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ハンターもカタチから!

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「もう少し上の方です」


何故だか肩車をされて、山を登る私としぶちょーこと狩猟協会のラバツコンテ支部の支部長のノンコメルさん。隣を歩くキーザさんは、周りをキョロキョロと見ている。


「嬢ちゃんは本当にこんな山の中に居たのか?」


「いました…今も絶賛生息中です」


自分を虫か何かと同系列で語っているが、その辺の叩けばコロンと死んじゃうような虫と一緒にされちゃ困る。気温-20℃でも50度を越える灼熱でも生き延びる自信はある!


「あ、あそこです」


山の中腹の……わわっ!私の倒した獣の周りに別の獣がたかってる!私は肩車から降ろしてもらうと、道に落ちていた石を拾って投げつけた。


自分で言うのも何だがコントロールも良い。9才児にしては腕力もある。


「ギャッ!」


恐らく魔獣鳥の類だと思われる禿鷹っぽい鳥の腹部に命中した。鳥はぶっ倒れてピクピクしている。


「こらーっ!人の獲物に触るな!」


私が走って近付いて行こうとしたら、私より素早くキーザさんが走り寄ると他の小動物を追っ払ってくれた。倒した獲物が増えた…思わずニヤニヤしながら支部長のノンコメルさんを見上げた。


「この丸っこい獣とさっき倒した鳥も追加で買い取りしてもらえますか?」


「……嬢ちゃんは9才だったよな?」


「はい」


「おっそろし~」


「何を言うんだ、将来有望な女性ハンターの誕生だぞ」


キーザさんに鋭い目を向けた後、私に朗らかな笑顔を向けてくれる熊…もといノンコメル支部長。


「この大きな獣……トレトという魔獣だな。この辺りにも生息していたのか……買取価格は1万コル、魔獣鳥は500コルだな。」


貨幣価値は1コル大体5円くらいなのよね。葉野菜が40コルだったしね、まあ大体だけど……ということは買取価格は5万2千


正直、この値段が買取相場より高いのか安いのか分からない。市場でもっと小さい魔獣鳥を見たが手羽先だけで一本で100コルしていた。


でもゼロよりは1円でも多く稼ぎたい。何もしないよりは絶対にいい。


「はい、それでお願いします」


「よしっ買い取った!因みにだな、鳥の血抜きやトレトの運搬代を差し引いた金額がソレだからな」


あ、そうなんだ!だったら自分で運ぶことが出来て、血抜き処理とか覚えればもう少し買取価格が上がるんだ。


キーザさんがキュッと鳥の首を絞めて血を抜いているのを恐々と覗き込んで見ていると、キーザさんが私を顧みた。


「あ~そうだ、それともう一つ。嬢ちゃんはまだ未成年でハンターじゃないから、俺が狩った形になって実績が俺についてしまうのは勘弁してくれな」


「実績?」


「そうそう、ハンターも魔獣や魔獣鳥、まあ色々な獲物を狩って協会に買取に出すと実績が貰えるんだよ。良い品を収めているとハンターランクが上がって、買取価格に色がついて来るっていう訳?」


なるほど~!それで沢山狩りをしてランクを上げればそれだけ儲けが増えるって仕組みなのね。


「ハンターにも色々あってな~魔獣狩り専門や遺跡発掘の専門…後は同じ魔でも魔の眷属専門の狩人もいる。魔狩り人はちょっと特殊だから、嬢ちゃんは関わりを持たんようにな?」


支部長なんだかそれ怖いし…死神の鎌を持っている黒いローブの人がイメージで出てきましたよ!


さて血抜き作業も終わって、私は支部長とキーザさんと再び山を下りた。


下山途中で私の名前を聞かれたので咄嗟に


「カサベラです」


と剣士の頃の名前を名乗ったら…


「カサベラか~」


と頭を撫でられた。まあいいか…今の名前を名乗る訳にいかないし偽名で行こう。


そして下山し、狩猟協会の受付で買取申込をし…キーザさん経由で念願の大金を手に入れた訳である。だがここでも、私がまだちびっ子であることが仇になった。


「カサベラはどうするんだ?宿に泊まるんなら独りでは宿泊は無理だろ?」


何だって?私が周りを見ると、ここに数日の私とキーザさんとの攻防を見ていたお兄さん達が皆さん口を揃えて


「未成年は独りで宿屋に泊まれないよ」


と言った!嘘でしょう!?


「それにさ、安い宿屋に泊まったら人攫いに襲われるかもよ?カサベラちゃん可愛いしやべえぇよ?」


そ…そりゃヤベェよ!最大級にやべぇよ!


「しかし家を借りるにも保証人になるのは俺がなってもいいが…身元を証明するものがいるぜ?」


キーザさんの提案はとても嬉しいが、うぐぐぐっ…それは無理!


お尋ね者(仮)の身の上じゃ安寧の土地では暮らせない。しかもこんな商店街の近くじゃ、いつ義父の追手がやって来るかも分からない。


やっぱり野宿かぁ…せめて独りキャンプが淋しくならないように快適に過ごせるように道具を揃えよう。ハンモックってあるのかなぁ…独りハンモック……切なぁぁ


「いえ、お言葉は嬉しいのですが、まだお金も貯まっていませんのでお気持ちだけ有難く頂戴致します…」


「……やっぱりカサベラは変わってんな」


キーザさんはそう言って革袋にお金を入れて「落とすなよ」と言って渡してくれた。


宿代が浮いた…と思うことにしておこう。まずはこのクタクタになったドレスを脱ぎ捨てて、動きやすい庶民服を手に入れよう!


そうそう、獣図鑑とお料理の本も買って帰ろう。


捌くのが怖いけど、魔獣鳥も下ごしらえが出来れば、食材のレパートリーも増えるってもんだ!


「じゃあ、また狩れたらご連絡していいですか?」


「ああ、支部長に直接頼めばちょいちょいと買取してくれるぜ、但し本来は駄目なんだからな?誰にも言うなよ?」


とキーザさんに念押しされた。了解です!


さて先ずは、洋服屋さんかな~子供服専門店とかあるのかな?そうだ、頼ってるついでに聞いちゃおう。


「キーザさん子供用の服ってどこで売ってますか?」


「服?…衣料店かな、女子なら表通りに若い子向けの服屋があるけど…」


「女子向けじゃないです、ハンターを目指すからにはまずはカタチから入らねば!なので、動きやすい、出来れば男の子向けの服が欲しいです!あ、それと髪を切ってくれるお店ってありますか?もう長くて鬱陶しいので顎くらいの長さに切っちゃおうと思いまして…」


「……カサベラはなんかすげぇな……うん、よし。こうなりゃとことんまで付き合ってやるよ。先ずは衣料店だな?付いて来い!」


「はいっアニキ!」


「……」


キーザさんが微妙な顔で私を見ているけど気にしない!気にしない!


そして表通りから少し路地に入った所に、男性用の衣料店が軒を連ねていた。路地に一歩入った所っていうのが…どこの世界もファッション業界は女子の圧が凄いのだろうか…


「本当に男用でいいんだな?布地の色とか暗めだぞ?」


「いいですよ!赤とか派手な色はいりませんってば~」


という訳で、異世界で言うところの迷彩柄に近い感じの地味目なパンツとカットソー、肌着…シャツなどを購入した。胸はまだ真っ平なので、下着に悩む心配が無いのは有難い。


そして靴は靴屋さんに行って選び、当たり前だけど伸縮性のあるスニーカーとか無いので柔らかめの革靴を買った。


「靴の硬さとかが気になるなら、魔獣の皮を靴の外に巻くとか縫うとか、それでも大分違うよ」


靴屋のおじさんのアドバイス参考にさせて頂きます!


と最後にヘアサロンに案内してくれる…はずなのだが、キーザお兄さんはちょっと困り顔だ。


「あのな~カサベラは知らねぇみたいだが一応言っておくと、髪を切ってくれる店…というのは厳密には無い。お前だって髪は親に切って貰ってただろう?」


えっ?親というか、ムナッセが毛先を切ってくれていたけど…因みに私の髪はプラチナブロンドで腰のあたりまである長髪だ。


「自分で出来るか?」


ひえっもしかしてナイフで切るのか?う~んいけるか?


「やってみる…」


と言った私の髪を横から前から眺めていたキーザさんがボソッと呟いた。


「ちょっと髪は傷んでるけど、でもその髪色は勿体ないな…ちょっと来い」


ん?んん?先ほど用は無い!と言っていたのに、女性向けのしかも高級なブティックに入って行くキーザさん。店内に入りお店のマダ~ムとこっちを見ながら何か話をしている。


「カサベラ~お前の髪を切ってくれるそうだ。その代わり切った髪を(かつら)として利用してもいいか…とのことだ、どうだ?」


わわっヘアドネーションだね!私はキーザさんとマダ~ムの傍に走り寄った。


「あら?よく見たら綺麗なお嬢さんなのね?男の子の服を着ているから、お坊ちゃんなのかと思ったわ~」


マダ~ムの指摘に苦笑いをする。ボロボロだったドレスは商店街のゴミ捨て場に捨ててきたし、今は先程衣料店で買った海老茶色のパンツに紺色のシャツ姿の男の子スタイルだった。


「宜しくお願いします!」


という訳で、顎のラインで髪を切ってもらえた。あ~すっきりした!おまけに髪を売ったお金も貰えた。私の髪で作った鬘で頭皮に悩む世のおじさま達が生きる希望を見出してくれたらいい。


え?おじさんの頭皮に乗るかどうかは分からない?横でキーザさんがいらない解説をくれたけど、キーザさんは言葉に気を付けてよ?頭に乗せると頭からズレるは頭皮に自信の無い方に対する禁止ワードだよ?


今日一日、目一杯お世話になったキーザさんにお礼を言って頭を下げた……らいけないので、淑女の礼をした。


「カサベラは、そこそこ淑女教育の受けてたんだろう?なのに何でそんなに剣技が出来るんだ?」


ああ、やっぱり気になるよね。よしここでも嘘と真実を混ぜて~


「義理のお兄様と一緒に剣術を習っていたんです、役に立ちました」


キーザさんは焦げ茶色の瞳を細め、私を見詰めながらポンポン…と優しく頭を撫でてくれた。


「そうか…そういうことにしておくか。ただ山では気を付けろよ?魔獣以外に野盗が出るかもしれないからな?」


「今日、魔道具店で『魔物理防御』の入った魔石買いましたもん!あ、キーザさん買って頂いてありがとうございました!」


キーザさんは苦笑いをしている。


「カサベラが宿に定住するのも、城下で家を探すのも拒むからな…まあ深くは聞かないよ。只…身を守るには必要な魔道具だからな?魔力を魔石に常に貯めておいて、すぐに発動出来るようにしておけよ?分かったか?」


「はいっ!アニキ!」


キーザさんは、山の麓まで送ってくれるみたいだ。その道中にポツンポツンと話をしてくれる。


ハンターは特殊な資格は無くても、身分証さえあれば誰でもなれて稼ぎによっては金持ちにもなれる職業だ。だから訳アリで金の欲しい者がひしめき合っている職業とも言える。


その代わり自由だし、自分の実力次第でどんどん上に上がれる。名の売れたハンターならご指名で個人的な請け負い仕事を行うこともあるらしい。ただ危険と隣り合わせだ…キーザさんはそう言った後、何度も気を付けろよ…を連発して山から離れていった。


キーザさんはまだ22才だと聞いたんだけど、お父さんみたいだ……と思ったのは内緒だ。


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