【第22話】異世界には安息がない!?
「ほら! 起きるのじゃソウマ! 起きんと真っ二つにするぞ!」
自室で寝ていた俺にヨートーが物騒な朝の挨拶をしてくる。
「うーん……まだ外暗いじゃねーか……寝かせて……」
「ダメじゃダメじゃ! 早起きは大事なのじゃ!」
そう言ってヨートーは寝ている俺の顔を平手打ちしてきた。
……平手打ち?
よく考えたら日本刀が平手打ち出来るはずが無い。
日本刀に腕でも生えているなら別だが。
「あの……どちら様でしょうか……」
「何ぃ!? ワシを忘れたと申すか!」
寝ぼけながらも平手打ちしてきた人を見る。
そこに居たのは緑髪で着物を着た女性だった。
(喋り方は似てるけど……ヨートーじゃないよな……。日本刀は平手打ちしないもんな……)
「あの……この作業場は関係者以外立ち入り禁止なので……」
「お主がここでワシを作ったんだじゃろう! ワシじゃ! ヨートーじゃ!」
「えぇ……? 確かにここで刀は作ったけど可愛い女子を作った覚えはない!」
「かわっ!? あ、阿呆な事を申すでない!」
そう言うと自称ヨートーは急に緑色の煙に包まれた。
煙が晴れると、そこには俺の作った日本刀があった。
「どうじゃ! これで分かったじゃろう!」
ヨートーが日本刀の姿で喋る。
(どこから声出してるんだろう)
「ふふふ……ワシは武器として使ってもよし! 人として戦ってよしの優れものなのじゃ!」
「マジか……人化できるとか聞いてないぞ……」
「当然じゃ! 言ってなかったからな!」
ヨートーが再び緑色の煙に包まれると人の姿になった。
「ふう……とりあえず刀の姿の時はあんまり喋らないようにしてくれ……」
「分かった! その前にソウマよ。一つ重大な問題が発生した」
ヨートーが真面目な顔で言う。
「何だ? 錆びそうとか?」
「いや、腹が減った。何か料理を作るのじゃ」
「えっ……武器なのに……?」
「うむ。食べ物も食べるし、定期的に手入れしないと錆びるぞ。まあ優秀な分の必要経費みたいなものじゃな!」
「……」
「む? どうしたソウマよ。もしやあまりに安い必要経費に感激して声も出んか?」
「ふむ……ちょっともう1回刀になってもらっていいか?」
「うむ。分かった」
俺は剣になったヨートーを掴んで一言呟いた。
「日本刀って金属ゴミだよな……」
「おおおい!? ま、待つのじゃ! その手を離せえええええ!」
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「ほ、本当に捨てられるかと思ったぞ……」
再び人化したヨートーが言った。
「捨てねーよ…………多分」
「た、多分!? 」
普段ルナさんにイジられている為か、ついついからかってしまう。
「ふう……よし、とりあえず錆止めとして油塗るぞ」
「なっ!? お主はワシに脱げと言うのか!?」
「アホ! 刀の状態で塗るに決まってるだろ! そんなことしたら捕まるわ!」
顔を真っ赤にしたヨートーが刀になる。
ヨートーを持ち、綿に油を染み込ませ、刀身に塗っていく。
「んっ……」
(変な声出さないでくれ……誤解される……)
刀身にまんべんなく塗っていく。
薄い油膜を延ばしていく様に慎重に塗っていく。
足りないのはもちろんダメだし、塗りすぎても"油焼け"してしまって余計に錆びてしまう。
油膜を張り、刀身に空気が触れないように遮断する。
「ふう……終わったぞ」
「ソウマはなかなかテクニシャンだな! 凄い指使いだったぞ!」
(誤解されそうな事を大声で言わないでくれ……)
「はあ……とりあえず作業中に変な声は出さないでくれ……気が散る」
「む、むう……すまん……」
(腹減ったな……まだ朝食食べてなかった……)
朝食を食べに行こうと思い、作業場のドアのノブに手をかける。
「あっ」
「えっ」
ドアを開けると目の前にメルが居た。
こころなしか顔が赤い気がする
「あ……ソウマさんも男の人ですもんね……その……誰にも言いませんから……」
「えっ?」
「し、失礼しました!」
そう言ってメルは小走りで去っていく。
その瞬間、メルが言っていた事を全て理解した。
「メ、メル!? 待ってくれええええ! 誤解なんだあああ!」
「い、いえ! 良いんです! 気にしてないので!」
「なんじゃ? 騒がしいのう」
作業場からひょっこり諸悪の根源が現れた。
「ヨォォォトォォォ!? 前言撤回だ! 金属ゴミ行きだああ!」
「なっ何故じゃああ!?」
今日もギルドは平和(?)です。




