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まだ9才に何を言うんだい?

沢山のお気に入り登録ありがとうございます

誤字と一部文章を修正しています。

報告とご指摘ありがとうございます(^-^)

夜…私の部屋の前まで送ってくれたエリちゃんとミル君が、アリフェンナ(実母)の現状を教えてくれた。


「俺とエリィが騒ぎを聞いて帰って来た時に、まだ門前であの人が騒いでいてさ…俺が魔法で昏倒させて警邏に引き渡したよ。捕縛されて、今は裁判待ちだ」


「裁判…」


ミル君が顔を強張らせて頷いた。


「胸糞悪いことに余罪があるしね、それに伯爵家の財産も父上と会うまでに結構、使い倒していたみたいだ。実は伯爵がお亡くなりになった時に内務省の監査が入っていて、ミディアが受け継ぐ伯爵位を領地運営不適格という理由で、国庫返還という判断がされたんだ。それを回避する為にラバツコンテ公爵に後妻に入ったらしい。今は父上が伯爵領も運営しているから問題無しの監査結果になったけどね。でも父上が言っていたよ、伯爵家の資産運営は結構危なかったって…死人に口なし、亡くなられた伯爵が放蕩だったとアリフェンナが嘘を言ったそうだ、本当に悪質な人だね」


知らなかった…私はまだ赤子だったし、ただ単に義父があのババアの色香に酔って再婚したと思っていたが、アリフェンナにはそんな思惑があったなんて…


「ミディアには酷な宣告かもしれないけど…極刑は免れないと思う」


私はそう言ったエリちゃんに頷いて見せた。高位貴族のご子息に如何わしい事をしていたのだ。当然の結果だと思った。それに他の子供達にも手を出していたんだよね?元剣士の異世界じゃ投獄の後、晒し首の刑だよ。晒されないだけマシだと思え。


「うん、小さな子供に許されないことをしたもんね…当然だよ」


私が握り拳を作っていると、エリちゃんがその私の手を握り締めてきた。


「ミディア…」


んん?若干12才のエリデランティ義兄様が妙になまめかしい目で私を見ているけれど、何?


「何も心配いらないからね?」


「何が?」


「これからは俺がミディアの事、全力で守るからね」


まああっ!?あんなにへっぽこ…失礼、生餌にも触れなかったエリちゃんが一人前なこと言ってますよ?


「エリお兄様はまずは、生餌に触れるようにならないと」


私がうっかりとポロッと言ってしまうと、エリちゃんはとんでもなく鋭い目で私を睨んできた。何でまたそんな射殺しそうな目をするんだい?


「ミディアは鈍いよな」


「何言ってるの、失礼しちゃうわお兄様っ!私、魔獣の気配ですら読めるよ?」


「やっぱり鈍い…」


今度はミル君が鈍い発言をしてきた。兄弟揃って何なの?


その後暫くは、エリちゃんとミル君は私の顔を見る度に「鈍い」と言ってきたのだ、失礼しちゃうわ!


そして数日後


義父とメイドのムナッセと私兵団団長のビューデと共に、狩猟協会に向かった。


私達が協会内に入ると、あの受付のお兄さんが声をかけてくれた。


「あれ、カサベラちゃん?今日は買取かい?」


「カサベラ?」


「あ、偽名を使ってたの」


尋ねてきた義父に説明をしている間に、支部長さんが奥から出てくるのが見えた。


「あれ?カサベラ…んん?こちらさんは?」


支部長さんに義父を紹介すると同時に、公爵家の事件のことをぼかしつつ、説明した。


「そんなことが…カサベラ…じゃなかったミディア子女は大変でしたね」


言葉使いを正されたけど、支部長さんっ!いつも通りに~と伝えると困ったような笑顔を見せているゴツイ支部長さん。


「そうだ、折角訪ねてくれたけど、キーザは別の街に依頼で出てるよ。暫くは帰って来ないよ」


とのことだった。そうか…残念。義父もまた来ようか?と言ってくれたので頷いた。


「そう言えば買取って何だい?」


狩猟協会から出て馬車に乗り込んだ後、義父に聞かれたので洞窟で寝ようかと思ったら魔獣が出て来たのでヌッ殺したことを説明したら…めっちゃ怒られた。


「何故逃げないんだ!もし攻撃されたらどうするんだ!?」


「でも…ビューデさんに教えてもらった通りに刺したら倒せたよ!」


嘘は言ってない。まあ実際は元剣士の剣術のお陰で体が自然に動いたのだけど、本当にエリちゃんと共にビューデ団長に剣術指南を受けていたのだから、間違いではない。


「ビュ…ビューデ!」


「っ…はいぃ!?」


馬車の御車席に座っているビューデさんが、義父に呼ばれて慌てて返事をしている。


「素晴らしい指導だ!」


褒めるんだ!


義父ってそう言えばまだアラフォー位だよね?35才だったか?まだどこか子供っぽい所を残しているね、アラフォー。あ…これ性格はミルデランティお兄様と似ているんだ。


あんなクソババアに引っかかって残念なおじさんだな~とは思ってるけど、根本的にどこか憎めないのは、ミル君っぽい人懐っこい感じが似ているんだな、フムフム。


「改めてだが、ミディアのお陰でエリデランティも剣術を習うようになったし、随分としっかりしてきたし、将来の伯爵家も安泰だね」


……ん?将来の伯爵家?


私が怪訝な顔をしていると、義父はあっ…と小さく呟いてから


「聞いてないのか?」


と聞いてきた。何を…?


「聞いてないのに、私から言うのはなぁ~」


とか、妙にはぐらかす義父。このすっとぼけている顔、ミル君に似ていてムカつく!


その後何度も聞いたけど答えてくれない大人気ない35才…アラフォーおじさん。エリちゃんとミル君はすでに軍の寮に戻っているし聞くに聞けない…ぐぬぬぅ。


次の日


パシオリティとテラスで寛いでいると、義父と侍従長のヤユーデが怖い顔をして客間に入って来た。


「アリフェンナがミディアの養育権は自分にある、と牢の中で主張していると報告があった。確かにミディアはまだ未成年だ、実母である彼女に親権があるという主張も間違いではない。更に狡猾なのがアリフェンナの実親、ミディアの祖父であるゴモンデ子爵がいきなり出てきて、ミディアを引き取りたいと言ってきている。今更だな…」


本当に今更だ!


自分にお爺様が存在していたのも知らなかった。今まで沈黙を通してきたのに、どうして?


「最近、あの女の実父の事業が上手くいっていないようだ。そこにあの女が目を付けたのか…もしや唆している後ろ盾でもいるのか…だが、心配は無用だ。もう手続きは済んでいる」


すでにあの女扱いの私の母親…義父はそう言ってソファに座っている私の横に座ると、私の頭を撫でた。


「ミディアが婚姻するまでは私が後見人として、しっかりと保護するしエリデランティと共に伯爵家を盛り立ててくれ」


「え?」


「本当に聞いてないんだな…兎に角、早めに書類を出して申請をしておきたいので、午後にはエリデランティが戻って来るから聞いておくように」


と、また意味深なことを言って部屋を出て行った。


んんん?


午後、エリデランティ…エリちゃんが帰って来て、私の手を取ると


「今日、やっと婚約出来るね~」


と、言ったエリちゃんもうすぐ13才。


………………え?


エリちゃんが握った私の手の指先に形の良い唇を押し当てた。チュッ…とリップ音がする。


「酷いよ!エリお兄様ぁ!?ミディアは僕のお嫁さんなのにぃ!」


一緒にソファに座っていたパックンがそう言って私とエリちゃんの間に割り込んできた。


えええっ!?婚約?聞き間違い?もしかして婚約って言ったか?


ポカンとした私を無視したまま、パックンとエリちゃんは揉み合いになった。やがて本格的な喧嘩になりそうな従兄弟同士(美形)の小競り合いにメイドのムナッセとラシリアの2人が割って入ろうとしたことで、やっと私も正気を取り戻した。


「ちょ……2人共やめなさい!」


私が本気で怒ると2人はすぐに離れた。もう…まだまだ子供だな~それにしても本気で本当に私と婚約するの?


まだ顔を赤くして、怒っているような顔をしている自称婚約者の顔を見る。


そして義父が出先から戻ってきて、本当に婚約誓約書を書かされた。何度も文面を読んだけど私の相手は『エリデランティ=ラバツコンテ』となっていた。


エリちゃんは非常にご機嫌だった。私の手をずっと握っていた。


「エリお兄様」


「なあに?」


ご機嫌過ぎて聞くのを躊躇うけど、今聞いておかないと後々後悔しそうだし…


「本当に私と婚姻されるのですね?」


「っ…!ミディア!?今頃何言ってるんだよ?俺達は出会った瞬間から結ばれる運命だったんだよ!」


…………………………知らんがな。


私…エリちゃんの育て方間違えてたかなぁ…こんな斜め上な考え方するような子だったっけ?


チラッと義父を見ると、生温かい目で私達を見ている。


これは義父公認の仲?なのかもしれない。


目の前には綺麗で天使な義兄でどうやら今日から婚約者になったらしい人がいる…これは夢かな?


◆◆◆ ■ ◆◆◆ ■ ◆◆◆


突然の婚約宣言の興奮冷めやらぬ次の日…私の目の前に初めて会う祖父がやって来ていた。今日、義父は国王陛下に謁見の為、王城に出向いている。


私の座ったソファの後ろには侍従長のヤユーデ、ミル&エリの乳母のラシリア、私付きのメイドのムナッセの3人がどーんと控えている。


そして私の前には初めてご対面の祖父のゴモンデ子爵がいる。髪の色と目の色はおじーちゃんもあのババアも私もそっくりだね。


イヤ、待てよ。問題はそこじゃねぇ…この私の前に座ったじーさん…コロンと太ってないか?イヤちょっと待てよ?私この人とまごうこと無き血族だと思うんだけど、この小太りじーさんのDNAが私に脈々と受け継がれていやしないか?


私…アラフィフになったらこのじーさんみたいに中年太りしてくるの!?嫌だ!だれか嘘だと言ってよ!


「家族で内密の話がある、席を外しなさい」


開口一番、時候の挨拶も元気だったか?とかも無しに、私の後ろにいるヤユーデ達にそう言い放ったじーさん(一応身内?)…はは~ん、コレはアレだね?


もうすぐ10才の今は婚約者もいるぞ☆彡な私を怒らせる案件だね?そうだよね?


「ミディアお嬢様はまだ成人前です。旦那様がご不在の折は、私共が代わりにお傍に居るように指示されております」


侍従長のヤユーデが落ち着いて淡々と返している。ヤユーデ格好いい!


「使用人は口答えするな!」


ヤユーデに噛みついたじーさんをジロリと睨んでやった。


おーーーい?元剣士をなめんなよ?元事務員のお局の嫌がらせにもめげないアラサーおねーさんをなめんなよ?


今、私の闘争本能に火が付いたね。


「子爵如きが我が家の侍従長にそのような口の利き方は許せませんよ?何の御用かは存じませんが、お引き取り下さいませ」


私が手でドアの方を指し示したら、それを見たじーさんは暫くポカンとしていたが、段々と顔を赤くしてきた。


「おまっ…!お前は誰に向かって口を聞いてっ…」


「初対面のくせに図々しく公爵家に押しかけて来ている、貴方に向かって言っておりますわ。当主が不在だと言っているのに屋敷の中に押し入るなんて……警邏を呼びましょうか?」


じーさんは立ち上がると、何と私を叩こうとでもいうのか腕を振りかぶった。


因みにだが、じーさんの動きは蠅が止まりそうなぐらいのスローモーションだった。振りかぶっている間に思わず欠伸が漏れる。


「ふわぁぁ…」


私はテーブルを飛び越えると、まだ手を振り上げているじーさんの横に立ちその丸っこい体を人差し指でツンと押してやった。


じーさんは元々太っているうえに、腕を振り被っていたので私が突いただけで体のバランスを崩して見事に転んだ。しかも転んだ拍子にテーブルの角に額をぶつけていた。


ゴンッ!…という鈍い音がして転んだじーさんは、悲鳴を上げて泣き叫んだ。


「なっ何をするんだっ!?暴力を振るうなんてっなんて娘だっ!訴えてやるっ!」


「……」


どう訴えるんだろう?9才の女の子に殴られました!とかいうつもりなのかな?頭の中を疑われると思うけど?


すると後日


公爵家に戻って来たミル君がヒィヒィ笑いながら


「ミディアのじーさんっ警邏に9才の孫娘に殴られて殺されそうになった!とか訴え出てきてるんだって!警邏の隊長達から聞かされて俺も吹き出しそうになるの必死で堪えたわ~どうやら隊長達は真面目にさ、転んで頭でも打ったんじゃないかって心配してたけど…ブブッ!マジでミディア殴ったのぉ?」


と、聞いてきた。


本当に訴え出るとは…頭は大丈夫か?


「興奮して立ち上がって、滑って転んだのよ…恥ずかしい大人ね」


私がため息交じりにそう言うと、そう言うことにしといてやるよぉ~と、笑いながらミル君は帰って行った。それ言いたいが為に帰ってきたの?ミル君も暇ねぇ…もっと暇なのは私のじーさんだけど。あんなのと血が繋がっていると思うとゾッとするわ。


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[良い点] 9歳の女の子に殴られたって…… 何故その言い分が通れると思ったの(笑) あの家系ヤバいね。
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