アリスの過去とその原因であるクソ野郎について
「……デュランさん、でいいのですよね。今回は私の娘を――アリスを助けてくれてありがとうございました。
アリスの過去とある人物に関する話がしたいんですが、よろしいでしょうか?」
「……あぁ、大丈夫だ。食事しながら聞く」
「アリスの父親で私を一時は廃人にまで追い込んだグリード王国の王に関するお話とアリスが昔この里で虐待を受けていたことについてです」
「ッ!?? ――詳しく話を聴かせてください」
宴の料理を食べていたデュランは背後で先程までアリスと話していた彼女の母親から話をしたいと言われ、軽い気持ちで大丈夫だと返答したが。
穏やかではない母親の言葉に食事するのを止めて彼女の方へと向き直り、真剣に話を聴き始めた。
何故こんなにも必死なのかデュラン自身よく分からなかったが、強く知らなければならないと思ったため。母親の話へと耳を傾けた。
「六十年前、私は閉塞的なこの里での生活に嫌気がさして外の世界へと飛び出しました。
ですがご存じの通り外の世界では私達エルフ族は蔑まれる差別対象、当時まだ子供だった私は人族の奴隷商人に捕まってしまい。奴隷紋を刻まれて最高級奴隷としてグリード王国の王宮へと献上されました。
それでも当時の王である先王から気に入られて王専属のメイドとなったことでセクハラをされながらも一定の暮らしは出来ていました――四十年前、今の王に代替わりするまでは」
「それで、どうなったんですか?」
「代替わりするとすぐに王は私の役職を王専属のメイドから娼婦へと変えてからある部屋に監禁しました。
それから私は五年間ありとあらゆる屈辱と辱めを味合わされて廃人にされてしまいましたが、里の大人達が私の居場所を見つけてグリード王国を襲撃したことで助け出されました。
大人達はもう私は元に戻らないと思っていたそうなのですが、あの王の子供でもあるアリスを大人達が堕ろそうとしてるのを視界へ入れて私は生き返り。なんとかアリスを守り切ることが出来ました。
ですけど私から得た情報を元にグリード王国の王はこの里を襲撃して様々なものを奪ってしまいました。
そのため彼の子供であるアリスは本来仲間であるはずの里の子供達から酷い虐待を受けることになりました――全部私が原因なんです」
「……それならアリスはどうしてあんなにも利他的なのですか? そんな過去があるのなら、里の子供など本来は憎悪の対象でしかないはずなのに。アリスは守り切って見せました。
何故あんなにも誰かのために生きられるのか、俺には理解できません」
デュランがそう訊くと母親は誇らしげな微笑みを浮べながら「あの子は強くて、優しいんです。私なんかよりもずっと」と言った。
その笑顔を目にしたデュランはいつも自身へヴィンデが向けてくるのと同じ笑顔だと思い、何故そう思うのか分からなかったがそんな母親の笑顔は美しかった。
だけどアリスの時とは違って何でもしてあげたいとは思わなかったため、何故なのか考え込んだが答えは出なかったので思考を打ち切り。母親の話に集中した。
「――そうしてあの子は変えたんです。
憎しみと悲しみで止まってしまっていたこの里を、たった一人で」
「誰かのために生きる、か。俺にはとても無理な生き方だな、アリスはすごいですね」
アリスの過去を聴いたデュランは素直にアリスのことを尊敬してそう言い、母親はそんなデュランへ対して「えぇ、自慢の娘です」と返した。
そうしてアリスの過去を知ったデュランはこの後、アリスから愛の告白をされて目を見開くことになるのですが。この時のデュランは知る由もないのでした。




