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遠くの天使より近くの軍神

よろしくお願いします

誤字修正しております、ご報告ありがとうございます。

馬鹿に付ける薬はない…だったか?そんな異世界の(ことわざ)を思い出していた。今月誕生日で10才になります、私、ミディア=ラバツコンテです。


こんな若輩者ではありますが、一応婚約者がおります。3才上の13才のエリデランティ=ラバツコンテ公爵子息。今は便宜上義兄という扱いですが、本当は婚約者です。


「ミディア…再び再戦を望む!」


その婚約者(仮)から綺麗な女子力高めな、かわゆぃ封筒に入った手紙が送られてきて中を見ると、そう…書いてあった。


「果たし状か?」


続きを読むと山で釣りをした時にボウズだった雪辱を是非晴らしたく、釣り対決の再戦を申し込みたいとの事だった。再戦の申込相手間違ってない?ミル君だと思うけど…


「ミディアお姉ちゃま、エリお兄様からの手紙?」


パシオリティ…パックンが廊下から顔を覗かせて私を見ている。


「ああ…釣りをね、もう一度したいんだって」


そう言うとパックンの顔が輝いた。嫌な予感…元剣士の勘が囁く!この顔の輝きには気を付けろ!


「エリお兄様と戦うにはまずは練習だよね!」


というパックンの提案に頷いたのは良いんだけど、結局ムナッセやメイド2人と公爵家の私兵を引き連れての釣りの練習に行くことになった。何故、皆で行くの?私1人でいいんだけど?


「きゃああ!」


ムナッセとパックンの悲鳴が川岸に木霊している。だからさ言ったよね?生餌は虫とかだよ、と事前に説明したじゃないか…虫如きでガタガタ騒ぐな。


「ミミミミ…ミディアおねちゃ…それ触るの?」


「触らなきゃ餌に出来ないじゃない?」


「ひゃああ!」


まあメイドは分かるわよ?女子で虫を好きって中々いないと思うからさ…でもパックンは男子だよぉ?


「パシオリティはこれくらい触れなければ、大人にはなれないわねぇぇぇ」


まだ子供のパックンをワザと煽ってあげておいた。パックンは男のプライドを刺激されたのか、震える手で生餌を触り、用意した本物?の釣り竿を準備し始めていた。この世界にはまだ疑似餌が無いのよね。


そうして川岸に日除けパラソルが広げられ、その快適な環境の元…パックンと釣りを始めたのだけど…ここで冒頭の馬鹿に付ける薬はない、なことが起こったのだ。


山の中のうららかな午後の日差しの中…不似合いな破落戸(ゴロツキ)、悪党、悪漢、つまりは凶悪な人相の輩が15人くらいかな?が、急に現れた訳よ?


ああん?


「そこの小さいお嬢ちゃんに用があるんだとよ。一緒に来てもらうぜ」


あああん?


もうベタ過ぎて、開いた口が塞がらないよ。あっといけない!こんな山の中で口を開けっぱなしにしていたら、口の中にやぶ蚊などが入ってきちゃうわ~


それはさておき…


誰がどう見ても小悪党である。早く、魚かからないかな…あっ!引いてる!


「パックン!竿が…」


「あっ!ああ…お姉ちゃま!?どうしようっ」


「落ち着いて引きながら…そう…弱らせて…」


「おいっ!無視をするな!」


「煩いな!こっちは釣りで忙しいんだから、構って欲しいならゴモンデ子爵の方に行きなさいよ!」


私がパックンの釣りを手伝いながらそう叫ぶと、小悪党は明らかにギクンと体を強張らせた。


フンッ!そうだろうと思ったわよ。こんな山の中まであのじーさんのお使いご苦労様ですね~


私とパックンの前に私兵団の副団長、顔の怖さでは私兵団一の強面のバルバスがズオオオオッ……立ち塞がった。バルバスは視線だけで射殺せそうだね。


そんな周りが騒いでいる間に、パックンの釣れた魚が引き上げられた。


「やった!お姉ちゃま!」


「良かったね!」


私は釣り針から川魚を抜き取ると、ざる籠の中へ魚を入れた。


その間に公爵家の私兵と小悪党が川岸で戦闘を繰り広げていた。ムナッセとメイド2人がガタガタ震えながら私とパックンの傍に控えている。


「ムナッセ?怖かったら見ない方がいいわよ?」


「でもっ目を逸らしたら…何か飛んで来たら避けられないじゃないですか!?」


いや…飛び道具系は見てても当たる時は当たると思うけど、それにさ…


「あ~大丈夫だよ?私、魔道具持って来ているもん~」


私がポケットから白銀色の魔石を取り出すとムナッセとメイドの女の子2人が覗き込んで魔石を見た。


「ハンターのキーザお兄さんに貰ったんだ。『魔物理防御障壁』これを今、発動しているから私の周りは物理も魔法を跳ね返すよ」


「お嬢様ぁ~早く言って下さいよ!」


「怖がって損しちゃったです~」


と、メイドの女の子達は安堵の表情を見せた。そう言えば魔法入りの魔石って高いんだってね。何気にキーザお兄さん高価なモノをポーンと買ってくれて有難い。


「あれ?カサベ…じゃなかったミディアだっけ?釣りしてるのか?」


ん?この声は…川岸の繁みを掻き分けて現れたのはなんと、噂のキーザお兄さんがスラッとした格好良さげな姿で立っていた。


「何か揉めてるのか?護衛連れてるの?あ、そうだ、俺が留守の時に訪ねて来てくれたんだって?」


「うん!キーザお兄さんその節はありがとうございました。何とか家に戻って元気に過ごしてます!」


キーザお兄さんは苦笑いをしながら私を見たり、メイドの女の子達を見ている。


「あ、相変わらずの感じだなぁ…それはそうと手伝わなくて大丈夫なのか?」


キーザお兄さんが気遣わし気に戦闘中の男達を見詰めた。


「あ、あの悪党ですか?大丈夫で…」


と言っている傍からゴロツキが3人、こちらになだれ込んで来た。すると、キーザお兄さんは素早かった。一番近くにいた男の首筋に手刀当てて昏倒させると、アッという間に残りの2人に拳を入れた。


「貴族のご令嬢って釣りをしていても狙われるの?」


なんて聞いてきたキーザお兄さんの足元にパックンが走り寄っていた。キーザお兄さんは目を細めて膝を突くと


「怪我は無い?」


と優し気な微笑みを浮かべていた。その時、顔を輝かせたパックンが叫んだ。パックンのこの顔知ってる!


「ししょー!」


「へ?」


「僕はあなたの弟子になります!」


パックンは興奮の為か顔を赤くしてキーザお兄さんを見詰めている。可愛い…非常に可愛い。キーザお兄さんは戸惑い、目を泳がせるとゴモンデ子爵のお使いのゴロツキを縛り上げた、バルバス副団長に最終的に目を向けた。


「お嬢様、こちらの方は?」


私はバルバスにキーザお兄さんを、山で野宿している時にハンターの心得を教えてくれた先輩なの!と紹介した。


キーザお兄さんも自己紹介しているのだが、その傍をパックンがうろついている。


「ちょっとパシオリティ…キーザお兄さんが困っているでしょう?」


「だって僕、弟子になりたいんだもん!」


可愛い…弟子なんて駄目だ!と言い難い。同じくキーザお兄さんもバルバスも頭ごなしに言えないっぽい。凄い顔をしてパックンを直視しないようにしている。


その日はキーザお兄さんが強く反対出来なかった為にパックンは、弟子入り保留のままでキーザお兄さんと別れた。


「狩りたくなったらいつでも声かけろよー!」


とハンターっぽい言葉をかけて下山して行ったキーザお兄さんは、やはり爽やかなお兄様だった。メイドの女の子達がそんなキーザお兄様の後ろ姿にキャッキャウフフしていた。


普段からエリデランティとミルデランティ兄弟を見て美形に対する免疫力があると思っていたのだが、届かない神の御使いよりは、地上に舞い降りた軍神…キーザさんの方が何倍も良いらしい。私の持っているキーザお兄さんの情報を全てさらけ出して下さい!と恋に飢えたメイド達から詰め寄られた。


私は長い物には巻かれよ精神なので、潔くキーザお兄さんの情報を提供した。



◆◆◆ ■ ◆◆◆ ■ ◆◆◆


その日の夕方


山で釣りをしていた時に捕まえた悪党を警邏に引き渡して、私兵団のビューデと義父が帰って来た。


「余計なことをしてくれたよな…また城に行かねばならんよ」


と義父は帰宅早々愚痴っていた。何でも今度は、アリフェンナババアと共に実父のゴモンデ子爵の方も罪に問えるとかで、その罪状の手続きをしなければならないらしい。


「馬鹿は大人しくしておいてくれなきゃ困るなぁ~警邏の詰所で暴れているゴモンデ子爵を見て、吹き出しそうになるのを堪えたよ」


やっぱり義父はミルデランティお義兄様のパパなだけあるわ。敵?対して同じような表現でメタクソに貶している。


義父はお茶飲んで一息ついてから、そうだ~と言って私の方を見た。


「エリデランティが軍の勤めを2年で切り上げて退役すると言ってたよ。早く伯爵領の領地経営に着手したいんだって」


「……はい」


エリちゃんはやはり本気なようだ。軍に入って益々格好良くなってきた、エリちゃんは社交界でもモテていると思う。そろそろ私もデビュタント前の前哨戦ともいうべき、茶会に出席せねばならない年齢だ。


そう言えば私…同年代のちびっ子と話が合うんだろうか?


「ミディアがエリィのお嫁さんになってくれるの楽しみだな~その前にデビュタントもあるし、忙しいね」


義父はニコニコしながら焼き菓子を食べている私を見ている。これは茶会で気合いと根性で女子達とも仲良くならねば、義父を心配させてしまう!と内心焦ってしまう。


「そうでございましたわね、ミディア様もそろそろダンスのお勉強をせねばいけませんね?」


んなっ!?お茶のおかわりを注いでくれていたムナッセにそう言われて愕然とした。


一番苦手なダンス…キターーー!


何せ転生前は元剣士の荒くれ者だし、その後のアラサーおねーさんの時にはマイムマイムくらいしか経験が無い…でもスキップが出来れば出来るはずだ、多分…


その夜、気になったので寝る前に寝室でスキップをしてみた。しかし二歩目で足がもつれて転んだ…果てしなく嫌な予感しかない…


普通転ぶか?しかも今、右手と右足が一緒に前へ出ていなかったか?そうだ…え~と確か行って戻っての…ボックスステップ!これだっダンスの基本だ!


「ワンツースリー…ワンツースリー…うわっとと…!」


独りダンスレッスンはその日の深夜まで頑張って続けた。

エリデランティが活躍していない…次こそはっ!

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