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17 むそうむそう! お金がっぽがっぽ! そしてご飯がおいしいです!


 その日以降、僕たちは街の周辺の森で、討伐クエストを受け始めた。


 森の中でモンスターと出くわしても、マキナが前に出てくれれば、僕は安心して魔法が撃てる。


 マキナが上手く狼の群れを引きつけ、群れがマキナを追いかけるのに夢中になって密集したところを、ファイアウォールで僕が一掃する。


 オウルベアが爪を振り上げて襲いかかってきたところを、マキナは垂直にジャンプして回避し、オウルベアの後頭部をふんずけてさらに跳躍。倒れたところに、僕のファイアボールが炸裂。


 極めつけは、巨大なトレントを狩った時だった。全高二十メートル。あまりにも大きく育ち過ぎて、誰も狩ることができなかったその樹人は、僕たちを見ると、


「フハハハハハッ! このバカップルが! こんな森の奥までナニをしに来たのかは知らんが、運が悪かったな! この我が輩の養分にしてくれる!」


 と言って、無数(二十本ぐらいかな?)の枝を伸ばして攻撃してきた。それをマキナが


「<剣聖ソードマスター>!」


 で全部斬り落とすと、トレントはちょっとビビりつつ、


「ふ、フン! 少しはできるようだな! だが、それだけ強力なスキルは消耗も激しいはず! 対して、我が輩の枝はいくらでも再生可能だ! さあ、いつまで続くかな!?」


 しかしマキナは、何度でも伸びてくるトレントの枝をあっさりと、


「<剣聖ソードマスター>!」

「<剣聖ソードマスター>!」

「<剣聖ソードマスター>!」


 と全て斬り落としていく。

 さすがに、トレントは焦り始めた。


「え? もしかして何度でも撃てるの? ……え、ちょ、待ってねえそこの男の人!? さっきから黙々とファイアボール撃ちまくるのやめてくれる!? さすがにそろそろ熱くなってきたから! このままじゃ我が輩死んじゃうから!」


「……どうしよう、マキナ。うるさいから、ボルケーノで即死させちゃおうか?」

「それもいいですけど、カケルさんはバカップル呼ばわりされてムカつきませんでしたか? ここは一つ、このままファイアボールでジワジワと殺してやるのはどうでしょう?」

「なるほど。わかった、そうしよう」


「わからないで! やめてえ! お願いやめてえ! バカップル呼ばわりしてすいませんでした! あなたがたは美男美女でお似合いのカップルです! しかも純愛です!  とってもピュアなお二人です! だからやめてえ! せめてひと思いに殺してええええええええ!」


 結局、マキナの剣技の前にトレントは全く歯が立たず、僕はその場に突っ立ってファイアボールを撃ちまくってるだけで、簡単に討伐できた。楽勝だった。



 それは、まさに無双だった。


 前は一日に一~二クエストこなすのが精一杯だったのに、いまでは楽に三つも四つこなすことができる。


 おまけに、報酬は全額僕一人に入ってくる。

 おかげで僕の預金通帳の残高はうなぎ登り。

 お金、がっぽがっぽだ。


 僕たちは二人だけのパーティだけど、こういう状況になってくると、誰かを追加しても、分け前が減るだけで意味がない。

 正直、もう人間の前衛はいらないです……って感じだ。

 だから、ここ数日、何度か他のパーティに勧誘されていたけど、僕はそれを断り続けていた。


 それでも、僕たちはいつの間にか、街で一番のパーティに返り咲いていた。




 そんな無双の日々を、一週間ばかり続けた頃。


「うーん♪ イノシシのお肉、おいしいですっ!」


 僕とマキナは夜の酒場にいて、今日狩ってきたばかりのイノシシ(クエストの帰り道に襲ってきたところを、マキナが頭をかち割った。血抜きと運搬はさすがに僕がやった。さすがにね!)の肉に舌鼓を打っていた。


「ここの酒場の料理人は、腕が良いですねえ! イノシシの生臭さが、すっかり消えてます!」


「まあこのへんじゃ、獣の肉を料理する機会は多いだろうからね」


「本当においしいですよ! カケルさんも、もっと食べてください!」


「ああ、うん……」


 ここだけの話、マキナはよく食べる。

 自動人形でも食べるんだ、ってか、人間の倍ぐらい食べてない……? ……ってぐらい、よく食べる。


 いまだって、僕がイノシシのスペアリブを一つ食べる間に、マキナはバクバクバクバクとすごい勢いで、二つ半ぐらい食べていた。


 人間だと「食欲が強い女性は性欲も強い」なんて言うけど、自動人形もそうなんだろうか……。


 僕の脳裏に、この一週間、毎晩のようにあの手この手で僕を食べようとしてきた、マキナの姿が浮かぶ。

 だが、僕はそれを慌てて打ち消した。こんな人の多いところで、あれを思い出したらヤバイ。


 いまはとにかく、マキナが僕のところに来てくれた幸運に、改めて感謝だ。

 そう思って、僕はこう言った。


「こんなにご飯がおいしいのも、みんなマキナのおかげだよ。ほんとに、いつもありがとう」


「ん……そのことなんですけどね、カケルさん」


「え?」


 僕の言葉を聞くと、急にマキナは改まった様子になり、食べるのをやめて、口周りと手に着いた油を丁寧に拭き取ってから、話し始めた。


「……大事なお話があります」

「ど、どうしたの、改まって……?」


 身構える僕に対して、マキナは言った。


「カケルさん。この一週間でわかったと思いますが、あなたは非常に優秀な魔法使いです……こんな小さな街の、取るに足らない冒険者なんかで、終わるような人じゃありません」


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