36/66
０．復讐者の唄
我が愛しき娘ベルよ。
お前をいだくための腕はすでに用をなさない。
お前にささやきかけるための言葉はすでに失われた。
国は滅んだ。
帝国は引き裂かれた。
民は流されていった。
すべては神の戯れのために。
獣の咆哮が聞こえる。
復讐せよと我を急かす。
だが、その咆哮すらも神には届かない。
獣の爪も牙も何の役にも立たない。
ならば、この地上に神を引きずり降ろそう。
神が愛でるこの地を破壊しよう。
さすれば、我が眼前に神が現れよう、あの日のように。
我は獣をけしかけ、神の喉笛に食らいつかせよう。
戯言と人は笑うだろうか。
痴れ者と人は嘲るだろうか。
知ったことではない。
そこに一縷の望みがあるなら、我はそれに手を伸ばす。
みっともなく足掻こうと、地べたを這いずり回ろうと。
この焦燥を止めるすべはそれしかない。
そのように我を変えたのも、また神なのだから。
我は復讐者。神に仇なす者なり。
