【第25話】異世界には安眠がない!?
「ふぅ……疲れた……」
スラッグさんの店を出てから、結局検問で少し待たされ、外はもう真っ暗だった。
ギルドのドアを開け。中に入るとカウンターの掃除をしているレナとメルが居た。
「あっ! お帰りなさいソウマさん」
メルの出迎えに心癒される。
ヨートーのドロップキックのダメージも癒されていく。
「あっ! ソウマさん! 大変ですよ! ヨートーちゃんがさっき急に消えて……あれ!? 何でソウマさんと一緒に!?」
レナは相変わらず騒がしい。
「ただいま……あれ? ルナさんは?」
辺りを見渡してもルナさんの姿が無い。
いつもなら酒場かカウンターとかに居るのだが……
「お姉ちゃんならちょっと出掛けてますよ。何か友達の経営する酒場に行くとか……」
前にハルノさんと会った店を思い出す。
この辺りで深夜まで営業している店はそこくらいだ。
「そうか……まあ帰ってきたら無事に住民登録出来たって言っといてくれ……俺は寝る……」
中央区まで行った上に検問で長時間待たされたのだ。
眠くなるのも無理はない。
「あっはい! おやすみなさい!」
睡魔に襲われながらも自室へと向かう。
作業場の奥に進み、自室のドアを開け、ベッドに倒れ込む。
「「はぁ……疲れた……」」
「ん?」
「お?」
隣に視線をやると、俺のベッドに招かれざる客が居た。
「ヨートー……? 何でここに? 俺寝るんだけど……」
「うむ。分かっておるぞ? 寝ればよいではないか」
「いや……出てってもらえますかね?」
「イヤじゃ」
「「……」」
ベッドに倒れ込んだまま話す男女。
傍から見ればこれからお楽しみかと思われそうだが、俺達の場合は……
「「ベッドは(ワシ)(俺)の物だぁ!」」
「俺は寝るんだ! さっさとここから立ち去れぇい!」
「立ち去るのはお主の方じゃ! 今日はワシがベッドを使うのじゃ!」
「ほっほう! たかが刀の分際でお前の製作者の寝床を邪魔する気かぁ! 刀は刀らしく鞘に納まって寝ろ!」
「刀だって適切な手入れが必要なのじゃ! ここで寝るのも手入れの一環じゃ! お主は鞘に納まって寝たことがあるのか? あれならまだ床の方がマシじゃ!」
お互いに今にも掴み合いが始まりそうな剣幕だ。
掴み合わないのは両者とも眠くて動く気にならないからだろう。
「「ぐぬぬ……」」
「むぅ……こ、ここは妥協してこのまま2人で寝るのはどうじゃ? それならも、文句なかろう……」
「はぁ……そうするか……余計疲れた……」
「「おやすみ……」」
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暗闇の中、目を開ける。
(ね……寝れねぇ……)
あまりにも眠かったから一緒に寝ることを許容したが、よく考えてみたら男女が一つのベッドで寝るという事の難易度があまりにも高かったのだ。
しかも女性経験がほぼ皆無のソウマなら尚更だ。
(やばい……さっきまであんなに眠かったのに寝れる気がしない……)
お互いに外側を向き合う形になっているとはいえ、耳をすませば吐息の音すら聞こえる距離だ。
そしてたまに、寝返りでも打っているのか艶かしい声と共にゴソゴソしだすので余計に眠れない。
(落ち着け……エミリーが1匹、エミリーが2匹、エミリーが……)
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暗闇の中、目を開ける。
(ね、寝れぬ……)
勢いで一緒に寝ると言ってしまった手前、今更鞘に納まって寝るわけにもいかぬ……
あまりにも眠かったので、正常な判断が出来ておらんかったのかもしれぬ……
(マズイの……先刻まで眠くて仕方が無かったのに寝れる気がせん……)
ソウマは気を利かせてくれたのか、ベッドの端の方で寝ておる。
こちらには寝返りを打てるくらいの空間はあるが……やはり寝れん……
(というか何故じゃ! ワシのような美少女と……? いや美刀か……? とにかく何故あんなにもスヤスヤと寝れるのじゃ! ワシに魅力が無いと申すのか!?)
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((はあ……今夜は眠れそうに無いな……))




