この、夢の中の異世界で。
シアに連れられて歩いていると、すぐに森を抜けることができた。
「すごいな…これ…」
周りを見回すと、あたり一面に広大な草原とどこまでも続く青い空が広がっていた。
そして、心地よい風が、身体を包み込むかのように吹きぬけている。それに呼応して、まるでよく来たねと歓迎しているかのように、すべての草達がサササといっせいに音を立てながらなびいていた。
今までこんな景色一度も見たことがない。嫌でも異世界だと感じてしまう。
「見て、先の方に建物が見えるでしょ。あれが教会。アルクで一番大きな建物よ。」
草原の先、ここからやっと目に映る距離にだが建物が見える。
「ほら、早く行きましょう!もう少しよ!」
微笑みながら手を引っ張って、草原の中をシアが走り出す。
その優しい笑顔に、一瞬心が高鳴ってしまった。
シアにつれられ、手を握り、やわらかい風を浴びながら一緒に走る。
「ほんと、びっくりするよなぁ、色々と。」
僕がこの世界にいること、それにはきっと、意味はないのかもしれない。
理由なんて、ないのかもしれない。
ふいに空を見上げたら、さっきまで思い描いていた形をした雲を見つけるような。
海辺を散歩していたら、とても綺麗な貝殻を見つけるような。
落ち込んだ日の雨上がりに、七色の虹を見つけ、つい見惚れてしまうような。
そんな、たまたま遭った偶然のようなものなのかもしれない。
でも、僕はここにいる。ここで生きている。
せっかくこの世界に来たんだ。
なら、自分が満足するように生きよう。生きていこう。
誰に縛られてじゃなく、誰かにお願いされてじゃなく、自分が送れてよかったと
思えるようなそんな人生を。
この世界でしか送れないような、面白くて楽しい人生を。
この、夢の中の異世界で。
読んでくれて、ありがとう。