プロローグ
少年は、長い長い夢を見ていました。
忘れられない夢、終わらせたくない夢。
しかし少年は知っていました。その夢からは覚めなければいけないと。
永遠に続く夢など存在しないと。
覚悟を決めた少年は、自室にとある少女を呼びました。
気高き王であり、優しい王であり、寂しがり屋の女の子を。
コンコン
「入るわよ、リオ」
部屋に入ってきた少女はいつもの王の恰好とは違う、可愛らしい少女の服装をしていた。
「どうしたの?こんな時間に急に呼んだりして。嫌な夢でも見たの?大丈夫?」
そう呟く、変わらぬ優しさを向けてくれる少女に、ふいに微笑んでしまった。
「こっちに来て」
そう言われた少女は、ベッドで座っている自分の横に腰を下ろした。
「膝枕するから、俺の膝の上に頭を置いて」
少女は突然言われた事に戸惑い、顔を真っ赤にした。
「え、え、急に何?」
そんな可愛い反応をくれる少女を見つめながら、半強制的に横にならせる。
赤い顔をした少女は、うるんだ目をしながら、次の言葉を待つように、こちらをチラチラと見てくる。
「王らしくあろうってのは分かるけど、それだけじゃ疲れるだろ?
たまには甘えることも必要だよ、だからたまには大人しく甘えて」
頭をなでながらそう言うと、いつもの王らしい厳しい顔つきとは違った顔で、ニコニコと嬉しそうに膝に頬をすりすりとしてくる。
「いつもありがとうリオ、あなたには助けられてばかりよ、ほんとに….」
しかし、少女はリオのいつもとは違う、覚悟を決めたような、それでいてとても優しいような笑顔に気づいたのだろう、不安な目をしながらこちらを見てくる。
「リオ大好きよ。あなたがいなければ、私はたぶんここにいなかったと思う。あなたが望むなら私は何でもするし、どんな願いも叶えて見せる。だからちゃんと私のそばに居てね?見守っていてね?私頑張るから。」
そんなことを言う少女を見ていると、ふいに涙があふれそうになる。
これ以上言われてしまったら、ほんとに離れたくなくなる。ずっとそばに居たくなる。
でも、それは出来ないことだから。この世界にとって俺は異物だから。もう、時間は残されていないから。
──────だから最後くらいしっかりと伝えよう。
────── 一つ一つの言葉をしっかりと紡いで伝えよう。
────────夢の中で出会うことができた、世界で一番大好きな女の子に。
「よく聞いて、シア。今から話すことを。」
「とある少年がずっと夢見ていた、異世界での冒険の物語を。」
「寂しがり屋で、強がりで、とても優しい女の子のそばに居られた、幸せなお話を。」
「夢の中で出会った、たった一人の少女を救う少年の物語を。」
「そして……すべての物語の結末を。」
この小説を開いてくれた方、ここまで読んでくださった方、
ありがとうございます。そして初めまして。
気軽にのんびり投稿していこうと思っているので、
生暖かく見守っていただけたら幸いです。