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無事に出戻りました

何とかお義兄様達と合流しました

釣りもハンモックの作り方も、軽く表現していますが本来はもっと難しいです。今更ですがファンタジーです^^;

誤字報告ありがとうございます、助かります。


ひとしきり、叫び終った私とエリちゃんとミル君の3人は暫くお互いを見詰め合ったまま固まっていた。


「ミディア…」


「はい…」


そう呟いた後でエリちゃんに思いっきり抱き付かれてしまって泣き出されてしまった。


ミル君は顔を真っ赤にして憤怒の表情だ。


「心配したよ…」


ミル君はそう呟くと表情を緩めて大きく溜め息をついた。差し出してくるミル君の手が震えている。


「どこも怪我はしていない?大丈夫か?」


「はい…」


ミル君は私の頭に手を置いて反対の手でエリちゃんの頭を撫でている。ミル君もエリちゃんも手や体が震えていた。


もしかして……


「お義兄様…捜してく……れていたの?」


「当たり前だ!」


そのエリちゃんの言葉に私の視界が歪んだ、目から涙が零れた。ミル君がエリちゃんごと私を抱き締めてくれた。温かい…温かいお義兄様達の気持ちが体に沁み込んでくるようだった。


やっぱり独りぼっちの野宿は辛かったよぉぉぉ!


その後、泣きながら縋られながらエリちゃんとミル君の捜索の模様を聞かされた。


何てことだろう…私はてっきり追い出されていたと思っていた。お義兄様達に突き放された…義父にもアンナクランツェ様にも見放されたと思ってた。


そうだ…私も冷静さを欠いていた。あんな犯罪が起こった後だ、大人達は混乱しているのは当たり前だしパックンも恐怖で泣きじゃくっていたし、皆の注目が被害者のパックン達に行くのは当たり前だ。おまけにあのクソババアの大暴れで誰もが気が動転していて、私の動向に気が回らないのは当然だった。


「屋敷中、捜してもミディアがいなくて…血の気が引いた!」


「そうだそうだ」


「市井のゴミ捨て場でミディアのドレスを見つけた時はもっと血の気が引いた!」


「そうだそうだ」


「どうして髪の毛切ってるの!?」


「そうだそうだ」


「やっぱり人攫いに遭って如何わしいことをさっ…ゲホゴホ……!」


「興奮し過ぎだエリィ、ところでミディア?」


「はい、ミルお義兄様」


「今までどう過ごしていた?山の中に隠れていたのか?食べ物とか寝る所はどうしてたんだ?」


あ……とうとうその質問にきましたか…


私はソロソロと横に置いてあった風呂敷包みを指し示した。


「先ずは……山に逃げました、それでお腹が空いたので魚を釣ってみたんです。釣れましたので、何とか火を熾して魚を焼いて食べました。川魚ってお腹が苦みがあるんですね」


「へぇ…じゃねーぇよ!魚を釣ったぁ!?エリィは魚釣れるか?火を熾せるか?」


突然ミル君に話を振られたエリちゃんはオドオドしながら首を横に振った。そりゃそうだろう、貴族のお坊ちゃんが釣りをしたり、火熾しなんて出来る訳はない。


「火を熾すのは魔法で出来る。だが、枯れ枝を集めたり火種を作ったりそれなりの知識が無ければ駄目だ。本の知識だな?」


ミル君の鋭い追及に冷や汗をかきながら、普段から図書室に通ってて良かったー!と思いつつ首を縦に振った。


ミル君は大きく頷いた。


「そうか、知識は無駄じゃないな…で、魚を食べてここで寝てたのか?」


「あ…最初はもう少し下の川の辺りにいたの。川岸の方が獣が襲ってこないって……え~と本に書いてたから」


「どうして?」


エリちゃんがキョトンとした顔で私を見た。


「野生の獣の水飲み場は、唯一争わないように獣達の休憩所になっているんだって…そこなら安全だと思って」


「流石ミディア!じゃあ川岸で野営をしていていたんだね」


エリちゃんが笑顔で頷いた。うんうん、このサバイバーな私をもっと褒めたたえよ!


「それでこれ何?」


ふと見ると、ミル君が勝手に私の風呂敷包みを開けていた。ちょっと!その風呂敷包みにはレディの秘密が詰まっているのに!


「鍋に毛布か?『野草大図鑑』『超簡単☆野営料理の全て』『初めてでも出来る生け捕りから食卓へ』何この本?」


「それは乙女の秘密です!」


ミル君は獣の血抜き方法のページを熱心に見ている。


「何が乙女だよ~本当ミディアは凄いな、これ見ながら魔獣狩りとかしてたのか?」


「ええっ!?」


ミル君の言葉にエリちゃんが絶叫した。いや…トレトとかの魔獣狩りはたまたまで…襲われたと言ったらエリちゃんが卒倒してしまうかもしれない。余計な事は言わないでおこう。


ミル君は本を見てからハンモック用の毛布を広げた。


「これにくるまって寝てたのか?」


「あ…いえ、これは…」


仕方ないので、洞窟を出て木に括りつけてハンモックの実演?をしてみた。


「…という感じで、この上で揺れながら眠る仕様だと言いますか…」


「うわっ!俺寝てみたいっ!」


早速、エリちゃんがハンモックに寝転がった。


「揺れてる~何だか不思議!でも岩の上に寝ないだけでも体は痛くないかもね」


「エリィ代われよ!」


えぇ?ミル君は大きいから難しいんじゃないかな~と思ったけど、簡単にハンモックに寝転がった。


「なにこれ~不思議!いいなぁ」


「そうだ!ミディアの釣った魚食べたいよ」


エリちゃん!?何を言い出すの?エリちゃんが遠慮も無しに、風呂敷包みの中を覗き込んで鍋とかを出してきた。


「魚はその中に入ってないよ!」


というと、何故だか兄弟2人がニヤリとしながら私を見た。


どうなってんの?


先程まで追いつ追われつしていたはずなのに、今は近くの川辺で釣りの指導を行っています。


「ぎゃあ!こんな虫触れないよっ!」


ホ~ラお坊ちゃんはミミズっぽい生餌にすら触れないだろう?そうだろう?エリちゃんが青くなってブルブル震えるなか、ミル君は器用に木の蔓に生餌をつけて、川にそれを放り込んでいる。


「そうか~魔法で蔓を強化するんだね~ほ~お、そうだっ風魔法で蔓を動かして見よう」


流石…ミル君は順応力が凄い。怯えるエリちゃんの竿に生餌をつけてあげて、へっぴり腰のエリちゃんと共に釣り体験を始めた。


本当に何やってるんだろう?


その後…順応力の高さを見せつけたミル君は、2匹釣れた辺りで満足したみたいだけど、エリちゃんの方は心の怯えが釣り竿にも伝わっているようで1匹も釣れなかった。


「やったー!2匹釣れた。よーしそろそろ帰ろうぜ~うっかりしていたけどビューデや父上達を放置したままだった」


えっ!?そうなの?それはいけない…なるべく早く義父にお会いして謝って…


「嫌だ!俺だけ釣れてない!釣れるまで帰らない!」


何言ってんだエリちゃん!?もう少し粘れば釣れるかも?という釣れない初心者あるあるをこんな時に言い出してきた、エリちゃん12才。


「エリィ、今日はもういいじゃない?また来ればいいんだし?」


なにぃっ!?私はミル君の顔を見た。ニヤニヤと笑うミル君。ああ…忘れていたミル君はこういう突発的な遊びを楽しめる人種だった…


「何て言っても~野営の先輩のミディアがいるしな、また皆で来ればいいよ、なっ?」


何を以て同意を求めてくるのかは分からないが、ここで頷かなければエリちゃんが釣れるまで粘ろうと頑張ることになる。


暫し、ミル君と睨み合ったが私の方から折れた。


「分かりました」


「っよし!じゃあ帰ろうか~」


ミル君は意気揚々とエリちゃんは渋々と、従って皆でラバツコンテ公爵家に帰宅した。


しかしお義父様は不在だった…そう、ビューデが商店街で私の脱ぎ棄てられた(只のゴミ)ドレスを発見したことにより、家出から人攫いに…そして殺人事件だと騒ぎになり勢い込んで警邏部隊の詰所に押しかけていたのだ。


「ミディア…」


お義兄様達と慌てて警邏の詰所に行くと、顔色を悪くしたおじさん2人(義父と私兵団団長)が私を見て、慌てて駆け寄ってきた。


「か、髪を切られたのかぁ!?」


「自分で切りました。あ、知ってます?髪の毛って鬘として買い取ってくれるんですよ?」


「お嬢様っ!?」


おじさん達にも泣かれてしまった…ごめんなさいご心配おかけして…


初めはオロオロしていていた義父も、私を抱っこしながら屋敷に帰る頃にはちょっぴり怒っていた。


「何故、そんな思い込みをするんだっ追い出そうとしたメイド達にもっと食ってかからないとダメだぞっ!」


「そんな、父上さすがに無理ですよ?」


と、ミル君が間に入ってくれたけど義父も忘れてやしないかい?私これでも9才なんだぜ?


そうそう、あのメイド達と門番のおじさんは、お怒りの義父によって解雇されていた。私もこれには同意した。私だから図太く元気に生きてっけど、コレ普通の9才じゃマジ死んじゃう案件だからさ?


私が義父に抱っこされて屋敷に帰ると、真っ先に飛び出して来たパシオリティ…パックンにも抱き付かれて泣かれた。どうやら自分が原因で家を出たんじゃないかと、幼心に解釈していたようで何故だか号泣しながら謝られた。


流石にコレには堪えた。私も泣きながら何度もゴメンねと謝った。叔母のアンナクランツェ様も泣きながら謝られた。


「大人の私達がもっとあなたに目を向けていたら、こんなことにはならなかったのよね、ごめんなさい」


この優しい義叔母様の言葉にも泣けて泣けて仕方なかった。泣き過ぎて瞼が腫れた…腫れた瞼をムナッセが冷やしタオルを押し当ててくれた。


「申し訳ございませんお嬢様…」


ムナッセにまで泣きながら謝られた。こちらこそごめんなさい。


私は本当に勘違いの馬鹿をしでかしていたようだ。私はこの家人の方々から追い出されてはいなかったようだ。


この日の晩、お帰りミディアの慰労会?が開催された。


最近は川魚や葉っぱの包み焼きとかアウトドアな食べ物しか食していなかったので、公爵家の料理人の作る料理が美味しくて嬉しかった。


私の好きな桃に似た果物のババロアも特大サイズで作ってくれていた。


ムナッセがソレ私の口に入るのか?というような大きな匙を差し出して


「ミディア様のお好きなルブルをいっぱい召し上がって下さいね」


と笑顔で渡してくれた。そのスプーンを口に入れたら口の皮が伸びそうです。


そして話題は私の逃亡生活?に移る。やはり若干9才がこの数週間弱をどう過ごしていたのか気になるようだ。


川で魚を取り、商店街でその魚を売り、次は山菜を摘んで、ハンターのおじさんと物々交換をして…狩猟協会に出向き、親切なキーザさんと支部長さんに助けてもらった…と話した。


「なるほど、そのハンターの青年には礼をせねばな、日を改めて狩猟協会に行こう」


と義父が私の短くなった頭を撫でてくれた。父は頭を撫でながら凄く切なそうにしていた。


「大丈夫です!髪はまた伸びるし」


義父は益々頭を撫でてくれた。


「そうか、ミディアは偉いね…どこぞのアバズレとは違って…」


あら…これは…


使用人達が急に食器を下げたり、調理場に戻ったりし始めた。私の横にアンナクランツェ様が静かに来た。


「この間からこれの繰り返しなのよ。思い出してはひとりで怒ってるのよ?お兄様としてはパシオリティのことでの怒りと、あのご婦人に裏切られたという悲しみで感情がごちゃ混ぜなのよね、暫くすれば落ち着くから~あ!そうだ、ミディちゃんの伯爵位の件だけど…ミディちゃんが婚姻するまではお兄様、公爵家が代理で領地運営しているから心配しないでね」


伯爵位…そう言えばこの国というかこの世界の貴族は基本は世襲制で性別不問らしい。でもそれは建前で血族が継ぐというよりは、貴族位を継げる人間が継いでいくのが貴族では普通らしい。王族、公爵家、侯爵家くらいしか血族継承は受け継がれていないと聞く。


実力主義…聞こえはいいが結局はお家乗っ取りや、家督争いなども頻繁におこる事案らしい。


そこで国が監査と調査を定期的に行い、問題ありと判断した貴族位の廃位を申しつけたり、親族同士で争いを起している者達には重罪を科することもあるそうだ。


そうして、見る目の無い自分に怒っているらしく


「私の目が腐っていたんだ!くそっ…」


と、ご自分に対して声を荒げている義父の背中を見ながら、何となく皆が避けている話題っぽいアリフェンナの事を思い出していた。


あの人…今、どうしているのかな。


次回から恋愛タグが活躍を見せてくれる…はず

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