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異世界余生は10年お試しで。  作者: 碧海てーか
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プロローグ

ゆるゆる異世界物語、始まります。どうぞお付き合いください。

<......うっ......>


 眩しい光で視界一面が白くなって、脳内でアラームがピーッ! ピーッ! とけたたましい音を響かせる。


 もう、うるさいわね。新しい魔力を感知したのかしら?


 挨拶が遅れました。私はゲシヒテ。神様みたいな感じの存在よ。

 今、悪い人間達の所に潜入しているの。誰もまだ気づいていないみたいね。

 おじさん達、異世界から2人、ヒト族を召喚しようとしてるみたいだけど、この世界の決まりでは、それはやってはいけないこと。だから、私はおじさん達にペナルティーを与えようと思って、監視しているの。


 止められないし、確実に成功する気がするのよ。


 眩しい光と一緒にやって来たのは、2人の綺麗な少年少女。姉弟なのか、見た目がよく似ている。ショートカットの黒髪少女と、寝癖が跳ねる黒髪少年。2人の顔は不安そうに歪められている。


「おぉぉぉぉ、成功しましたぞ、兄上!」

「あぁ! まさか成功するとはっ! ハハハ!」


 成功したのでペナルティーを......。


 のんびり状況を見てたら、弟くんが震えていることに気づいた。この世界の言葉が分かるようね。


「見目も良いし、ダーメヘクセ様の宴で奴隷として売るのも良いな」

「なるほど......我らの家で()()のも良さそうですな」


 ニタニタと薄ら笑いを浮かべているのは、おじさん兄弟。こんな会話が突然聞こえてきたら、異世界人弟くん、びっくりするわよね。......では、私が遠慮なくやってしまいましょう。


<世界判定[番狂わせ]>


 私の宣言に、異世界人弟くんがバッと顔を動かす。きょろきょろ。


 ......もしかして私の声が聞こえるのかしら?


 異世界人弟くんがきょろきょろしていると......


「みーつけた!」


 すごい勢いで少女(髪に宝石を結わえているから、成人済みのはず)が転がりこんできた。


 ......この子、どこかで見覚えがあるような......。まぁいいわ、これが「世界判定[番狂わせ]」の力よ!


「......おや、アデルレーナ様、どうなさいましたか?」


 おじさん兄弟の目がゆ~らゆら。動揺しているようね。


「そこの。見慣れない容姿の子供達。どこから来たの?」

「なに、わたくしめの子飼いの者ですよ」


 おじさん兄がヘラヘラと笑うと、アデルレーナがジロリとおじさん兄弟を睨みつけた。


 わ~、怖い! なんて。おじさん達には(世界判定)からの罰を受けてもらうわ!


「そんなの嘘よ。だって、その子達の魔力、初めて感じとるものだもの。新たな生命みたいな魔力を発しているのよ、ごまかせるわけないじゃない」

「......っ!」


 おじさん兄弟が肩を震わせて、アデルレーナを見上げる。異世界人姉弟は相変わらず震えている。言葉が分からないはずの異世界人お姉ちゃんは雰囲気で、ただならぬことが起きていることを察したのかもしれない。


 あぁ、私だけ仲間外れなんてつまらないわ!


<世界判定[過去透視] ......対象は異世界人姉弟>


 私がそう言って世界判定を発動させた途端、脳内に2人の記憶が流れ込んできた。ものすごい情報量。


<......世界判定[適性判定]>


 目の前に2人の情報が現れる。だーーっと、勢いよく文字が流れる。


 いつも思うけれど、これ絶対酔うわよね? 私じゃなかったら酔っているわよね......?


<2人の生い立ちはあまり良くない......。だから闇の召喚陣に惹かれたのかしら? いきなり喚ばれて可哀想だし......>


 うーん......と考え事をしていると、視界いっぱいに金色が広がった。


 うわぁ!? 何かしら!?


「......ゲシヒテ様、いらっしゃるならそうおっしゃってください。あの2人に何をするおつもりですか?」


 怒った顔のアデルレーナが現れた。


 あ、思い出したわ! この子、怒るとすごく怖いのよ!


<私はずっとここにいたわよ。私が貴女を喚んだんだから!>


 ドヤ顔で宣言すると、何故かアデルレーナが呆れたように目を細めた。


「世界判定でしたっけ? ......それで、あの2人に何をするおつもりですか?」


 あら、アデルレーナったら、すごく怒っているわね。後ろのおじさん兄弟も騒いでいるし......。


「何をしているのです、アデルレーナ様! 私達のお話を聞いてください!」


「うるさいわ。黙りなさい」


 アデルレーナの怒った顔におじさん達がしゅんっと縮こまる。ついでに異世界人姉弟もびっくりして縮こまる。


<アデルレーナ。あの2人は、生い立ちがあまり良くないみたい。だから闇の召喚陣に惹かれたようね。だから、[やり直し]させたいのよ。この世界に来た以上、闇ヒト族になるのは避けたいから>


 私の必死の説明に、アデルレーナが頷く。ちょっと表情が柔らかくなってる。


 お怒り回避成功かしら?


「......うん。それは分かりました。[やり直し]の期限はどうなさるのですか? まさか、情けだと言って無期限にすることはしないでしょう?」


 ......? ちょっと眉間のシワが復活してきているかしら? 怒らせる前に説明しないといけないわね。


<ん......10年! 10年でどうかしら? あの2人の境遇が悪化してきたのも10年くらい前みたいだから、ちょうどいいでしょう?>


「そう......ですね。分かりました。このアデルレーナがしっかりと監視します」


<ありがとう。 そうしてくれると助かるわ>


 アデルレーナのお怒り回避に成功したので、私はふわ、と飛び上がって[やり直し]の準備をする。


<世界判定[やり直し] 対象は異世界人姉弟、期間は10年>


 淡い光がぽわ~んと漂う。我ながら、綺麗だと思うわ。


「え......」

「なんだこれ?」


 異世界人姉弟の目がとろん、と垂れてきて......


「ごめんね、ここにいるためには仕方ないのよ」


 アデルレーナの声を合図に、2人は白い床に倒れこんだ。


<ごめんね>


 この世界の身勝手で、人生をねじ曲げてしまって......ごめんなさいね。だから......せめてもの助けを......。


<世界魔術[人生のより糸] 2人に、世界の加護と幸運を>


 こうして、2人のお試し余生はスタートしたの。

ゲシヒテはいたずらが好きなお茶目な精霊です。でも万能。ゲシヒテの存在を知っている人はあんまりいません。知っているアデルレーナは特殊。


読んでいただき、ありがとうございました。

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