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異世界には「アレ」がない!?  作者: 和口
第1章 ベスティア王国編
18/37

【第18話】異世界には在庫がない!?

「うーん……足りないな……」


 作業場の片隅に積んである箱の中身を見て一人で呟く。

 レナと一緒に洞窟探索した際に手に入れた鉱石が残り僅かになって来たのだ。


「あら? どうしたの? そんな険しい顔して」


 ルナさんがひょっこり窓から顔を出す。


「いや……鉱石が無くなりそうで……レナって今います?」


「レナは今いるけど……クエスト受付と換金で忙しそうよ?」


 ルナさんが指差した方を見ると慌ただしく動いてるレナとメルが見えた。


「なんか……メルの方が落ち着いてますね」


「そうね……レナよりギルドオーナーに向いてるんじゃないかしら?」


 レナは換金窓口とギルド受付を行ったりきたりしている。

 一方、メルの方はお客さんの捌きかたが上手いというか……全体的な動きがスムーズだ。


「それで? レナと一緒にまた洞窟に行こうと思っていたの?」


「はい……このままだと武器も防具も作れなくなるので……」


「あらあら。それは大変ね〜♪」



――――――――――――――――――――――



「どうしてこうなった……」


 結局、レナの代わりにルナさんがついてきてくれることになったが……


「ルナさん。ここ明らかに俺が入っていい場所じゃないですよね?」


 ルナさんの転送魔法で遠方の森に来た俺は、「鉱石が採れそうなダンジョンがあるわよ♪」というルナさんについてきたのだ。


 しかし、煌々と朝日が照らし出すものは、禍々しい雰囲気の巨大な門。

 近づくだけでも躊躇うような"ソレ"は、素人でも難なく危険だと分かる。


「大丈夫よ! ここで珍しい物も手に入るし!あなたの魔法の練習にもなる! OK?」


「OK……って言えるわけないでしょ! だってここ魔王でもいそうな雰囲気ですよ!?」


 今すぐにでも帰りたかった。

 一介の高校生に手に負える場所では無い。


「あらそう。じゃあ私1人で行くわ。ソウマは帰っていいわよ」


 珍しくルナさんがあっさり引いていく。


「ただ……帰れるならね♪」


 ルナさんが満面の笑みで言った。


 しばらくその言葉の真意が分からなかったが、ルナさんが杖を掲げた所で思い出した。


 (そうだった……ここまでルナさんの魔法で来たんだった……)


 まんまとルナさんの策略にはまったみたいだ。

 相変わらずズル賢いというか……策士というか……


「じゃああの門に穴を開けて入るわよ〜♪」


「えっ? 普通に入らないんですか?」


「入れないのよ。特殊な封印がかかってて」


 (ルナさんが破れない封印って事はやっぱりここはかなりヤバイ所なんじゃ……)


 そんな事を思いつつも門に加工魔法で穴を開ける。


「やっぱりソウマの固有魔法便利ね。他にも色々使えそうだわ〜♪」


 (絶対まともな使い方考えてないよこの人……)



――――――――――――――――――――――



「ふぅん……なるほどね」


 結局ルナさんの言う通り自力では帰れないので俺もダンジョンに行くことになった。


 門の禍々しさとは打って変わり、内部は意外と普通のダンジョンといった感じだった。


 まあダンジョンにおける"普通"の基準がよく分からないが、RPGに出てくる物と同じような感じだった。


「ふむふむ……なるほど……」


 ルナさんが床に手を当てながら呟く。

 ルナさんいわく何かの魔法を応用してダンジョンの構造を調べているらしい。

 意外にも慎重に進んでいる為、内心ホッとしている。


 (何だ……これなら無事に帰れそうだな……)


「よし! 分かったわ! ソウマ! ここの床ぶち抜きなさい!」


「はい!?」


 安心した矢先、突然ルナさんが変な事を言い出した。


「いちいちダンジョンを1階層づつ攻略してたら何日かかると思ってんのよ! ほら! 一気に最下層まで潜るわよ!」


「ええ!? 最下層まで行くんですか!? 」


「もちろんよ! 最下層のお宝だけ手に入れて、帰る! OK?」


 決めた、もう二度とルナさんとは冒険に来ない。



――――――――――――――――――――――



「出来ましたけど…………でもこれ凄い深くないですか?」


 床に穴を開けたのは良いのだが底が見えないほど深い。


「当然よ。一気に最下層まで行ける所を探してたんだから」


「ええ……でもこれどうやって降りるんですか?」


 視線を穴の中からルナさんに移すと……


――ドンッ


「はっ?」


 突如ルナさんが体当たりをしてきた。

 当然、穴に落ちる。


「うわああああああ!? ルナさあああん!?」


 穴から落ちた体は当然、重力に引っ張られ、加速していく。

 まるで体が浮いているかのような感覚に襲われる。


 よく見るとルナさんも後を追うように穴に飛び込んでいた。


――ああ……短い人生だった。


 いくつかの光景が目に浮かんでくる。

 これが俗に言う走馬灯という物か。


――レナのアホな発言


――メルの癒される笑顔


――ルナさんの妖しい笑顔


――エミリーの危ない笑顔


――エミリーの求愛


――エミリーの……


 (後半全部エミリーじゃん!? 最後に浮かぶのがエミリーとかイヤだ!)


 そんな事を思っても無慈悲に地面は迫ってくる。

 ここで終わりかと覚悟を決め、目を瞑った。


「"フロウ!"」


 ルナさんがそう叫ぶと先程まで感じていた浮遊感が消えた。

 恐る恐る目を開けてみると地面から1mくらいのところで止まっていた。


「ふう……ギリギリね♪」


 地面に降りたルナさんが楽しそうに言った。


「ル、ルナさん! 俺本気で死ぬかと思いましたよ!?」


 1mの高さで浮きつつも必死で訴える。


「あら? ごめんなさいね〜♪ "解除!"」


「うわぁ!?」


 ルナさんがそう言うと今まで浮いていた体が地面に叩きつけられる。


「いてて……」


「さっ! 後はお宝を持ち帰るだけよ。ほら!」


 ルナさんが指差した方を見るといくつかの宝箱、珍しい鉱石で装飾されていた壁面。

 まさに宝物庫と言った感じだった。


「おお!? 凄いですね……」


「ええ、その前にソウマ、この辺りに大きめの穴を掘っといて」


 そう言ってルナさんが指差したのは何の変哲もない床だった。


「え? まあいいですけど……」


 ルナさんの事だし何か考えがあるか……それとも俺が落ちた姿を見て楽しむか……



――――――――――――――――――――――



「終わりました」


 出来上がったのは深さ2m、横幅3m程の大きな穴。


「ありがとう。じゃあ早速宝箱を開けましょうか♪」


 そう言ってルナさんは3つの宝箱を指差す。


「宝箱は沢山あったけど……ほとんど中身が無かったわ。あそこにある3つの宝箱だけ鍵がかかっているから……開けといて♪」


 (今日のルナさんは本当に人使いが荒いな……)


 そんな事を思いつつ加工魔法を使って施錠部分を削る。

 一つ目の宝箱を解錠し終わり、二つ目に取り掛かる。

 そして三つ目に取り掛かった時、異変は起きた。


――そう、宝を守る魔物の登場だ。


 宝物庫の壁から現れたそいつは頭部に緑色の宝石を埋め込んだゴーレムみたいな奴だった。


「グオオオオオオオ!」


 ゴーレムは俺とルナさんを見据えると、侵入者を排除しようとこちらに近づいてきた。


「ル、ルナさん!? ヤバそうなやつが来ました……あれ?」


 少しルナさんの方を向いた隙にゴーレムの姿を見失った。


 (しまった!? ステルス魔法か何かか?)


 そんな事を考えながらゴーレムを探す。


「グオ?」


……見つけた。

 ゴーレムは先程俺が掘った穴にスッポリとハマっていた。


「グオオオオオオオオ!?」


「あっ、ちなみに頭に埋まってる宝石を取れば動かなくなるから。取っときなさい」


「ルナさん……コイツが出てくる事分かってたなら先に言っといて下さいよ……」


 ルナさんに文句を言いながらゴーレムの頭部に埋まった宝石を加工魔法で掘り出す。

 するとゴーレムはピクリとも動かなくなり、ただの岩の塊になった。


「さて、気を取り直して宝箱開封タイムよ♪」


 まずルナさんが一つ目の宝箱を開ける。

 中には宝石、アクセサリー等、高価そうな物が入っていた。

 続いてルナさんが二つ目を開ける。

 中には美しい装飾の施された短剣や兜が入っていた。

 そして最後、三つ目の宝箱を開けると思いきや……


「どうぞ」


「えっ?」


 ルナさんが最後の宝箱を渡してきた。


「だって今回の探索のMVPはソウマでしょ? だったらそれ相応の対価を支払うのが普通でしょ?」


 ルナさんが珍しく良いことを言った。


「あ……ありがとうございます……」


 渡された宝箱を受け取る。


 (この宝箱を開けたらゴーレムが出現したって事はこれが1番重要ってことだよな?)


 ルナさんの粋な計らいに感謝しつつ宝箱を開けると……!?


「えっ?」


――紐?


 宝箱の中に入っていたのは1本の紐。

 それだけ。

 他には何も入っていない。


「ル、ルナさん……? これは一体……?」


「ええ!? わ、私はちゃんとソウマにお礼をしようと思って……。ち、違うの! 本当に知らなかったのよ!」


 ルナさんの様子からして恐らく嘘はついていないだろう。

 しかし、期待が大きかった分反動も大きい。


「ちっくしょおおあお! もうダンジョンなんて二度と来るかああああ!」


 ダンジョン中に響き渡る声で俺はそう宣言した。

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