俺がお前を育てる
目が覚めると煌びやかにレースで飾られた黒一色の天蓋付きベットに横になっていた。
大体3人くらいは余裕で寝れるほどの広さがありそれもかなりフカフカで今まで寝たこともないような寝心地。
まだ頭がフラフラし横になっていても目眩がする
陽の光だろうか、風になびくカーテンの隙間から時折光が差し込み眩しさを誘ってくる。
数分後にゆっくりと身体を起こすがまだズキズキと前頭部が痛み思わず手を頭に添えて小さく唸り声を上げてしまった。
『!?』
痛みが少し和らぎ部屋を見渡そうと視線を上げると一番に目に入ってきたのは黒のフードマントに包まれた男か女かもわからない人の姿。
印象としては胡散臭い。
椅子に座り本を読みながら紅茶のいい香りを漂せているアンティーク調のティーカップを口元に運んでいる。
こちらに気が付いたのか少しだけ見える口元に弧を描き、パタンと音を立て本とティーカップを丸テーブルに置く。
「目が覚めたか…」
フードを外し不適切な笑みを浮かばせる。
真っ黒な闇をも想像させる黒髪とそれと反対にギラギラと光る狼のような銀色の瞳。
所々はねている髪先。
整った顔立ちに黒淵の眼鏡
そのレンズの向こう側の目はもちろんのこと一切笑っていない
。
笑っていない目に思わず嫌な予感がし身構え後退りをするが此処はベット、すぐに壁に背を着く。
『◎△$♪×¥●&%#?!』
声にならない叫びを出しながら自分の身を必死で守るように布団に体を包ませる。
「五月蝿いガキだな……」
舌打ちをし大きく溜息をつきながら椅子へと戻るとまた本を読み始める。
「お前はまず自分の姿を見たらどうなんだ?目が覚めたら気付くと思っていたが余程の馬鹿なのか、はたまた俺が居てそれどころじゃなかったのか。」
口には出さずとも前者で首を振り、後者で大きく頷く。
ベットから身体を出し無地のスリッパを履くがいつもと感覚が違う。
足が、小さい……手を見ると更に驚いてしまった。
普段の手のひと回り…否、ふた回り程は小さいだろうか…
目を見開かせ自分の顔身体をペタペタと触っては慌てふためき転びかけながら指さされた姿見へと駆け寄る。
『なに、これ……』
姿見の中に居たのは紛れもなく自分、しかし普段よりも目線が低い上に身体や顔、声までもが幼くなっている。
「召喚された者への代償って奴だ。ま、若くなったと思えばいいだけの話だろ?」
ニタニタとこちらの慌てふためく姿に満足気な笑みを浮かべククッと喉を鳴らし面白そうに言葉を並べる。
『召喚?代償?一体何なんですか……そんな厨二病な案件に私は巻き込まれたくないです!!』
何を言っているのか理解も出来ず、本音をぶちまけてしまった。
不気味に笑っていた声が止まると怒られる、殺されると察知し反射的に目をぎゅっと瞑り体が強ばる。