【第21話】異世界には武器がない!?
「あら? ソウマってそんな剣持ってたかしら?」
オープン前の酒場で朝食を摂っていると、ルナさんが聞いてきた。
「少し前に作ったんです。よく考えたら自分用の武器とか持ってなかったし、魔法もまだ練習中ですし」
「へぇ〜。ちなみに"契約"はするの?」
「"契約"?」
「知らないの? 武器と契約する事によって、その武器の潜在能力を引き出せるようになるのよ。代わりに契約者以外はその武器を使えなくなるけどね」
なるほど、これまた異世界っぽいな。
「で? どうするの?」
「うーん……俺の作った武器に潜在能力があるか分かりませんが……やってみたいです!」
「よし! じゃあその剣を持ってここに書いてある通り詠唱してね」
そう言ってルナさんは分厚い本を渡してきた。
「あの……ルナさん。一つ聞いていいですか?」
「ん? 何かしら」
「これまさか……全部詠唱しないといけないんですか……?」
そう、ルナさんに渡され本のタイトルは……
"5時間で済む!短縮版契約のすすめ!"
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「ねえお姉ちゃん……さっき作業場でソウマさんが1人でブツブツ言ってたけど……何かしたの?」
「あら〜? ソウマは今契約の詠唱をしてるのよ〜。邪魔しちゃダメよ? 一回途切れると最初からやり直しになるから」
ルナがそう言うとレナの顔色が変わった。
「あっ……やっちゃった……だからアタシが作業場に突撃したら泣きそうな顔になったんだ……」
「あらあら。流石は私の妹ね〜♪ で、どうだった? ソウマの泣きそうな顔は? 興奮した?」
「お、お姉ちゃんと一緒にしないで……」
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「お、終わった……」
「お疲れ様♪ 大丈夫? 今にも死にそうな顔してるわよ♪」
(楽しそうだな……ちくしょう……)
結局、5時間で終わる予定だったのだが、途中のレナの乱入で9時間くらい掛かってしまった。
「さて、後はその剣に名前をつければ契約完了よ。1度つけたら変えられないから慎重にね」
(名前か……日本刀だと村雨とか? いやあえてヌホントウ……はやめとこう……)
「うーん……もう適当に"妖刀"とかでいいかな……」
「ネーミングセンス皆無か! 阿呆か!」
「「えっ」」
その声は明らかにルナさんではなく、もちろん俺でも無い。
しかしこの作業場には俺とルナさん以外居ない。
となると考えられるのは……
「おい! どこを見ておる! ワシじゃ! お前の手元じゃ!」
「ルナさん……これ……」
「え、ええ……喋ってるわね……」
流石にルナさんも驚いていた。
(安直に"妖刀"なんて名前をつけたのが原因か……? それとも……)
「おっおい! 無視するでない!」
「あの……ちょっと混乱してるんだけど……何者?」
「はぁ? お主が先ほど名付けたばかりじゃろ! 我が名は"ヨートー"じゃ!」
「ちなみに何故喋れるのかしら?」
「それはワシが宿った素材を使ってこの剣を作ったからじゃろ?」
素材……? 特に変わった素材を使った覚えは……
「あっ! もしかしてあの紐か!?」
「ご名答! いやーあの箱の中は息苦しかったぞー。おまけに暗くて……退屈じゃった! そんな時に現れたのがお主じゃ!」
ダンジョンの最下層の宝がただの紐な訳ないか……
「でも……喋る武器は見たことあるけど明確な意思を持った武器は初めて見るわ……」
ルナさんも初めて見るという事はかなり珍しい事なのだろう。
「しかし……武器が喋るとは……ちゃんと本来の用途で使えるのか?」
「もちろん! たとえ100人の敵と相対してもその全員を血祭りに……あっ血で汚れるのは嫌じゃの……」
「……ルナさん」
「はい?」
「妖刀って燃えるゴミですかね?」
「ヒエッ……ちゃ、ちゃんと働くから見捨てないでくれ!」
こうして俺はヨートーさんと契約を結ぶことになった。




