【第20話】異世界には食事がない!?
「よし……出来た!」
作業場で完成した"ヌホントウ"を眺める。
ゴーレムの頭部に埋まっていた宝石は鞘の装飾に使い、紐も予定通り持ち手にしっかりと巻いた。
そして最近気がついた事なのだが、刃を研磨する時、仕上げに加工魔法を使うと更に切れ味が増すことが分かった。
(俺の固有魔法ってつくづく地味だよな……。)
そんな事を思いながら窓から空を見上げる。
作業に熱中していたせいでもう外は真っ暗になっていた。
「腹減ったな……」
1日中作業場に居たせいで夕食はおろか昼食すら食べていなかった。
(酒場はまだギリギリ開いてるな)
俺は腹を満たすべく酒場へと足を運んだ。
――――――――――――――――――――――
「な、なんじゃこりゃ……」
酒場に来た俺を待ち受けていたのは3名の酔っ払いだった。
「あら〜♪ ソウマじゃな〜い♪」
「ソウマさん! お姉ちゃんと2人でダンジョン行ったって本当ですか!?」
「うへへ……愛しのソウマ君だわぁ〜」
テーブルを見ると空の酒瓶がズラリと並んでいた。
どうやらかなり飲んでいたらしい。
よく見るとメルはテーブルに突っ伏して寝ていた。
「まさか……メルにも飲ませたのか!?」
「飲ませて無いわよ〜。疲れたから寝ちゃっただけよ」
顔が赤くなっているルナさんが答える。
確かにこの酔っ払い3人組と一緒にいたら疲れそうだ。
「ソウマさんも飲みましょ!」
レナもだいぶ酔いが回っている様に見える。
「レナちゃ〜ん! もう1杯!」
エミリーに至ってはただの酔っ払ったオッサンだ。
「め、めんどくせぇ……」
――――――――――――――――――――――
結局、女子会の後片付けは全て俺がやった。
レナは俺を質問攻めにしてくるし、ルナさんは酔っ払って魔法を撃つし、エミリーはセクハラしてくるし……
唯一の救いはメルの寝顔を見れた事だった。
「はあ……疲れた……」
結局酔っ払い達の相手をしていたせいで何も食べれなかった。
(仕方ない……他の酒場にでも行くか……)
酒場の戸締りをして、ギルドから出る。
街は俺以外に出歩いている人は居らず、静かだった。
中央区まで足を運べば、この時間でも賑わっているのおり、ほとんどの店が深夜まで営業しているのだが、この東区では、この時間までやっている店は数える程しかない。
しばらく歩いていると、まだやっていそうな店が見えてきた。
店内を覗いてみると、客は数人しかおらず、酔い潰れている人も居た。
「いらっしゃいませ」
店内に入ると店主らしきおじさんが対応してくれた。
手近な席に座り、簡単な料理と飲み物を注文する。
「はぁ……疲れた……」
「あっ、ソウマさん」
振り向くと、ギルドで鎧の修繕を依頼して来た女性が居た。
「ああ! この前の……えっと……」
「ああ、名前言ってませんでしたね。ハルノって言います。ハルって呼んでください」
そう言ってハルさんは手を差し出してきた。
「ご丁寧にどうも。もう知ってると思いますけどソウマです。よろしく」
ハルさんと握手を交わすと、丁度、おじさんが料理と飲み物を持ってきてくれた。
「この前は鎧、ありがとうございました。私結構戦闘が苦手で……すぐ装備ダメにしちゃうんですよ」
「そうなんですか? でも損傷の割には怪我とかして無かったみたいですけど……もしかして回復魔法とかですか?」
俺が何気なく質問する。
「っ! そうなんですよ。実は回復魔法が得意で……怪我する度に使ってるんですよ」
ハルさんの表情が一瞬険しくなった。
何かデリケートな部分に触れてしまったのか?
「そういえばソウマさんは何でこんな時間にここに?」
「ああ……実は作業に熱中してたら昼食と夕食を食べるのを忘れてしまって。ギルドの酒場で何か食べようと思ったら仕事仲間が全員酔っ払ってて……」
「大変ですね……」
「大変ですよ……1人はうるさいし……その姉はいつも俺をイジるし……挙句の果てにオカマに求愛される始末ですよ……」
ハルさんに愚痴ったところで飲み物を一口飲む。
「迷惑してないですか? そんな職場だとうんざりしそうですけど……」
「確かに大変な事も沢山ありますよ。でもその分楽しい事も沢山あるんですよ」
「そう……ですか……」
ハルさんがおじさんに代金を払い、席を立つ。
「私そろそろ行きますね。朝早くから予定があるので……」
「あっ、すいません愚痴なんかで引き止めてしまって」
「いえ、ソウマさんの愚痴ならいつでも聴きに行きますよ」
そう言ってハルさんは店を出ていった。
(何か……不思議な人だけど話していて落ち着くな……)
そんな事を思いながら目の前の料理に手をつける。
初めてレビューをいただきました!
ありがとうございました!




