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叛逆者達は夢を廻る  作者: tukimi
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第一話 『見習い騎士』

『魔法』という技術の登場により、世界は革命的な発展を遂げた。

安全な水が飲めたり、安易に火を起こしたり、怪我を一瞬で癒したりなどと、

世の中には魔法の存在が必要不可欠となっていた。

しかし、便利な反面『魔法』を悪用する連中もまた増加する一方だった。

そんな状況を打破するために、国は『騎士』の育成に励んだ。

国の治安維持や人々を護るためだと名目を立てているが、実際は国の貴族達が保身のために『騎士』育成に税金を使っているのが現状である。

その甲斐あって『騎士』の数だけは増えた。

剣を持つことすらままならない『騎士見習い』がーー




「呼んでも来ないと思ったら……」

「えっ? 呼んでた? 全然気がつかなかった」

「まったく、敵襲が来たら死んでるぜ?」

「ごめんごめん、ちょっと集中しててさ」

「そんなに集中して、何してたんだよ?」

「……絵を描いてたんだ」

「絵? ……ほぉー上手いもんだな、誰かモデルでもいるのか?」

「別に、ただの想像だよ」

「なんだ、ただの妄想か、でもよ、目がでかすぎないか? あと胸も、大きけりゃいいってもんじゃないぜ」

「そうかな、僕は可愛いく描けたと思うんだけど」

「実際こんな女いたら、気持ち悪いだろ」

「それは……そうだけどさ、何も見たものをそのまま描くのもつまらないと思って」

「はぁ? どういう意味だよ……って無駄話してる場合じゃなかった。 副団長が稽古の時間だってよ」

「いつもより早くない?」

「誰かが規則破った罰で連帯責任だとよ、いい迷惑だぜ」

「まぁ、仕方ないよ、そういう決まりだし」


『騎士見習い』と呼ばれる若者は、魔法の発達に伴い、増加していく危険な魔導師に対抗するために国が騎士の入会条件を軽くした時期に所属された者達のことである。

従来の『騎士』とは違い、家柄や剣術の実力は考慮せず、若ければ入れる程度の難易度までに下がった。

『騎士』という肩書きに、憧れを持ったり、金が欲しかったり、モテたかったり、と入会する若者は多かった。

ところが、蓋を開けてみれば、雑用と稽古の地味で辛い毎日。

泊まり込みのため食事や住む場所には困らないが、給料はスズメの涙しかない。

そんな生活に耐えられず、辞めていく者が多かった。


辞める理由の一つに規則の厳しさである。

『騎士見習い』が問題を起こさないように、新たに明文化された規則を全員に強制されている。

金の使い方、色恋の禁止、飲酒の禁止、喫煙の禁止、等々。

さらに、一人でも破ったものがいたなら連帯責任として『騎士見習い』全員が罰を受けるという理不尽さ。

そんな厳しい騎士の世界に失望して、夢を諦める者が跡を絶たないのだ。


「はぁ……勘弁して欲しいぜ。 俺らが何かやったってわけじゃないのによー」

「でも頑張ったらさ、いつか正式な騎士になれるんじゃない」

「いやいや、努力だけでなれたら苦労しないだろう」

「なんで?」

「家柄とか才能とか、一流の騎士になるには……そういうのが必要なんだよ」

「そうかなぁ」

「まぁ、少なくとも木刀振ったり、走り込みばっかやっても意味ねぇな、大事なのは経験だな、やっぱり、実践をしなきゃ話にならないだろ」

「僕たちじゃ、まだ任務受けさせてもらえないもんね」

「あーあー。 早く、竜倒したり、姫助けたりしてーな」


現在は辞める者もは少なくなったものの、不満を抱え得ている者は多くいた。

理想と現実のギャップ。

花のない地味で貧相な生活。

認めてもらえない努力。

思い通りにいかないもどかしさ。

だからといって、逆らったりできる者はおらず、従うか、諦めるか、しか選択肢はなかった。

そのため、残った『騎士見習い』には不満だけが積もっていた。


「うーん。 騎士ってなんなのかなぁ」

「はぁ? 騎士は騎士だろ、国や民を護る立派な戦士さ」

「騎士っていうのは騎士だから人を護るんじゃなくて、人を護るから騎士なんじゃないのかなって、だから騎士になるために努力とかするのは間違ってるんじゃないかな……って」

「……? 何言ってかよくわかんねぇけど、毎日、絵描いたり本読んだり陰気なことばっかやってから思考が暗くなるんだよ」

「……そうかもね」

「そうそう、遊びもほどほどにしとけよ」


『騎士見習い』達はまだ若く未熟で、世界の厳しさを知らない。

これは、まだ青い少年達が立派な騎士になるまでの物語である。



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