【第9話】異世界には加減がない!?
「固有魔法……ですか?」
街の散策改めて暇つぶしから帰ってきた俺はルナさんの授業(?)を受けていた。
「ええ、その人にしか使えないオリジナルの魔法よ。ただこれは習得する訳ではなく自分が元々もっているものを使えるようにするって感じね」
「それって、超強力な魔法を元々持っているかもって事ですか!?」
「ええ、もし強力な固有魔法を持っていたら問答無用で勝ち組よ」
きたきた! 異世界の定番! 自分だけの能力を駆使して強敵と戦ったりしちゃうのか!? もしくはチート級の能力で無双するとか!?
「で、今からソウマには固有魔法を使えるようになってもらうわ」
「は、はい!」
「では、かかって来なさい」
「はい! ……はい!? どう言うことですか!?」
「魔力吸収を習得した時と同じよ。追い詰める、開花する。OK?」
「OKじゃないです! まず俺丸腰ですよ!?」
「気にしないの! ほら行くわよ〜♪」
ルナさんが何か呟き出した。それが魔法の詠唱だと気づくのに少し時間がかかってしまった。
「"テンペスト!"」
「うわぁ!」
間一髪。もう少し気づくのが遅かったら感電死するところだった。
「"アイス!"」
「"フレイム!"」
次々と放たれる魔法。近くでテーブルが燃え、皮膚がチリチリする。
「"ボム!"」
――すぐそばにあった椅子が爆散する。
「クソッ!もうどうにでもなれ!」
椅子の破片を、ルナさんに向かって投げつける。
「ッ!」
しかし、狙いが悪く、ルナさんの手に切り傷を作っただけだった。
次はどんな魔法が来るかと身構えているとルナさんが急に手を止めた。
「はい。終了〜」
「は?」
「固有魔法の開花おめでとう。ソウマ」
固有魔法? 開花? まだ何も出てないぞ……?
困惑しているとルナさんがなにか渡してきた。
「私に投げた椅子の破片よ。よく見てみなさい」
確かにさっき投げた破片だ。しかし、投げる前とは違って、先端がナイフのように鋭くなっている。
どうりでただの椅子の破片で切り傷が出来たわけだ。
「これが俺の固有魔法?」
「ええ、投げる瞬間に破片の先を削り、ただの破片を武器にした。"加工魔法"ってところかしら?」
「加工……魔法……」
なんだろう……なんか物凄く……
「地味だな……」