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閑話 残り火

『どうして僕ら人族と多種族は争っているの? 同じ人間なのに。なんで仲良く出来ないの父さん』


 それは物を知らぬ無知な子供だったからこその質問だった。

 そして父親にこっ(ぴど)(しか)られて回りの友達からも多種族(あいつら)は同じ人間なんかじゃない、ただの下等生物だと言われている内。自分の方がおかしいのかもしれないと己の胸へしまい込んで忘れてしまい。

 何時(いつ)しか今の状況は間違っているのではないかと思いながらも何も出来ない、そんな大人になっていた。


「下等種族共が何を言っている! 貴様らに助けられるくらいなら死んだ方がマシだ!!」


 だけど、そんな大人になってしまった(・・・・・・・)俺だからこそ。人族(俺達)を守るため闘っている多種族(彼ら)の姿を目の当たりにして強く感情を()さぶられた。

 起源統一教団の支部があるこの国へ立ち入るということの危険度は彼らとて理解しているはずだ、現に今も助けた者達から罵倒(ばとう)され石まで投げつけられている。

 それでも彼らは折れず曲がらない一本の刀のように強い意志を持って闘っていた。


「だったらこの場を切り抜けた後で勝手に死んでください! 貴方達がなんと言おうと僕達には関係ない!! 僕達は自分自身の心に従ってここにいるんだから!!!」


 どうして闘えるんだ――人族(俺達)多種族(君達)にたくさん酷いことをしたのに。

 そうして戸惑(とまど)う俺の目に入ってきた少女の姿は俺達人族の語る仮初(かりそ)めの(ほこ)りなんか陳腐(ちんぷ)に感じてしまうほど誇り高く、何者も汚すことが出来ない宝石のよう意思を持っていた。

 その後彼らは俺達を死の危険からあっさりと救った上で礼の一つさえも求めずにその場を去ってしまった。

 そうして激動の夜が明けた後、俺は本来は護衛対象である王族相手に手を上げる決意をした。


忌々(いまいま)しい下等種族共め! あのような屈辱(くつじょく)を与えるとは絶対に許さんぞ!! 

 そこのお前! アイディール神国へ連絡して奴らを指名手配するのだ!! 早くしろ!!!」


「――貴様には恥という物はないのかッ!! 俺がその(くさ)りきった性根(しょうね)を叩き直してやる!!!」


 目の前で彼らを口々に罵倒(ばとう)する男のことがどうしても許せず、この国の王族であるのを承知の上で思いっきり顔面をぶん殴った。


「な、何を!? あんな下等種族共の味方をするなど気でも狂ったか、貴様!!?」


誇り(プライド)の欠片すら見当たらない貴様が正気だと言うのならッ! 俺は気狂(きちが)いでいい!!」


「なんだと!? 放せ、放すのだこの化け物!! 早く助けるのだ、衛兵共!!!」


 慌てて目の前の王族(カス)を助けようとする衛兵達だったが俺はこいつらの隊長だ。部下の力も技も知りつくしている。

 炎属性の魔力で強化した身体能力で全員を鞘に入れたままの剣で殴り倒し、怯える王族を睨み付けるとそのまま王族の全身の骨を殴り(くだ)いていく。

 そしてただでさえ脂肪だらけで汚い体が()れ上がって丸いボールのようになったのが目に入り、俺はやっと我に返った。


「や、やっちまったァッ!?! どうしよこれ!?」


 そう言って頭を抱える男はこれもいい機会だったと開き直って起源統一教団の教祖も含めて不穏分子(ふおんぶんし)を全て殴り壊して再起不能にしてから、昨日の闘いを見ていた子供達を中心に彼ら(多種族)は起源統一教団が言うような(おろ)かな下等種族などではないことを教育していき。

 少しずつ国を変えていった男はハーフエルフであるアリスを起源神ワールドの生まれ変わりである聖女として崇拝(すうはい)し、その考え方を広めていった。


 やがて神聖プライド王国と名を改めたこの国の王に男はなり、世界存亡の危機である事変が起きた際。

 現場にデュラン達の味方として駆けつけ、アリスからお礼を言われたことで死にかけることになるのだが。それはまだ未来の話である。

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