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18 仲が良いから、ケンカもするんです!


 マキナの言葉に対して、僕はなんだそんなことかと思い、肩をすくめて言った。


「ああ、またその話? そんな、無理に僕を持ち上げなくてもいいんだよ。だって、僕がいま活躍できてるのは、マキナのおかげなんだから。パーティで大切なのは後衛より前衛だって、みんなもそう言ってるだろ?」


「カケルさん……」

 だが、マキナは僕のことを真っ直ぐに見据えて言った。

「どうか、真剣に聞いていただきたいと思います」


「……わ、わかったよ」


 マキナにそうまで言われて、僕も姿勢を正して、真剣に聞く体勢になる。

 それを確認して、マキナは語り始めた。


「カケルさんが、いまの活躍を私のおかげと言ってくださるのは、私にとって光栄です。ですがカケルさん、いくらなんでも、私のことを立てるあまり、ご自分を卑下しすぎなのではありませんか?」


 マキナは眉をひそめつつ、話を続ける。


「カケルさんは、本当なら最強クラスの魔法使いなんです。これまでは前衛に恵まれなかったせいで正当に評価されてこなかったのだと思いますが、いまは私がいます。私がカケルさんの前衛を務めれば、カケルさんも最強の後衛として、実力を発揮できるはずです。というか、いままさにそうなっています」


「うーん、確かにマキナは、前衛としてゲイルたちより優秀だと思うけど……」


 ゲイルやマッシュの場合、陣形に隙があったり、狙う敵の優先順位が間違っていたり、魔法発動のタイミングと呼吸が噛み合わなかったりといったことが多くて、僕がいちいち指示を出さなければならず、僕は魔法に集中できないことが多かった。


 しかし、マキナにはそういうことがない。彼女は前衛として、完璧な動きをしてくれる。


 それに、以前の僕はボルケーノのような高威力魔法について「詠唱時間が長すぎて実戦では使えない」と思い込んでいた。でも最近は、マキナのような優秀な前衛がいれば、詠唱に時間がかかっても大丈夫だとわかった。


 だからマキナの言う通り、確かに僕は、前よりもずっと実力を発揮できていると思う。


「……それにしたって」と、僕は疑問を口にした。「前のパーティだって、この街じゃ一番のパーティだったんだよ? そのことはどう説明するのさ?」

「それは、ここが田舎で、強いモンスターが滅多に現れないからです。だからその程度のパーティでも一番になれたんです」


 この言い草には、さすがの僕も苛立ってくる。


「おいマキナ。僕を持ち上げたいからって、そんな言い方はやめろよ」

「そういうわけじゃありません。私は事実を言っているだけです!」

「まったく……で、僕が最強クラスの魔法使いだって? そういえば、最初の日の夜もそんなことを言ってたね……どう考えてもそんなわけないのに、どうしてマキナはそう思うんだよ?」


「あのですね……」


 そんな僕に対して、マキナは根気強く言い聞かせるように言った。


「この世界の人は、ステータスやダメージ量を数値化して確認できないせいで、気づいてませんけど……カケルさんの魔法は、まず威力が並外れて高いんです」

「カケルさんたちの目には『魔法を当てたらモンスターが死んだ』としか映ってないですよね? でも私の目にはダメージ量が数字で見えるから、カケルさんの魔法がものすごいって、私にはわかるんです。カケルさんはほぼ常にオーバーキルでモンスターを倒してるのに、みんな気がついてないんですよ……この間のトレントだって、平均的な魔法使いだったら、倒す頃には日が暮れていたはずなんです」


 だが、僕は腕組みして首をかしげる。


「そんなこと言われても、僕にはダメージが数字で見えたりしないからなあ……」


 だが、マキナは食い下がった。


「ほ、他にも、カケルさんのこの一週間の魔法命中率は驚異の百パーセントでしたし、詠唱の失敗や中断も、一度としてありませんでした」


「え? それぐらい、魔法使いなら当たり前じゃないの?」


「いや全然当たり前じゃないですよ! それ他の魔法使いに言ったら嫌みだと思われますからね!? ……たとえばボルケーノみたいな上級魔法は、並の魔法使いだったら、詠唱に成功して狙ったところに命中させられる確率は十パーセント以下です。詠唱時間だって、普通はもっとかかります。みんな戦闘中はそれどころじゃなくて、成功率や命中率、詠唱時間などをきちんと計っていないから、カケルさんのすごさに気づいてないだけなんです」


「で、でもゲイルたちは『それぐらい当たり前だ』って……」


「カケルさん……あなたは、あんなことがあった今でも、ゲイルさんたちがまともだったと思っているんですか?」


「なっ……」


 不穏なことを言うマキナを前に、一瞬、僕の呼吸が止まる。

 すぐそこにあるはずの酒場の喧噪が、なんだか、とても遠くから聞こえてくるような気がした。



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