれが守っている「生身の虫達」の寿命とともに消え去る者達がほとんどであるはずが、冬になってもまだ存在をこの世にとどめ、生き続けている虫の精霊がここにいる。


「奇妙だ。精霊は自身が持つ生きる目的、つまり生き物の命を守る、ということを全うするまでを寿命としているはずだがこの虫達は何を生きる糧としているのだろう」



「もし、あいつが生きかえって虫達を生み出して操っているのだとしたら」



 ネッティがつぶやいた。誰もがそう思い始めていた。だが、誰もが口に出すのをはばかっていた。だがそうも言っていられない事態が目前に迫っている、それぞれラジオを目の前に、ハクレイもギンレイも、洞窟のくまちゃんもわんこちゃんもネッティも、キッティも、思い始めている。ネッティがまたつぶやく。


「コブの和尚(おしょう)が復活したのかな・・・」


 くまちゃんが静かに首を振り、

和政(かずまさ)や黒い和尚(おしょう)とは限らない。黒月硝の悪気(あくき)はタヌキ達によって砕かれ世界中に散った。だが再びそれを束ねて使おうとする者はいつどこから現れてもおかしくはない。世の中には野心や邪心を持った人間がうごめいている」

 ドックフードを平らげて伏せの姿勢をしていたわんこちゃんが首を上げてうなずきつつ、

「でもタヌキ達を襲ったのはきっと和政と関係のある人間だよね。(たちばな)も動き出している。世界征服の野心か、またはタヌキ達への復讐か。虫の精霊達には種の存続とか生命維持のためとか言って洗脳しているのかもしれない」


 ネッティが、

「たぶん、その首謀者はまだ虫達をコントロールしきれていないんだよね」

 

 一同が虫かごをみつめる。カゴの中には虫の姿をなごりに丸みを帯びたものがカゴの中でうろうろしている。ネッティが指を近づけるとうれしそうにすりよってくる。虫の霊的な者達は必ずしも悪気や悪意に染まることはないようだ。つまり敵にも味方にも変わる。いまのところは。


 くまちゃんが焚火の熾火(おきび)をデレッキで突きながら、

「そうだな、あのビルの屋上で起きた件ではコガネムシがタヌキ達に寝返ったと聞く」

 熾火の炎が少し大きくなる。くまちゃんがが焚き木を一本追加しつつ、


「白月硝と黒月硝は精霊を生み出すパワーを秘めていた。よきにつけ悪しきにつけ黒月硝のパワーが虫の精霊を生みだし、その精霊達は生身の虫達を守ってくれている。虫の精霊の登場は必ずしも悪いことではない。だが今はバランスが悪い。邪心が強くなってきている。黒月硝をコントロールするには白月硝が必要だ。または再び黒月硝のパワーを宿す者を砕くか」


 クマさん編集局くまちゃんは精霊を生み出すパワーを持った白月硝の主が義明であり、黒月硝の主が和政から派生した黒い和尚だと想像していた。しかし、義明の死後、白月硝のパワーを受け継いだ「白いイヌ」が各地を転々としながらそのパワーを分散しつつ死に際に「本体」を隠したのではないかと思っていた。白いイヌが一時的に飼われた場所、立ち寄った場所がいずれもサクラの木が植えてある場所である、というところまではつきとめた。しかしその白いイヌが死んだ場所と亡骸が葬られた場所が未だにわからない。そして、サクラのそれぞれには癒しのパワーこそあるものの、サクラの木自体に白月硝のパワーが宿ったものは一本も発見されていない。義明とイヌとサクラと白月硝に因果関係は認められないのかと思われた。だがふと、そのサクラの木が根を張っている場を地図に落とし線で結んで意外な事実を発見した。ある紋様が浮かび上がったのだ。

 結局のところ白月硝のありかも、「白い勇者」が何を意味するのかも依然として不明ではあるのだが、くまちゃんが、

「黒月硝が動き出すとき築島家もまた動き出すはず。次の春、結婚式で何かが起きるかもしれない」

 そう言うと、わんこちゃんが

「結婚式、だね・・・」

「そう、結婚式だ」

 くまちゃんがつぶやき、しばらく無言となる。ネッティにもウーパー、ルーパーにもその「結婚式」の意味がよくわからなかった。


 炎を見つめるくまちゃんが遠い目をする。


 くまちゃんの父親が「人間」だったとき、その彼が結婚するはずだった人間の女性は、はるかやかずみにゆかりのある者だった。

 

 ネッティは人間の「大人の話」と思い特に結婚式のことは気にしていなかった。ただ、虫が動きだし、虫の精霊が魔力を引き上げていく次の春には何等かの大きな動きがあるだろうとは思っていた。敵が強大になっていく前に手を打つことが修行中の自分に課せられた課題のような気がしている。


 くまちゃんがウーパーとルーパーに御猪口(おちょこ)を渡して日本酒をつぐ。ウーパーとルーパーはくんくんと酒のにおいをかいで一気に飲み干し、そのまま仰向けに寝た。


「大人のようでもやはり精霊に酒はよくなかったか」

 くまちゃんが済まなそうに精霊であるネッティに言う。ネッティは「仕方ないなあ」という顔。わんこちゃんが洞窟の奥から毛布を引っ張ってきて、ウーパーとルーパーにかけながら、

「そりゃあそうだよ」

 と、言って、三人で苦笑いする。


「敵が誰なのかはよくわからないけど、虫を扇動して人間界を攻撃するとしたらある程度、チカラを蓄えてからだよね。虫もムシの精霊も数が増えてはいるけどいまはまだそんなに強くはない。でもまだどんどん強くなりそうな気がする。だから敵が結束を固めて強くなる前に手を打てばいいんだよね」

 何となく皆を元気づけるようなネッティの明るい声だった。


 ウーパーとルーパーがむくっ、と起きて、

「私たちも一緒に戦います」「協力させていただきます」

 そう言ってまた仰向けに寝る。


 くまちゃんが、

「そうだな、敵はいまどこにいるのかな。眠っているうちに叩いてしばりつけてしまいたいものだ」


 わんこちゃんがウーパーとルーパーに毛布をかけなおしながら、

「タヌキの兄弟達は世界を変えるくらいのすごいパワーを持っていると思うんだ」

 ネッティが、

「そうだよ、しあわせのタヌキだもん」

 わんこちゃんが、少し微笑み、

「そうだね、それと・・・築島精一さんも」

 くまちゃんを見て、

「まだ本性を現していないよね。でも感じるんだ。あの人は何とかしてくれる人、普通の人間より強いって」

 くまちゃんが静かにうなずき、

「そうだな。だがまだ敵の姿も見えない。彼もまだ動こうとはしないだろう」

 ネッティが、

「人間の敵は橘ひとりなのかな。あいつもまだ様子を見ているところだよね」

 くまちゃんが、首をふり、

「人間はひとりでは何もできない。人間の敵は他にも増えるだろう。ただ奴は悪い人間になった。だからあれ以上悪い人間にはならないと信じていた。だが・・・」

 じっと炎を見つめ、

「やつが首謀者とすでに接触している可能性は高い。首謀者とは契約せずに単独で行動、ということもありうるが」

 

 味方としても敵の方もまだ様子を見ているところ。ただし、戦いの火種が成長過程にあることは疑いない。わんこちゃんが焚火の炎を見つめ、


「あともう少しなんだ、もう少しで謎が解けるのに」

「サクラか・・・」

 くまちゃんがつぶやき、そしてわんこちゃんが、

「結婚式の前にもう一度タヌキ達が暮らした家をつきとめたい」

 と、言う。


 イヌのわんこちゃん、クマさん編集局くまちゃんはタヌキ達が暮らした家のまわりに何か重大な秘密が隠されていると思っていた。あれから十数年経ち、何度もあの場所へ立ち寄りくまなく探したが、タヌキ達が暮らしていた家も、その痕跡すらも見つけることができなかった。隣家が、あるいはあの町内の人々が何かを隠している、築島家とも過去から何らかの関係があった、そう考えている。


「サクラの花が咲く頃、春になったらもう一度、くまなく探すんだ。白い勇者は川か、サクラの咲く場所のどこかに必ず潜んでいる」

 それぞれが秘めたものを明かさないのは「守るべき何か」が「か弱い」からではないか、とも思っている。洞窟の奥で眠る傷ついた野生のクマをみつめながら、

「敵の攻撃から守るためにも、なんとしても」

 そう、くまちゃんが誓いをたてるようにつぶやくと、


 ズドドーン


「あれ?いまの音は」

 ネッティが千里眼で外を眺めると、

「向こうのほうで雪崩(なだれ)みたいだね」

 ウーパーとルーパーもむくっと起き上がって「向こうのほう」を見る。


 くまちゃんがハッと思いだしたように、

「そうだ、崖の上を歩いてきたときに気になっていたんだ。クレパス状になっていた。正月に山登りをする登山家や山岳スキーの愛好家が迷い込んでは危険だ。ネッティ、崩れそうなところを全部谷へ落としてくれるか」

「うん、いいよ」


 ネッティが念をこめる。辺りに生き物がいないことを確認し、


 ズドドドドーン


「あっ!」

 ネッティが口をあけたままそちらの方を向いている。

「どうしたの?」

 わんこちゃんがネッティに問う。

「雪崩になりそうな崖の雪はみんな落としたんだけれど・・・」

 恐る恐るくまちゃんが、

「何かあったか?」

「ダムの施設が少し壊れたかもしれない」

「中に人は」

「いないよ」

「それならいいだろう。ダムの管理人がときどき来て使う施設だ。施設の倒壊より人命が大事だ。正月の登山客が雪崩の巻き添えになる前に落としておいて正解だ」

 わんこちゃんがほっとしたように、

「今年は雪がおおいからね」


 それぞれ焚火の炎に向かい、くまちゃんが持ってきた食べ物を口にし、今年のできごとを振り返り、来年のことを思い描く。



百々(とど)之助、そろそろ着くよ」

「おお太平洋だな、姫、あの灯りはなんだべな」

「なんだべ?海が私らを歓迎してるんでないかい」


 日本海側、札幌から近い石狩湾でギンレイの狐場理が張られ気球のようになった百々之助が北風に乗ってオロフレ峠上空を越え、白鳥大橋をかすめて、噴火湾を望む地球岬近くの港へと着水する。地球岬沖はホエールウオッチングをする観光船も行き来する海の観光名所であり、また、噴火湾周辺は陸に上がれば有珠山(うすざん)駒ヶ岳(こまがたけ)などの火山があり、洞爺湖や登別などの温泉名所もほど近い。漁業が盛んであり、港を出る舟の漁火(いさりび)が沖に点々と並ぶのが日常の光景であるのだが、


「いやあ、歓迎ムードじゃないっしょ、漁火にしては点々とこまけいし、イルミネーションみたいだども何だべね」


 百々之助が港に着水すると場理は解ける。暗い波に浮かんだ百々之助にはキッティがまたがり、その少し前にはゆらゆらとクラゲのクララ姫が室内の照明器具のように浮かんで、そうつぶやく。キッティが千里眼で前方を見つめながら、

「漁火もまじっているかな。でもおおかたは何かの精霊だね」

 そう言うと、百々之助は鼻の孔を膨らませ、

「それにしてもこんな大晦日の夜に出る漁船もあんだな。たまげた、元旦営業のショッピングセンターから鮮度抜群地場漁港の元旦初水揚げを頼まれてしぶしぶ海に出たってとこだべ、気の毒だな、大晦日や元旦ぐれい休ませてやりてえもんだけんど、大手企業の人間も魔物みてえなもんかや」

 そう言って百々之助とキッティ、クララ姫が斜め後ろを見る。水族館の駐車場に黒塗りの車が二台停まっているが、中にいるのは人間がふたりと、魔物が4体。

「魔物にそそのかされたか、魔物に魂をささげたか、いずれにすてもなまじ感じ悪ぐねえけ」

 人間界のいざこざに精霊は関わらない。魔物も魔物のような人間であっても、その悪徳行為が人間世界の営みの一部であれば黙って見過ごすのみだ。ただ、千里眼でそのモノ達の心を探り、

「あの赤潮、漁業関係者への脅しのようなものだね」

 百々之助がおおきくうなずき、

「年末年始にスーパーさ卸すはずの冷凍のカニやエビを横流ししてるんだべ。水族館の駐車場に冷凍コンテナがあるのはどう見ても怪しぐねえか。いま漁に出ている漁船が獲ってくる魚もおおかたそうだべ」

 キッティが、

「そのようだね。コンテナの中には高級食材がぎっしりだ」

「やつら養殖のホタテや魚も規格外の小さなものまで根こそぎ買い取って大手スーパーに流す連中だべ。よその港でもみかけたさ。このごろちゃんこい料理屋が良質な北海道産の魚介を買い付けしにくくなっているっていうけどよ、仲買人は小単位での取引より大きい単位で売り買いするほうがカネになるがらな。こんなことを許すてると日本の食文化もいずれ壊れるべ。そしてさ、漁師達もああいうブローカーの言いなりになって、大晦日の夜も、シケの日も出漁しなきゃなんねえ。そして、あの赤潮だ。まったく、はんかくさい連中だべや。いっちょ、()らしめてやるかや」


 百々之助が促すように問う。

「なあ、どうする?大将」

 キッティは努めて冷静に答える。

「仕方ないよ、人間達がすることだから。何か、攻撃してもいいような理由があれば・・・」


 クララ姫が促すように問う。

「したってさ、あの赤潮は養殖の貝だけじゃなく、野生の小魚や貝にも毒だべさ」


 キッティが納得の表情で、

「うん、そう言われてみるとそうだね」


 百々之助が更に問う。

「あの水族館の中も怪しげでないかい。じょっぴんさかって使われていないみていだけんど、海さ面した排水施設から赤潮さ出しているように見えるど」


 閉鎖中の水族館に灯りが灯っている。千里眼で見ると中に魔物の影。キッティがつぶやく。

「高潮で施設が壊れることは、よくあることだよね」


 百々之助はちょっと首をひねりつつ、

「いや、よくあることとはいえねえけんど、そだな、まあ、たまにはあるんでないかい」 


 キッティがつぶやく。

「電気クラゲの影響で施設が停電、ってこともたまにあるよね」


 クララ姫は全身を左右に大きくひねりつつ、

「いやいや、ほぼねえよそんなの。だども、正月なんかはそういう予期しねえトラブルはあるかもしんねえな。ほら、ネットワーグの不良とかは正月よくあるべさ」

 

 三人でうなずくと・・・、


 百々之助が海面に口をつけて赤潮を勢いよく飲み込み、


バブハーッ


 水平線まで届くか、というくらい霧状にしてプランクトンを吹き飛ばす。


 クララ姫は全身を眩しく光らせたかと思うと、「腹」のあたりに光が集中し、一筋の稲妻が発射される。


バリバリズドドーン


 水族館の施設に命中する。施設の灯りが消え、排水施設の水を噴射する音が止まる。更に、キッティが手のひらに光る球体を出して、


ズッドーン


 水族館めがけて発射すると、球体は巨大化しながら施設へ直撃する。中にいた魔物達が吹き飛び、排水施設の太いパイプが破裂し、施設全体が傾いた。


「あ、壊しちゃったかな」


 キッティは施設を破壊するつもりはなく、施設の中の霊的なモノを攻撃したのだが、魔物達が張った防御の盾が人間の造作物である建物の壁や柱の隅々に施されたため、魔物を攻撃した際にはキッティの放ったエネルギーの波動が建物にも影響してしまった。

 海から一斉に黒い魔物達が飛びかかってくる。


 ドドーン、ドン、ドン、ドドーン


 百々之助が大きな口を開いて波動を放ち、太い二本のキバから光線を放って次々に魔物を撃退する。水族館の車両から魔物が飛び出してきた。サルのような姿から黒い影に変わって飛んでくるが、


 ピカッ


 クララ姫が目くらましの閃光を放って魔物の動きを止める。どこからともなく集まってきていたクララ姫親衛隊隊員が次々に光線を放ち魔物達は殲滅された。


 車から降りてきた人間ふたりがこちらへ歩いてくる。手には拳銃を持っている。精霊が相手とわかっているのだろうか。キッティや百々之助、クラゲ達の姿は見えていないようだ。あたりをキョロキョロ見ている。

 海からプランクトンの精霊のリーダー格であろうか、バスケットボールほどもある大きさのモノが海に浮かぶ百々之助とキッティのそばへ泳いできた。


「どこのどなたかは存じませんが、ありがとうございました。私達はあの人間達に()りついた魔物に脅かされて、生きた仲間を集めてここの浜辺を攻めるよう命じられていました。生きた仲間達はほうぼうへ散らばり、自由になりました。本当にありがとうございました」


 そう言ってそのプランクトンの精霊は仲間の精霊達とともに海へ散っていく。


「いいことしたみたいだね」

「ああ、よがったな」「ほんと、よがったよがった」


 キッティは催眠リングを放って男二人を眠らせると、

「風邪をひいてはいけないから」

 と、二人に場理を張った上で、水族館近くにあった冷凍コンテナ扉のレバーに縄で縛り付ける。葉っぱを頭に乗せて人間の姿に変身すると、近くの公衆電話から警察へ電話をかけた。ほどなくパトカーがきて二人は窃盗容疑で逮捕された。水族館の中と外の冷凍コンテナには闇取引の魚介類が隠されていた。

 二人は単なる「窃盗団」のメンバーであり、魔力を使って魔物をコントロールするような人間ではなかった。警察の取り調べにより、後日、窃盗団の一味は全員逮捕された。車に同乗していた魔物達は、単に邪心を持った人間達に同行してその邪な心をエサにしていただけの、自然界にごく普通にはびこる悪知恵が働く魔物達だった。窃盗団の邪心に呼応し、地元の漁業関係者が困ることを窃盗団側に立って側面支援していた形だ。

 警察は窃盗団がアジトに使っていた閉鎖中の水族館も調べたが魔物と精霊が戦った痕跡など見つけようもない。水族館排水ポンプ室の倒壊は経年劣化と高潮などの影響とされ、魔物や窃盗団との因果関係は無いものとされた。


 キッティとネッティは修行の旅をしながら精霊やイヌのわんこちゃん、クマさん編集局くまちゃんと情報交換をし、時に魔物と戦いながらやがて訪れる世界の危機を回避する方法を探っていた。

 この大晦日の日、偶然にして緊急避難的に壊した施設、ダム発電所関連施設と、改装工事中の水族館は両方ともにたまたま偶然にも和政が担当している物件だった。全くの偶然であり予期せぬ出来事だった。しかし、両施設の破損は年明け早々、和政にとってのストレスとなる。


(この偶然は続く・・・)


 キッティの身を案じて、タクシー乗務の傍ら念を入れて様子を見ていたギンレイが、また、ラジオの前で洞窟や港の様子を見ていたハクレイとバントウが、期せずして同様につぶやく。


(お父さん、我々の行動が寝た子を起こすことになるのでは?)

(支配人、とうさんチームの派遣は見合わせたほうがよろしいでしょうか?)


(いや、我々が動かずともこのような偶然も衝突も自然に起きる。まあチームの派遣は見合わせた方がよいかもしれないが、待機だけはしておいてくれ。ギンレイは引き続きキッティ、ネッティの手助けを)


(承知しました)(わかりました)


 邪心は精霊を呼ぶ。精霊の魂が悪気を浄化をしようとするからだ。そこで精霊と禍々(まがまが)しきモノとの衝突が起きる。人間も建物もその衝突の影響を受けてしまう。港の、山中の「事故」はそれぞれの施設に漂う精霊の魔物の嘆き、悲しみ、怒りが「偶然にも」キッティ、ネッティを呼んだことにより起きた。

 和政が手がけている物件は過去からの「負の遺産」が多かった。(よこしま)な心が働き、大なり小なり不法な取引が行われた現場である。亡き父がてがけた物件だった。


 世の行く末を按じ、またタヌキ達を応援したいと気遣う精霊達の行動が、図らずも、和政のストレスを増長させてゆく。やがてそのストレスからの矛先ははるかとタヌキ達へと向けられるようになってゆく。そしてカムイの重鎮たちからも改めて「人間の営みに干渉してはいけない」という戒めの言葉が精霊達に発せられるのである。


「とんだ大晦日になったね。年も明けたしこれからお寺へ参拝に行こうか?」


 ネッティが百々之助の背中に問いかける。

「そだな、だども夜も遅せいし、せっかくここへ来たから(はつ)日の出を(おが)んでからにするべか」

 クララ姫が、

「うん、いいね、そんだば大王様とタヌキ達の健康長寿を祈願するだ」

 

 キッティは百々之助もクララ姫もタヌキ達の兄弟だろうと思っていた。何となく会うのをためらいながらも会いたいという強い気持ちを感じとっていた。だから「参拝」という建前(たてまえ)で二人をお寺へ連れて行こうと思っている。キッティ、ネッティは図らずも、全道各地にいる精霊達を結集させる役割を担うのだった。

 実際、百々之助もクララ姫もそしてウーパー、ルーパーも、全道各所の「戸」の陰に隠れた卵達も、ワッショイ小林同様、義明、春美が生みだし、タヌキ達が危機を迎えるときに現れるよう設定したタヌキ達の兄弟だった。現れる時期を遅らせ、その間パワーを蓄えた強靭な助っ人達である。

 

 タヌキ達はこの日、お寺での年越しとなった。はるかとかずみは親子水入らず、二人きりの年越しをした。かずみは来春社会人となる。はるかが勤める会社への就職はすでに決まっている。上役と新入社員の関係になる二人が、ふつうの親と子の関係で過ごす最後の年末年始だ。

 大掃除を少しだけ手伝って、「よいお年を」と言ってマンションを出た。お寺に行くと和尚(おしょう)とリスリン、リスタンがタヌキ達を出迎え、恒例の大掃除が始まる。お寺の大掃除が済んだら年越しそばをいただく。悪タヌキと、マンションの警備を鳥と交代した小林、指南タヌキと悪気タヌキも加わりお寺の本堂で、みなで静かにそばをすする。除夜の鐘は和尚と小林が交代で突いた。小林が鐘をつくたびに「ワッショイ」と叫ぶのが面白く、みなで小林が鐘をつく際に「ワッショイ」と、唱和した。


 噴火湾で、大雪山山中で、タクシーを運転しながら、ホテルの自室で年末恒例の番組を見ながら、他の精霊達がタヌキ達にも関係するであろう世の行く末を按じていることも知らず、タヌキ達にとってごく平穏な大晦日の夜が更けてゆく。



※デレッキとは、北海道の方言で「火かき棒」のことです。

※じょっぴんとは「錠」「カギ」のこと、錠をかけることを「じょっぴんかる」と言います。

※はんかくさい、は、愚か、馬鹿げた、等。


タヌキの味方をする精霊達が続々と登場してきますが、タヌキ達の運命を左右する人間達と、タヌキ達の命を直接狙う刺客も現れます。

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