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山は危険がいっぱい

誤字修正しています。一部文章を修正しています。


いやいやいや?私っておバカだね。


ハンモック……は無かったけどしっかりした布を買って来たし端っこを木の枝にしっかり括ってぶら下げれば例のハンモックになって完璧じゃね?


とさっきまでは思っていたよ。忘れていたよ……私ってばチビッ子じゃないか!木の枝まで背が届かないっ!?無理矢理ぶら下がろうとして、飛びついたらハンモックが外れて地面に落っこちたよっ!ぎょえっ!?


…独りでノリツッコミをしていると疲れてきた。そうだ、木登りすればいいんだ…ヨイショ。


スルスル…と木を登り何度か地面からの高さの丁度良い木を何とか見つけて、ハンモックっぽい布で寝床が完成した。


ちょっと乗ってみるといい感じ!これは私が子供なのが幸いしたね~大人だと体が重たくてハンモックに出来なかったんじゃないかな?


「あ、そうだ。鍋の火加減見なくちゃ…」


今までは大きな葉っぱで魚と山菜の包み焼きばかりをしていたけど、とうとう鍋を買いましたよ!


しかしあまり荷物を増やす訳にはいかない。いざと言う時に全部を捨てて逃げなければ……。我ながら淡泊だな…と苦笑いが出る。


先を考え過ぎて、切り捨てて生きているのは元剣士の性格が悪く出ている…気がしている。


「あっちの世界じゃ孤児院なんて、危ない組織の事務所みたいだったもんなぁ」


その点この世界はまだ安全だ。キーザさんや支部長さんはこんなちびっ子が野宿なんて…と心配だとばかり言っていたけど、私にしてみれば全然安全な方だ。


元の剣士の世界には、山は魔物や魔獣が無数に居て外を出歩けないほどだったしね。


でも一番安全だったのは、異世界の地球の生活かな~別の意味で怖い世界だったけど面白かった。


煮立ってきた鳥の野菜スープを木のカップに入れて飲んだ。魔獣鳥…美味しい!少し取り分けて置いておいて良かった。


そして贅沢だけど飴を買ったので、瓶から出して一つ舐めてみた。そうそう、これ…ミルデランティお義兄様がデートと称して連れて行ってくれた新しくオープンしたキャンディー専門店、この甘酸っぱい飴が凄く美味しかったんだよね。お高い飴だけど買ってしまった。


ミルデランティお義兄様…怒っているかな。エリちゃんはどうしているんだろう…お義父様は怒ってたな、ちょっと目から汗が出そうになったので多めに瞬きして、水分を飛ばした。


焚き火の炎をジッと見ていると人生について色々と考え込んでしまうね…


そうだ!『水魔法』を入れた魔石も買ったんだった。これ魔力さえ充魔?出来ていれば、水気の無い所で水を出せるし…いや~便利だねぇ。


昨日までは川に飛び込んで水洗い(行水?)だけで済ませていたけれど、今日からは…


「良い香りの石鹸を買ってみたー!」


私のちびっ子ボイスが山の宵闇に響いてしまった…危ない。トレトのような獣を呼んでしまうよね。静かに…静かに…


そうそう、この世界に内風呂ってあるのかな?とキーザさんに聞いてみたら、そんな贅沢は貴族だけだろ~?と言われてしまった。


因みにキーザさんはそうは言うものの…最近では庶民の間でプチ贅沢が流行っているらしく、お家の中をリフォームして内風呂を作ったり、新築のお家には最初から内風呂が付いている所もあるらしい(雑貨屋の店員さん談)


石鹸を持ち、草むらに移動して服を脱いだ後に水魔法で編み出した水を桶に貯めてみた。


「おおっ!」


いちいち歓声をあげてしまう私。本当に水だよ~パパッと石鹸を掌で泡立てると体から頭…全身に付けていく。


本当は髪の毛用のシャンプーとかも欲しかったけど、どうやらそれはこの世界には無いようで……洗髪の後に香油?みたいなモノ、つまりはエッセンシャルオイル的なのをつけて髪の調子を整えるらしい。


誰かがシャンプーとリンスを開発してくれないかなあ。


石鹸で全身を洗い終わり、体をタオルで拭いていると遠くで人の気配を感じた。


やっぱりね、キーザさんと支部長さんが言っていた通りだ。勿論、私も来ると思ってた。


「ハンターにもいろんな奴がいる。そこは致し方ない…カサベラが僅かながらも金を持っている…それを取り上げてやろうとする奴は出てくる」


山に戻る前にノンコメル支部長のその言葉を聞きながら、女子供ってどこの世界でも不利なんだね、と溜め息が漏れたのを思い出した。あいつらの目的は恐らくお金だけじゃない…私のこの美貌も狙ってる!…うん、ふざけている場合じゃないよね。


落とし穴でも掘ってやればよかった!あ~でも私が落ちたら困るかぁ…


急いで火の始末をして金目のものを風呂敷に包んで木の根元に隠す。そして背の高い木の上に上がった。


こんなに殺気を出しながら山を登ってくるなんて、素人かな?え~と3人か…


しかしだね、歩きながら何故に私の名前を呼んでいるのだろうか?返事をするとでも思っているのだろうか?こいつら馬鹿なのか?


しかも脇道に入ってはキョロキョロして…また登り、そしてまた脇道でキョロキョロ……


早く登ってこい!…ん?ということはだ、あいつらは私の居る場所を特定している訳じゃなくて、なんとなく


「あのガキ、山のこの辺に居るんじゃね?金も奪っていたずらしちゃおうぜ~」


というヤンキー(推定14才)くらいの年の子供じゃないかな?悪ガキの考えそうなことだ。


案の定


私が悪ガキ(推定)を発見してからあいつらは2時間も山をうろつきやがったくせに、結局疲れたのか私と遭遇することもなく下山して行った……


「何しに来たんじゃーーボケェェーー!」


アラ?元貴族の令嬢なのに言葉使いが乱れちゃったわぁ~


「…っていうことあったんですよっ!」


私はその翌日の昼過ぎに、狩猟協会に行き…ノンコメル支部長にチクっていた。


「悪い子達だな…大体誰かの予想はつくけど、カサベラに実害は無いのは良かったが…かと言ってこのままだと危険だな。そいつらは今日は来てないのか?」


と、言ってノンコメル支部長は協会内の受付の辺りを見ているが、私は断言した。


「あんな奴らは夕方まで寝ていて、夜に動き出すんですよ!(注:ヤンキー参照)」


「お……おぉ?そうかなで、顔は分かるんだろう?」


「それが山の中でモタモタしていて、多分疲れたのか中腹まで登らずに下山しちゃった根性無しで…顔は見てません」


ノンコメル支部長は苦笑いを浮かべた。


「それはそれで問題だな…狩りをするハンターを生業にしているのに、根性と体力が無さ過ぎる…」


取り敢えず、昨日の今日でまた登山してくる根性もないだろう…と判断し、くれぐれも気を付ける様に…とノンコメル支部長に言葉をかけられながら狩猟協会を後にした。


そして折角下山して来たので本屋に行こうと商店街を歩いていると、人混みに紛れて見知った顔を見付けた。


あれはっ!?


私は急いで路地に入ると大きな樽の後ろに隠れた。


前から歩いて来るのは…公爵家の私兵だ。元軍属で退役された方達だけれど、お年を召されてもまだ現役の頃と変わらない佇まいのおじ様達だ。そう…つい最近までエリちゃんと私に剣術指南をされていた私兵団の団長と副団長だ。


私はゾッ…とした。どうして団長達が商店街にいる?もしかして家を追い出しただけでは飽き足らず、私を見つけたらもっと遠くに追い出すつもりなのかもしれない。


逃げなきゃ…


団長と副団長はいかつい顔を更に険しくした表情で歩いている。すると…飲み屋街の端にあるゴミ捨て場で立ち止まり、ゴミを掴んでいる?


あああっ!しまった!あれ…昨日私が捨てた野宿生活でボロボロなっちゃったあのドレスじゃない!?


「これは…!」


「急げ!坊ちゃん達に知らせろ!」


切れ切れに聞こえて来る声に仰天した。ぼ…ぼ…坊ちゃん!?坊ちゃんってまさかミルデランティアーンドエリデランティご兄弟の事かっ!?そうなのか?


どうして…?お義兄様達に知らせるの?


私は路地を駆け出した。多少遠回りになるが、西の門から外へ出て街道から山へ戻ろう。


「はぁ……はぁ……」


途中で息が切れて、立ち止まって呼吸を整えた。子供って体力無いなぁ…立ち止まっている暇は無いのに…


どうしてこんなことに…また目の前がぼやけて来る。泣いている場合じゃないっ!頬を手で叩いて気合いを入れ直すと、再び走り出した。


山に戻り、何とか尾行されることも無くベースキャンプのある所まで戻ることが出来た。竈と焚き火の跡の痕跡を隠すと、ハンモックを急いで外して風呂敷に包んだ。


遠くに逃げている体力は無い。こんな小さな子供が街道を歩いていたら人攫いに遭うし、ましてや目立つので大人に捕まってしまう可能性が高い。


そうだ、危険は伴うけど…横穴の洞窟の中へ入ろう。


私は風呂敷を背負うと、前より重くなった荷物を背負って洞窟の奥へと侵入した。


どれくらい時間が過ぎたのだろうか…


洞窟の壁に凭れて座っていると段々と冷静さを取り戻して来ていた。


あのボロボロになったドレス…何故あそこに捨てちゃったんだろう。商店街まで団長達が来るなんて思ってもいなかった、なんて言い訳をしたって後の祭りだ。


お義兄様達に知らせる…ということは、魔法での探査が行われているとみて間違いないだろう。


屋敷に残してきた持ち物では私の場合は屋敷からほぼ出ていなかったので、探査魔法を使っても屋敷の中の痕跡しか探れない。


ところが、あの捨てたドレスは山でのサバイバル生活の痕跡がありありと残っている。この場所がお義兄様達にバレるのは時間の問題だろう。


でも追い出しておいて何故追いかけて来るのか?もしかして、私のことを捕まえるつもりなのかな…そこまで義父やエリちゃん達に嫌われてたの?


一生懸命、生きてきたつもりだったけど、それだけじゃ足りなかったのかなぁ。


その時…洞窟内に物凄い魔力の気配が充満した。


「!?」


逃げ出す暇なんて無かった。空間から突然伸びてきた腕に肩を掴まれ、私は捕縛魔法をかけられていた。


私の肩を掴んでいるのはエリデランティお義兄様だった。空間を破って出て来たエリデランティお義兄様のその後ろには、ミルデランティお義兄様が居た!


2人共とんでもない美形な上に今は怒り?か興奮なのかでお顔が怖いくらいに引きつってます!綺麗な顔で目を見開いてとんでもなく怖い顔で私を見ています!


「た……ぁ……助けてええええぇぇ!?」


「何がぁ!?」


「どうした!?」


洞窟内に私とエリちゃんとミル君の絶叫が響き渡った…

とうとう…とうとう捕まりました

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― 新着の感想 ―
[良い点] 変にすれ違わなくて良かったです(笑)
[気になる点] おや……案外早く捕まりましたね。 [一言] サバイバル生活早くも終わりでしょうか? 爵位が云々の話があるので冒険者業も廃業しちゃうのかな……なったばかりなのにそれはちょっと寂しいな………
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