【第8話】異世界には仕事がない!?
「ギルドでやる事は大まかに3つあります!」
レナが意気揚々と語る。
「1つがクエストの受付。次に武器、防具の生産、販売。そして最後に酒場の経営です!」
「なるほど!レナ先輩! 質問があります!」
「ハイなんでしょう!」
「今言ってた仕事全部このギルドじゃ出来ない気がします!」
「はい! もちろん!」
「えぇ……」
このギルドは内装自体はしっかりしているが、武器屋、防具屋、酒場も形だけでクエストを受ける人もいないから仕事がない。
「このギルドいつも暇なのよ〜。この前遊びに来た時なんてね〜。レナったら虚ろな目でずっーとテーブル拭いてるのよ〜」
「えぇ……仕事したくても出来ないじゃないですか……」
「もう掃除くらいしかやる事が無いんです……」
「まあやる事が無ければ魔法の練習でもしておけばどうかしら?」
「そ、そうします……」
なんか給料泥棒みたいで気分が悪いな……
「あ、ソウマさん! 暇なんで今から街を散策しませんか? これから生活する上で色々知っておいた方が良いでしょうし!」
「暇って……まあいいか。行こう」
こうして、ソウマは給料泥棒になった。
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「すごいな……」
俺は今レナと一緒に街の中央区に来てる。
この辺りはレナの経営するギルドのある所とは違って、かなり賑わっている。
「街の中心ですからね! 都会ですよ!」
東区とは違って通行人も多いし、そこらじゅうで果物やお土産を売ってる店がある。
(確かにここと比べると東区は寂れてるけど……食料に困ってそうな様子は無かったな……何か言いにくい事でもあるのか……それともルナさんなりの冗談か?)
そんな事を考えつつ、歩いていると無駄にデカイ看板が目に入る。
"ギルド・サンベルク"
「へえ、この辺りにもギルドがあったんだな」
「はい! ギルドは1区に最低1つ以上は無いとダメなんですよ!」
てっきり街に1つだと思っていたが……まあ、街唯一のギルドがレナのギルドだったらもう少し賑わってるか……。
しかし、こうやって街を歩いてみると改めて異世界に来たという実感が湧く。
馬車、行商人、騎士みたいな装備をした人、換金でもするのだろうか? 魔物をオリに入れてギルドに運び込む人など。
(俺はこの世界で上手くやっていけるだろうか……)
そんな不安をかき消すように果物屋の前で手招きしているレナの元に歩いて行く。